【対話の持つ力】学校教育、何よりも"授業"の中にチャンスがある
【対話の持つ力】学校教育、何よりも"授業"の中にチャンスがある
今回は高校で行われた「対話」の取り組みと、対話の持つパワー、授業での実践ポイントをご紹介したいと思います。
▼生徒と先生、「がやがや会議」で対等に議論 学校運営見直しに活用(朝日 11/7)
岐阜県立岐阜北高等学校では、2019年から「がやがや会議」が行われています。教員全員と生徒の有志が集まり、学校生活で日常気になることや改善したいことなどを話し合います。
10月下旬の会議には、教員58人と生徒30人が集まり、「学びのあり方」をテーマに、7、8人のグループに分かれて意見交換しました。
生徒からは「教科書選びに参加したい」「昼寝の時間があれば授業にもっと集中できる」などの声が上がりました。
意見については、管理職と生徒会役員からなるチームがさらに検討し、校長に提案します。これまでに、カリキュラムの変更や宿題の選択制を実現しています。
対話がよく機能している好例だと思います。
💡研究員はこう考える
対話の重要性はあちこちで強調されています。
私が「対話」と聞いて連想する人の一人は、現在、石川県副知事の浅野大介さんです。
▷一冊の本に感銘を受けて実現したシンポジウム
私は、2021年に出版された、浅野大介さん(当時:経済産業省サービス政策課長・教育産業室長/デジタル庁統括館付参事官)の著書を読み、大変感銘を受けました。
▼浅野大介『教育DXで「未来の教室」をつくろう〜GIGAスクール構想で「学校」は生まれ変われるか』(学陽書房)2021.11.1
浅野さんの考えをわかりやすく説明している記事も紹介します。
▼「1人1台端末配備」という政策転換から始まる「教育DX」~“1人1台端末”GIGAスクール構想の上に、どんな「未来の教室」を創るか①(こどもとIT 2021)
デジタルが学校のあり方をよりよいものに変えていける。
生徒の多様性に合わせることで、主体的な学びを実現できる。
と、当時GIGAスクール構想のもと、これからの新しい学びのあり方について探究していた私は強く感銘を受けました。
知人にお願いして浅野さんにつないでいただき、2022年7月30日、札幌大でシンポジウムを開催しました。
▼合田さん!浅野さん!なまら教えて!~北の大地の近未来の教育in札大~(YouTube)
講演は2本。
浅野大介さんの演題は『教育DXが可能にする「未来の教室」~定食屋からブッフェに変わる学び場~』。
内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官の合田哲雄さん(現・文化庁次長)にもご登壇いただきました。講演題は『教育DXの先にある学校の存在意義』です。
講演後は、パネルディスカッション「そうだ!合田さん、浅野さんに聞いてみよう!」。
デジタルの目的と具体的な活用方法、教育のアップデート、学びの本質など、多岐に渡る深い内容でした。
今もそこに立ちかえる、私が大切にする体験の一つです。
*
浅野さんには翌2023年1月の北海道高等学校長協会 後期研究協議会の講演講師も務めていただきました。
私が最も印象に残っていることは「日本には対話の文化がまだない」というフレーズです。
合田哲雄さんも「対話から知性を生み出す力」の必要性を強調しています。
▼提言|合田哲雄 教師という仕事の価値は下がるどころか、むしろ高まっている 【教師という仕事の価値を高め、失われた自信と信頼を取り戻すために 今、求められる教師像とは? #01 】(みんなの教育技術 2023)
教育DXを進める一方で、お2人とも「対話」の重要性を強調しているのです。
▷学校組織で「対話」はあるのでしょうか。
それでは、学校組織で「対話」はあるのでしょうか。私が教員になってから振り返ってみると、同僚とはずっとありました。
対話、議論、討論なしに、方向性や具体的な教育内容を決めることはできません。問題を解決することもできません。
しかし、組織のトップである校長との対話はありませんでした。
私のコミュニケーション能力が不十分だったとは言え、それだけではなく、そもそもそういう機会も風土もなかったと思います。
しばらく経ち、ある校長が着任したとき、すぐに校長室に呼ばれました。
私は教務部長であり、改革プロジェクト委員会の委員長でした。
「何を言われるのか」と身構えましたが、校長は「(委員会の今後の方向性について)先生はどうしたいのか」と問いました。
たったそれだけのことですが、私にとっては初めてで、意識が大きく揺さぶられました。
校長が、私の意見を求めている。対話しようとしている。そのことが私を動かしました。
校長や校長協会の会長になってからも、対話を心がけました。
相手が十分に話せなかったとすれば、私の力不足ですが。
▷先生と生徒はどうでしょう。
先生と生徒はどうでしょう。私は中学校では生徒会長、高校3年では学校祭実行委員長を務め、担当の先生とは随分話しました。
腹立たしく思った先生もいたでしょうが、私としては、意見を言うことや対話をすることは当然のことだったのです。
ある学校で副校長を務めたときは、PTA会長の発案により、教員、生徒会役員、PTA役員の三者による座談会を行いました。
どんな話が飛び出すか事前にわからないため、うまく進めることができるか、少し心配でした。
生徒はお小遣いや携帯電話の話をしました。学校に対する注文もありました。自分の親に対する不満も少し述べていました。
PTA役員は面白がっていました。自分の子どもに言えないことも、そこでは問答し、参考になったりホッとしたりしていたようです。
私自身は、学習や生活指導に係る先生たちへの指導のヒントを得ました。
率直に意見を言うこと、聞くこと、対話することから、学校づくり、社会づくりは始まると思いました。
▷対話のマインドルール
県立岐阜北高校の記事では、対話のマインドルールがきちんと共有されています。
心理的安全性が保たれた中で、対話がなされています。
お互いを尊重し、一緒になって学校をつくっていく姿勢が感じられます。
そして、このことは、授業=学びにおいて、ますます必要になっています。先生の説明、理解、知識の習得と「意見を言うこと」や「対話」を分けてしまってはいけないと思います。
学んで、私が何を思い、考えるか。
私の中にどんな問いが浮かび上がってくるか。
私がこの学びについて、どう判断し、どう進めたいか。
この「私」を大切にしながら、先生と生徒、生徒と生徒が対話をし、学びを進めるべきではないでしょうか。
誰がどう学んでいるかを考えない。
学ぶ生徒の中で何が起こっているかを想像しない。
主体である生徒と対話しない。
そうした授業がまだあるとすれば、大きく転換していく必要があります。
*
教室は、学ぶ主体である子どもたちが共に学び合うコミュニティです。
教師が一方的にしゃべる授業は、受け身の姿勢、納得できなくても答えを覚えればいいという姿勢を育んでしまいます。
意見を持つこと、言うこと。対話が当たり前の社会。
学校教育、何よりも授業の中にチャンスがあります。
いやあ、それにしても学校でしかできないことがあり、先生はやりがいのある仕事です。
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