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また、本の森が伐採された

私は書店員でもなければ出版社の社員でもない、ただの本好きだ。
それでも周りの本屋が閉店する度に、嘆かわしい気持ちにならざるを得ないものだ。

地元に住んでいた頃も、足繁く通っていた書店が無くなったり、「駅からのアクセスが良く、よりコンパクトに♪」と謳いながら規模が縮小したりするのを何度か見た。
そして先日、近所の数少ない書店が姿を消した。

やはり電子書籍や通販の普及や、ショート動画などの短時間で消費できる娯楽が広まったことで、紙の本の需要が減ってしまっているのだろう。
(上の世代の方々に言わせれば、『若者の本離れ』などと宣うのだろうが)

スマホ一台ですぐに買えてサクッと読める、という大きな利点は一理あるなと思い、小説を何冊か電子書籍で読んだことがある。
確かに、出先で読みたい時も荷物がかさばらないというメリットはあるが、やはり私には合わなかった。

紙を捲る感触がなく、「本を読んでいる」という実感が無い。大げさな表現をするならば、活字の味がしない。まるで何かしらの料理を模した、無味無臭のゼリーを食べているかのようだった。

紙の本を買うにしても、極力書店で買いたいものだ。
店舗に行けば、欲しい本が手に入る嬉しさもひとしおだし、あらゆるジャンルの、沢山の書籍が目に入るので、思わぬ出会いもあるものだ。
偶然立ち読みした本が面白くて、購入に至ったことだって何度もある。

通販を使えば確かに欲しい本はすぐ手に入るのだが、あくまでそれは最終手段に留めておきたい。
せいぜい、売れ筋のものや欲しい書籍、あるいは関連商品が画面上に出てくるくらいで、本を見漁る楽しみも半減される。

そんな、次々と姿を消してゆく書店を少しでも助けられればと、新卒で書店に就職したいと思ったのだが、全国転勤だったりそもそも募集がなかったりで、結局それは叶わなかった。

結局私は、本とは一切関係のない仕事に流れ着いた。
しかしそれでも、便利さばかりが追求されるこの現代で、紙の本を捲る楽しみ、そして本の森を練り歩く楽しさを忘れてしまった人たちに、何かしらの方法でそれらを思い出させられないかと、今でも時々思うのだった。


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