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赤ペンを使わない添削指導|特別選抜対策、その前に【高校教員応援マガジン】

こんにちは!代ゼミ教育総研note、編集チームです。いよいよ2学期が始まり、年内入試の足音が聞こえてきました。

年内入試・特別選抜につきものの、小論文・志望理由書・自己推薦書の添削指導が増えてくる時期でもあります。

国語教員として数多の生徒の添削指導に携わってきた鈴木研究員に、「文章を書く以前の問題を解決できる」添削指導について語っていただきました。



✎添削指導における、ある問題

 この文章を書いているのは、9月1日です。総合型選抜や学校推薦型選抜に出願する生徒の個人指導に当たられる先生を念頭に置いて書いています。

 3年生を指導する先生は複数回の添削指導をし生徒を受験会場に送り出すわけですが、はっきりとした手応え(合格するに足る文章力が身についた)を感じて送り出している先生はどのぐらいいらっしゃるでしょうか。

送り出したものの、生徒が試験中にうまく小論文が書けるかどうかは、当たるも八卦当たらぬも八卦というある種の運で、生徒が充分に小論文を書けるという確証を得られないまま当日を迎えるということが多いのではないでしょうか。あるいは、何度添削しても生徒がうまく文章を書けるようになっていない、さらにはある設問は書けても、全く違う傾向の設問になると途端に書けなくなってしまうという弱みを持ったまま試験日を迎えてしまうということも多いと思います。

 指導する生徒を複数抱えていらっしゃる先生の場合、授業の終わった放課後や時には自宅に持ち帰って添削し、(できれば)翌日には生徒に返却なさるという感じでしょうか。その際に口頭で添削した部分を説明し、アドバイスを述べることを繰り返していらっしゃる方も多いでしょう(そしてかなりご自分が疲弊してしまっている)。そういう指導をして、次回うまく書けているかというと決してそうではなく、指導の難しさを感じてしまう...。

 ここにある問題があります。それは、生徒の書いた文章のどこがまずいかを「分かっているのが先生」で、生徒の文章をどう直せばよいかを「考えているのが先生」だという問題です。

これを、自分の書いた文章のどこがまずいかを「分かるのが生徒」で、自分の文章をどう直せばいいかを「考えられるのが生徒」にしたいのです。換言すれば、添削しなくても生徒自身が気づくようにしたいのです。

✎指導のしかたを変えてみる

 高校国語科教師であった筆者は、進路指導課から割り当てられる受験生の小論文指導を毎年行っていました。そして上記の例と同じで、多くの原稿用紙を抱え、授業の隙間や放課後に添削をしていました(終わらない時は自宅で)。やっと添削が終わり、生徒を呼び出して説明しながら返却すると外は既に真っ暗になっているということの繰り返しでした。その結果、「こちらの努力」に比例して生徒の問題解答力・文章力がみるみる向上したかと言えば、さにあらずでありました。

 そこで、いろいろな実践事例を参考に、自分のそれまでの指導のしかたを変えてみることにしました。まず、書けない生徒の多くが、設問の求めとは違うこと(ズレた内容)を書いていることに着目しました。そこで考えたことは、文章を書く以前に、生徒自身が設問をちゃんと読んでいないのではないか、あるいは設問の要求を正しく把握しないままに書いているのではないかということでした。

 小論文の設問文は長くはありません。だから、誰でも読めているはずです。しかし、読ませてから、「この設問の要求と、ついている条件は何だい?」と質問すると、結構読み取りを誤っているのです。

 この経験から、添削する前に、設問文を「声に出して」読ませることにしました。そして生徒が音読した後に、「この設問の『要求』と『条件』は何だい?」と聞きます。一回で正しく答える生徒も入れば、間違う生徒もいます。そういう設問文の読み取りの「練習」をしました。

 何度も練習して正しく把握できれば、設問の「条件」(「具体的に」とか「あなたの経験をもとに」とか)をふまえて「要求」に答えた、文章になるのです。(大学入試の小論文は、自ら問いを立てて結論まで導く文章ではなく、「設問にこたえる文章」だと筆者は考えています)

✎赤ペンは、使わない

 そこまで行って、赤ペンで添削した生徒答案を返却したのではありません。実は、指導の最初の段階では赤ペンは使っていませんでした。それどころか、添削もしていません。では何をしたかというと、生徒自身に自分が書いた答案を「音読」してもらうのです。音読後私が聞きます、「どうだい?」と。すると生徒が答えます、「ズレてました」あるいは「(要求に)こたえていません」と。このやりとりで、生徒自身の「気づきを促す」のです。こちらが赤ペンを持って(気合いを入れて)一から十まで直すのではありません。

 生徒が気づいてくれたら、次にこう聞きます。「じゃあ、どういうことをどんな順序で書けば良かったんだ?」と。「要求1と要求2を○○という条件をふまえて書けば良かったです」と生徒が答えます。

 お分かりでしょうか? 赤ペンを待たずとも「添削」終了です。私の場合、小論文個人指導の最初の5回くらいは、こういうことを繰り返していました。

 設問をきちんと読み取れば、こたえる順序・文章の構成まで自動的に決まります。(まだ文章を書いていませんが)構成が考えられれば、それぞれの途中の部分に何を書き入れるかを考える時間です。要求に対する解答は何にするのか、解答を支える根拠は何にするのか、根拠を裏付ける実例をどうするか、と考えていきます。それらができあがれば、設問についている条件をふまえながら書いていきます。これでやっと文章が完成します。

 赤ペンを持って添削するのは、この段階の文章です。この段階では設問の読み取りミスなどを指摘しなくていいので、評価するのは以下の点になります。

 1 一度で読めたか(書かれている文章は、途中でつかえる所・不明な所はなく、最後までスムーズに読み進むことができたか)
 2 解答・主張はあるか(設問の要求に対応しているか)
 3 根拠は有効か(主張を支える充分な根拠になっているか)
 4 条件をふまえているか
 5 誤字・脱字はないか
 6 正しい原稿用紙の使い方か

以上のような指導で生徒の文章力が向上します。

赤ペンを使わない添削指導、ぜひ一度試してみてください。


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