新しい教育をめざして【注目の新設大学・学部など/次期学習指導要領】
【注目の新設大学・学部など】
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▷東京科学大学
10月1日に、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、東京科学大学が誕生することは先だって記事に書きました。
この 2 校の統合で、両校の研究者の真の融合につながり、多くのイノベーションを生み出すことにつながれば、医学界に新しい風を吹き込むことは間違いありません。
この他にも、教育界の新星となるであろう、注目の新設学部・プログラムを2つ紹介します。
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▷佐賀大学 コスメティックサイエンス学環
佐賀大が、コスメティックサイエンス学環(※学部相当)の設置構想を発表しました。コスメティックサイエンスを扱う学部は国立大としては初の領域とのこと。少々びっくりのニュースです。
▼国立大学初 佐賀大学コスメティックサイエンス学環(仮称)設置構想について(佐賀大学広報室)
記者会見では、担当者曰く、コスメテティックサイエンスは海外では独立した学問として扱っている、とのこと。(共同通信より)
コスメをイメージしたポスターには、「学びは、鏡の中だけじゃない。」のキャッチコピーが。面白いタイトルですね。
確かに、コスメの世界はいまや韓国を中心に東アジアが先進地域。受験生がどのように反応するか、動向を注視していきたいところですね。
なお設置は2026年度を予定。定員は30人を予定しています。
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▷福岡工業大学 半導体スペシャリスト育成プログラム
世界最大級の半導体メーカー、TSMCの熊本進出に伴い地域全体が活性化していることが大きく取り上げられています。
▼TSMC進出で人口増続く熊本県菊陽町が描く3エリアの「将来ビジョン」…商業施設・ホテル・大学誘致へ(読売新聞オンライン)
さらなる産学連携をめざすべく、福岡工業大学と台湾の「明新科技大学」が連携し、協働教育プログラムを始めました。
このプログラムで、福岡工業大学の学生たちは1~3年次に福工大で半導体の基礎知識や語学の修得をします。4年次には通常履修する「卒業研究」と明新科技大学での1年の学修を交換。グローバルなエンジニアの育成が期待されます。
さらに、福岡工業大学と台湾の「国立雲林科技大学」が協力し、TSMC設立の「日本人プログラム」が2025年度から雲林科技大学で開講予定です。
▶台湾雲林科技大×福工大、TSMC設立の「日本人プログラム」募集協力開始
対象は、高卒生・高専卒業者・短大卒業者・大学生と幅広く、授業料無料に加え毎月の生活補助金が出るなど、人材育成への期待が伺えます。これからの動きにも要注目です。
【次期学習指導要領とフューチャー・デザイン】
9月17日、文部科学省から「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の論点整理(案)が公表されました。
▼今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会 論点整理(文科)
▼【詳報】今後の教育課程の有識者検討会 論点整理の全体像(教育新聞)
昨年12月以降、15回にわたる会議を踏まえて取りまとめられたものであり、次期学習指導要領を見据え、今後の教育課程の改善の検討において、重要な役割を持つことは間違いありません。
項目は次のとおりです。
項目を見ると膨大な資料にも思えますが、「論点整理」であるゆえ、中身は19ページに簡潔にまとめられています。各会議における委員提出関連資料も示されており、背景を確認することもできます。
💡研究員はこう考える
学校現場では、高校は現行学習指導要領の完成年度であり、そこで掲げられた理念の実現に向け、趣旨を具体に生かすべく必死になっているところです。
「次を考える余裕などない!」と叫びたくなるかもしれませんが、この「論点整理」を読み、考え、対話する時間をつくりたいものです。
学習指導要領は、概ね10年ごとに改訂されます。戦後、様々な変遷がありましたが、国における教育の重要性は変わりません。
人が全てであり、教育なしに人は生きていけません。学習指導要領は、国が定める学校教育の基準であり、設計図です。「論点整理」が教育関係者以外にも広く読まれ、議論されればよいと思います。
さて、現行の学習指導要領は、10年前、2014年度に中教審諮問があり、2016年度に答申が出されました。その際、2030年の社会を想定し、そこで必要な資質・能力は何かを考えています。
社会の変化の基本的な方向性は変わっていませんが、VUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)の時代と言われ、変化が加速しています。
▷この10年間の社会と学校の変化とは何でしょうか。
2020年から3年間コロナ禍に置かれた中、GIGAスクール構想が前倒しで実現され、生徒は端末を手にしています。
2022年11月にChat GPTが公開され、翌2023年文科省から生成AIに係るガイドラインが示されるなど、テクノロジーの面で想像上以上の変化が起こっていると言えます。
教員にとっては、「働き方改革」が理想どおりには進まないどころか、教員不足に苦悩する中、激しい変化に対応するのは大変困難なことです。
しかし、より大変なのは、子どもたちです。
「見通す」「振り返る」が、子どもたちの学びに求められていますが、私たち大人が範を示そうとするべきです。
「論点整理」を参照しながら、10年後どころか、30年後、100年後の未来社会を見通し、そこからバックキャストし、今やるべきことを考える必要があると思います。
▷フューチャー・デザインを考える
近年、金融教育が重要なテーマとなり、各校で取組が進んでいます。その際、未来の自分や社会を思い描くことなしに、お金に係る人生設計をすることはできません。まだそこまで考えていなかったり、将来何が起こるかわからなかったりするかもしれませんが、ビジョンを描かなければ、単なる勉強で終わってしまいます。
財務省が取り組んでいるものに、フューチャー・デザインの授業があります。
授業では、例えば、最初に1994年の日本の社会状況を学びます。そして、2024年に生きる人間として、30年前の人たちに向かって「もっとこうして欲しかった」「こうしてくれればよかったのに」という政治・経済上の施策を挙げます。これは、過去をデザインすること(パスト・デザイン)です。
次に、30年後、2054年の未来人がここにやってきたと仮想します。さて、その未来人は2024年の私たちに何を言うでしょうか。褒めたたえてくれるでしょうか。それとも、、、
そして、未来人から批判されぬよう、未来人に問題を押しつけないよう、今どうするべきかを考えるのです。このフューチャー・デザインの視点をこれからの教育にも取り入れていきましょう。
『論点整理』は「これからの社会像」から始まっています。
まずは、私たち一人ひとりが未来を想像する、未来人の身になってみることから、次期学習指導要領、今後の教育改革を考えてみませんか。
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