レジでピロピロ揺れてる渋沢栄一を見た

健康診断を終え、支払いを済ませると受付のお姉さんからドトールのチケットを渡された。ここでは、健康診断の後、病院に併設されているドトールで使える無料チケットをいただけるらしい。しかも、バームクーヘン1個と飲み物1杯のセット。これ、地味にテンションあがるやつ。

ニコニコ笑顔とルンルン気分でドトールはどこだどこだ♪と病院内を探す。無事見つけて、早速レジの列に並んだ。

一つ前のお客さんは、若い夫婦と赤ちゃんだった。生後3ヶ月くらいの赤ちゃんを旦那さんが抱っこ紐で抱っこしていて、奥さんがレジで注文をしていた。彼女は、コーヒーとミルクレープのセットを二つ頼んでいた。

二人仲良く全く同じもの頼むスタイルのご夫婦。もし、私の気持ちが荒んでいるときならば、コーヒー一緒はいいとして、なんでケーキも同じもん頼むねん、といらぬ悪態をつくかもしれない。しかし、今の私はルンルン気分なので、夫婦で全く同じセットを頼むなんて、なんとまぁ素敵なご夫婦、仲良しですね、幸せですね、ウフフってな具合である。

注文を受けた店員さんは、かしこまりました、と早速準備を開始する。ショーケースからミルクレープを取り出しお皿に乗せて、続けてコーヒーをカップに淹れて、注文された商品を続々と準備している。

その間の時間である。銀色のレジ受け皿の上に乗せられた渋沢栄一が空調のそよ風を受けてピロピロと揺れていた。奥さんが、注文と同時にお財布から1万円札を取り出して、すぐさまレジの受け皿にお札を乗せたもんだから、店員さんが準備しているしばらくの間、渋沢栄一がずっとピロピロピロピロしていた。

シワのない綺麗な1万円札だが、真ん中でやんわりと折れている。ピン札を二つ折り財布に入れたのだろう。やんわりとカーブしている部分を支点に渋沢栄一は、シーソーのようにピロピロと揺れている。

受け皿の上で飛ばされそうで飛ばされない程度に依然としてそよ風を受ける渋沢さん。ずーっとこちらの方を向きながら、ピロピロピロピロピロピロピロピロしてる。重しがあれば、よかったのにな。重しがあれば、こんなにピロピロピロピロしなかったのにな。

ともあれ、お札になるということは、すなわちこういうことなんだろう。きっと福沢諭吉も聖徳太子も通ってきた道なんだろう。備え付けの空調の風を無防備に受けて、ピロピロしてしまうことがお札になるということなんだろう。偉人なんてもんは、ピロピロさせられてなんぼなんだろうな。なんていうか、ピロ沢栄一になってこそ、渋沢栄一なんだろうな。

なーんてことを考えてたら、自分の番が来た。

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・こぼれ話

ドトール最高でした。健康診断の後に何かもらう系で1番テンション上がりました。来年もこの病院に行きます。