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「ブルーハーツ的な何か~未来人のための人生論~」【後】PTA向け講演会レポート

こんにちは。高校教員応援マガジンです。
前編に続き、林先生が講演で実際にお話しした内容を実録調でお届けします!

前編はこちら▼



PTA講演会を再現!

(前編からの続きです)

未来人へのメッセージ

最近、金融教育に絡めて、フューチャー・デザインの授業が実施されています。
例えば、今から30年前の社会がどうだったかを振り返ります。
1994年です。
バブル崩壊後の経済低迷が続き、阪神・淡路大震災、オウム真理教事件がありました。
関空が開港し、プレステが発売されました。

2024年に生きている皆さんは、30年前の人たちに何を言いたいですか。
「もっとこうしてほしかった」と物申したいことがありますか。
では、隣の人と話してください。
2分間です。ハイ、どうぞ!
(2分後)
……ハイ、ありがとうございました。

結構、文句を言っている人がいましたね。
「失われた30年をどうしてくれるんだ」と。

では、今度は皆さんは2054年の未来人になってください。
どんな社会でしょうか。
2054年の未来人から、2024年に生きている人たちに何と言いますか。
何を求めますか。
隣の人と話してください。
2分間です。ハイ、どうぞ。
(2分後)
……ハイ、ありがとうございました。

最初、少しためらいがありましたね。
おそらく、30年後がどうなっているか、十分考えていないからだと思います。

こうして、過去、現在、未来を考えるのが、フューチャー・デザインの授業です。

未来をデザインする。
そこからバックキャスト(逆算)して現在を考える。
子どもたちだけではなく、大人にも必要な思考ではないでしょうか。

〈参考〉



ブルーハーツの楽曲から人生論を語ります

本論に入りましょう。
ブルーハーツから、人生を論じます。

論じるにあたり、私はいつも、どうすると失敗するのかを明らかにします。
何をやってはいけないか、ということです。
失敗については、野中郁次郎他『失敗の本質』というベストセラーがあります。
畑村洋太郎『失敗学のすすめ』もあります。
そして、野村克也監督の名言「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」があります。

「勝ち」には色々な要素があり、勝因を「これだ」と言いがたい。
しかし「負け」、つまり失敗の原因は明らかにしやすい。
よって、まずはその点に気をつけることから始めるべきだということです。

例えば、生徒が進路を決めかねているとき、「どうしたらいい?」と聞くよりも、「どういう選択だったら、失敗する?」の方が答えは出てきます。
「そうか、では、絶対選んではいけない、選びたくないものをハッキリさせ、それを除外しよう」と言います。
選択肢を1つ2つと減らし、選択の幅を狭くする。
1つ、2つと自分で決めていく。
そうすると、人は落ち着きます。

では、皆さん、教育における「こうすると失敗する」は何ですか。
隣の人と話し合ってください。
ハイ、どうぞ。
……ハイ、ありがとうございます。


リンダ リンダ

ここから、ブルーハーツの曲を6曲紹介します。
1曲目は「リンダ リンダ」。こんな歌詞です。

私が注目するのは「写真には写らない美しさ」です。
これは、サン・テグジュベリ『星の王子さま』に通じます。

読んだことある人は手を挙げてください。
ハイ、ありがとうございます。
結構、いましたね。
「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」

ところが、私たちは目に見える形、様子で判断しがちです。
目に見えない大切な何かに想いを寄せること。
ひょっとすると、私たちの関わりによって、違う面が見えてくるのではないか。
見えるものを超えて、想像し考える。そう心がけたいものです。

*****

チューインガムをかみながら

2曲目は「チューインガムをかみながら」。こんな歌詞です。

最初の部分「……ペチャンコにされてたまるか」、時々口ずさみます。

まず「疑問符」ですね。
「問い」を立てる人でありたいです。
子どもにもそうあってほしい。
「問い」がないということは、考えないということです。
誰かが決めて与えた「正解」にただ従うということです。
そんな人生はつまらないですね。
子どもの問いを促し、問いを向けられたら、きちんと相手をしたいものです。

「問いの言葉」があります。
「はて?」
「”みんな”って誰?」
「それをやったら、どうなるの?」……

皆さんがよく使う問いはありますか。
隣の人と話してください。
ハイ、どうぞ。
……ハイ、ありがとうございます。

私は小学生の頃、自分ではわかっているつもりでまとめて、ざっくり言ってしまうことがあり、先生から「”いろいろ”と言うな。”たとえば”、と具体的に説明しなさい」と叱られたことが忘れられません。
それで、自分にも人にも「たとえば?」と聞きます。
授業中は、「ホントか?」が口癖でした。
鵜呑みにせず、生徒に自分で考えてほしかったからです。
よく真似されていました(笑)

管理職になってからは、「根拠は?」「目的は?」が多いです。
恩師の一人は「もし私だったら、どうするか?」とよく言っていました。
「別の見方をすると、どうなる?」と聞くこともあります。人は一面的に見てしまいがちなので。

「三角定規じゃ 測れないものがあります」
そのとおりです。尺度は複数あります。
多面的に評価する教育がよいと思います。

*****

情熱の薔薇

3曲目は「情熱の薔薇」。こんな歌詞です。

「いつまで経っても変わらない そんなものあるだろうか」
私は、不変の大事なこともあると思います。
しかし、ここで歌われているのは、変化を認識せず、過去の何かに固執することへの批判ではないでしょうか。

VUCA(ヴーカ)という言葉を聞いたことがある人はいますか?
Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉です。

