借りたままの本
週に一度は、本屋さんをうろうろする時間を設けている。世の中の流行りを仕入れにいく目的ってのは、嘘。
実際のところ、本に囲まれた空間にいるだけで心がリセットされる気がするのだ。まぁ、要するに現実逃避といったところか。
頭をできるだけ空にして、ホワホワと本を眺める。タイトルを読んだり、装丁の美しさに惚れ惚れしたり。気になった本は、パッと手にとって、ちょっとだけ読んで、スッと戻したり。
その一連の出会いが楽しい。
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最も出会いというと、全てがポジティブな印象を受けるが、ネガティブな感情を呼び起こす出会いもある。
昨日は、後者だった。目についた本は、そういえば高校のときにアイツから借りたやつだ。そして、借りたけど、読まなかった本だ。
なぜ読まなかったのか。そもそも当時の私は、本を読む習慣がなかった。なのに、アイツから本を借りた。あれ?そもそも、なぜ借りた?
多分、アイツと仲良くなりたかったからだ。仲良くなりたくて、お勧めしてくれた本を借りた。のに、読まない。まぁ、今更何も思わない。私なんてこんなもんだ。
もちろん本の感想を言い合うことはなかった。だって、読まなかったから。
かといって、変な関係になるわけではなく、それ以来アイツとは、なんとなく仲良くなった。それなりの距離感でほどよく仲が良くなった。
そうこうしてるうちに卒業した。離れ離れ。で、一切会っていない。
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一応Facebookでは繋がっている。アイツが出世しまくっていることは、そこで存じ上げている。
アイツが私のことを覚えているとは思えない。本を貸したことも忘れているだろうし、本が返ってきてないことも忘れているだろうし、そもそもお気に入りの本だったとしたら、「ま、いっか」くらいのテンションでもう一冊買っているだろう。
アイツには、この件に関して何も残っていない。私だけ。私だけが残ってる。本屋さんで同じ本を見つけて、noteのネタにするくらいのヘンテコで気色の悪い感情が今なお残ってる。
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借りたままの本は、もうどこかに消えてしまった。今さら読もうとも思わないし、探そうとも思わない。
おそらく実家のどこかにはあるだろう。もう少し後になって、ひょっこり出てくるかもしれない。
その時も思うだろう。「ああ、そういえば、アイツに借りたっけな?今どこで何してんだろう」くらいの気色の悪い何かを。
はぁ。。。
残念ながら、私はそういうどうでもいいことを自分勝手に大きくしてしまう性質を有している。
多分、死ぬまでこの感じは消えない。