加速度的かつ激しい変化の時代です。
例えば、子どもたちを取り巻く環境が変わっているのに、自分自身の子ども時代の経験で語る人がいます。
いないとは思いますが、人口増加、高度経済成長時代の価値観で諭していないでしょうか。
1人当たりGDPが世界2位だった、2000年の日本のイメージで考えていないでしょうか。
今や、34位です。
2022年のスマホの所有率は、小学生がすでに64%で、中高生は90%を超えています。
20世紀にスマホはなく、フィルターバブルもエコーチェンバーもありませんでした。
企業、仕事、組織、テクノロジーの在り方は変わりました。
新入社員の1/4は3年以内に離職することを考えています。
学習指導要領も、学び方も、学びの道具も変わっています。
大学進学率も、現役・浪人の比率も、学部・学科も、入試方法も昔とは異なります。

VUCAに打ち負かされるのではなく、何が変化したのか、不易と流行は何か、落ち着いて見定める必要があります。

「答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方」
「花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方」
答えを性急に求めないよう、気をつけます。
手っ取り早く成果を見ようというのではなく、むしろ、水やエネルギーをあげることを考えなければならないと言い聞かせます。

ちょっと歌詞の解釈が自由過ぎるでしょうか。
いいんです。
音楽も詩も、受け取り方は自由です。

コーチングにおける「問いの言葉」の大切さを教えてくれたのは、石川尚子さんです。
「なぜ、できなかったのか?」と過去に向かうのではなく、「次はどうすればできる?」と未来志向で問う方がよいと言っています。

 *****

ブルーハーツの曲、半分終わりました。
では、ここまでの感想を隣の人と話し合ってください。
2分間です。ハイ、どうぞ。
(2分後)
……ハイ、ありがとうございます。

*****

ロクデナシⅡ

4曲目は「ロクデナシⅡ」。こんな歌詞です。

「どこかのエライ人 テレビでしゃべってる
 今の若い人には 個性がなさすぎる
 僕らはそれを見て 一同大笑い
 個性があればあるで 押さえつけるくせに」

こんな経験はありませんか。
「自分で考えなさい」と言われ、意見を言うと、嫌な顔をされる。
「失敗を恐れるな」と言われ、挑戦し失敗すると、「無謀」だと言われる。

アドバイスはよくよく考えて言いましょう。

*****

TRAIN-TRAIN

5曲目は「TRAIN-TRAIN」。こんな歌詞です。 

「ここは天国じゃないんだ かと言って地獄でもない
 いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない」
「聖者になんてなれないよ だけど生きてる方がいい」

天国か地獄か、白か黒か、0か1か、あれかこれか、期待か失望か、賞賛か非難か。
「二項対立」思考ばかりが世の中にあふれています。
現実はもっと複雑、多様で変化します。

「◾️◾️は⚪︎⚪︎ばかり」といった過度の一般化にも気をつけましょう。
一度白い犬に吠えられて、「全ての白い犬は吠える」みたいな。

「完璧な何か」があるという考えも健全とは思えません。

*****

キスしてほしい

ラスト、6曲目は「キスしてほしい」。こんな歌詞です。

何と言っても「生きているのが 素晴らしすぎる」がいいです。
子どもたちが、未来人が
「大人になるのってステキなことだな」
「大人になるのもわるいもんじゃないな」
「あんなカッコいい大人になりたいな」
と思ってくれたら、最高です。

教育者である先生や親が、子どもたちに「生きているのが 素晴らしすぎる」と伝えられたら、いいじゃないですか。

そのためには、私たち大人自身が「生きているのが 素晴らしすぎる」と思えるような人生を送れるよう努めたいです。
「そんなことを言っても」とためらいがあるなら、誰か「あんな生き方をしたいな、見習いたいな」という大人の話をすればよいのです。

私の友人に、近藤寛子さんという視覚障害のマラソンランナーがいます。

三人のお子さんが生まれた後、網膜色素狭窄症を発症し、落ち込んでいましたが、川嶋さんという伴走者と出会い、ランニングの楽しさに目覚めます。
日本ブラインドマラソン協会の強化指定選手になり、リオデジャネイロのパラリンピックの出場権を得て練習に励んでいましたが、夫が急死し、「もう走れない」と悲嘆に暮れます。
長男に「親父を連れて行く約束はどうするんだ」と怒られ、また走ります。
2016年、リオのパラリンピックに出場し、5位に入賞します。
次はメダルをと走り続けましたが、東京、パリの出場は叶いませんでした。
今も彼女は走っています。

近藤さんは言います。
「不便だが不幸ではない」
「できないことではなく、できることを見つける」

明石家さんまさんは、皆さんご存知ですね。
1985年8月12日、日航機墜落事故が起こり、520名の方が亡くなりました。
彼が東京から大阪に移動するのによく利用していた便です。
その日は違う便で大阪に行き、ラジオ番組を始める前に事故のことを聞きます。
動揺し、ほとんど話せなかったそうです。
そして、思いました。
俺は命拾いした。
生きていてよかった。
生きているだけでありがたい。
生きているだけで、丸もうけだ。
助かった人生。
どんなバカなことをやってでも、人を笑顔にさせて生きていくんだ。




ここで本を紹介します。 

私たちの人生に完璧などありません。
できるのは、出会いへと自分を開くこと。
ステキな人や本、体験から学び続け、「素晴らしすぎる」と思える人生を目指すことだけです。
生きているだけで、丸もうけです。
困難にぶつかっても、学べば、話せば、走れば、力も出ます。
寂しいときは、木曜夜9時、私のラジオ番組をお聴きください(笑)

ご清聴、ご参加、ありがとうございました。



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