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花には水を 君には夢を【戯曲/脚本/コント】

これも10代の頃に書いた作品。短編です。
先生に「良いです」と一言だけ添えられて返却された記憶。
良いってどういう良いだろうとすごく考えた記憶があります。
コントの題材やボイスドラマとかにいかがでしょうか。🐶




人物
ホンダ   二十代前半の男性。売れないカメラマン。
エミリ     女子高校生。不登校の3年生。
アサコ     六十代後半の女性。エミリの祖母。
男       大学生風な男性。


東京。都心。雑踏。
それを象徴するように、踏切の音や人々のざわめく音が響き渡る。徐々に音が大きくなり、それに合わせて幕が上がる。幕が上がりきると、その音はやや静かに響いたままとなる。
舞台の上手には木製の古びたベンチが一つ。その横にはごみ箱が。
舞台下手から大きな鞄を持ったホンダが、カメラを構えながら登場。足取りは緩く、周りが見えていないのかレンズを覗いたままフラフラと歩き続ける。断片的に聞こえるシャッター音。無機質に、ひたすらに、周りの風景を撮り続けるホンダは、ようやく人の波に気づき始めたのか、身体を捻って人々を避ける。その手がカメラから離されることはない。
ここで一つ、今後この物語が幕を下ろすまで守らなくてはならない条件が出現する。カメラを構え、そのレンズ越しに何かを見ているホンダの表情は、いつでも柔らかいものでなくてはいけない。


ホンダ   (鼻歌を歌う)


舞台中央まで来た瞬間、彼の身体が大きく震動する。そのまま派手に地面に倒れこむ。どうやら後ろから走ってきた人に思い切りぶつかったらしい。その間も人々の波は止まらない。ホンダは彼等の迷惑そうな視線を気にすることなくマイペースに立ち上がり、上手に向かって歩き出す。再びカメラに手を伸ばしてシャッターを切り始める。
夢中でシャッターを切っている彼は下手から聞こえる声に気が付かない。
    

エミリ   だからさぁ、わかってるってば!!ちゃんと考えてるって!!


下手から携帯を片手に制服姿のエミリが早足で登場。

エミリ   だからアタシはッ…将来のことは真面目に…ッ!って、もしもし!?もしもし!?
      あーッなによ!!電話かけてきたのそっちじゃない!!何勝手に切ってんのよ!!…はぁ…

エミリ、携帯をポケットに突っ込むと、深く溜め息をつき、項垂れる。
何度目かのシャッター音で、顔を上げる。

カシャ

エミリ   ………。(しばらくの間ホンダを凝視する)

カシャ…カシャ…

エミリ   ………お…う…??

カシャ…カシャ…

ホンダ   は…?(ようやく彼女の視線に気づきカメラから顔を離す)
エミリ   え、
ホンダ   え。
エミリ   は、
ホンダ   は。
エミリ   トウサツ!?
ホンダ   盗撮!?
エミリ   盗撮犯!!
ホンダ   な、何勝手なこと言ってるんですか!!いっ、言いがかりはやめ…
エミリ   いくらアタシが世界的美少女だからって盗撮するなんてサイテーよ!!
ホンダ   ……お…う…??
エミリ   確かにアタシが可愛いのも罪よ?でもだからって、勝手に許可もなく写真を撮るのはいただけないわ。信じられない。この変質者ッ!(と言いつつポーズを決める)
ホンダ   えええ…。(ようやくカメラから手を離す)
エミリ   警察に突き出してやるわ!!(ポーズを決める)
ホンダ   えええ…。明らかにこちらが被害者ですよこれ…
エミリ   美少女の言うことは絶対よ。
ホンダ   どこに美少女がいるかぜひとも教えていただきたいです。
エミリ   つべこべ言わずに警察に行…
      って、駄目駄目。何言ってんのアタシ…警察なんて…(溜め息をついてホンダに背を向ける)
ホンダ   あぁぁあああッ!!!(エミリを突き飛ばす)
エミリ   ほぎゃァッ!!(吹き飛ぶエミリ)
ホンダ   ふぅ…危なかった…。


舞台上に転がったまま動かないエミリを心配する様子もなく、エミリが先ほどまで立っていた場所に座り込み、カメラを向ける。


エミリ   ………うぐ…ッ…なんなの…一体…
ホンダ   (気にせず写真を撮り続ける)
エミリ   (勢いよく立ちあがって)ああッ!もう!何よ!!!何してくれてんのよ!!
      …ん…?花…?雑草…?やだそれ貧乏草じゃん。
ホンダ   ハルジオン。
エミリ   はるじおん?
ホンダ   可愛い花でしょう。
エミリ   どこにでも咲いてる雑草じゃない。知ってる?その花、折ったり摘んだりしたら貧乏になるって言われてるのよ。
ホンダ   だから貧乏草、ですか?
エミリ   うん。おばあちゃんが昔教えてくれたの。
      ……って、え、ちょっと待って。そんな雑草を撮るためだけにアタシのこと突き飛ばしたワケッ!?
ホンダ   貴女がこの花を踏み潰そうとしたから、ちょっと避けていただいただけです。大袈裟なこと言わないでください!
エミリ   はぁあッ!?ちょっとどころじゃなかったわよ!!制服も汚れちゃったし!
ホンダ   私が何をしたって言うんですか!?そっちが勝手に転がっていったんでしょう!?言いがかりはやめてください!

エミリとホンダ、舞台下手付近で口論を続ける。
上手から男が入ってきたのに気がつかない二人。男は二人を確認(物色)した後、上手ツラに静かにうつ伏せに倒れる。暫くこの状態が続く。


エミリ   もう!話になんないわ!!盗撮犯のクセに変な言いがかりまでつけて…!!
ホンダ   一方的ににいちゃもんつけてるのはそちらでしょう!?いい加減にしてください!
エミリ   はぁッ!?ああッもう!わかったわ!出るとこ出てやるわよ!!(上手へ振り返って出て行こうとする)
ぼぎゃあああッ!!!???
ホンダ   なんですか!
エミリ   ひ、人が倒れて…!
      ちょ、ちょっと、大丈夫でsぶほおッ!!!(ホンダに突き飛ばされる)
ホンダ   シャッターチャンス!!(その場で男を撮り始める)
エミリ   うぷッ…な、なにしてんのよ…!
ホンダ   これはッ!スクープですよおおおおおお!
エミリ   はぁ!?
ホンダ   白昼堂々と行われた完全犯罪…!目撃者はゼロ…!突然死の謎…!(興奮の中シャッターを切り続ける)
エミリ   あんたバカァ!?人が倒れてんのよ!?ていうか死んでるわけないじゃない!
ホンダ   煩いです!これはスクープなんですよ!?この写真を新聞社、それからテレビ局に売りつければ…ぐふふッ…
エミリ   きもい!!(ホンダを止めようとする)
ホンダ   二か月ぶりに給料にありつけるかのチャンスなんです邪魔しないでください!(エミリを押しのける)
      逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…(言いながらカメラを構えつつ男に近づく)


エミリ、一呼吸おいて無言でホンダの襟首を掴んで舞台中央へぶん投げる。
吹き飛ぶホンダ。動かない。
エミリ、上手に倒れたままの男に近づく。


エミリ   あの…大丈夫ですか…?
男     う…すみません…気分が悪くて…ぐふゥッ…
エミリ   大変!すぐに救急車、呼びますね…!
男     いや!!いいんです、そんなことより、(顔は上げずに上体を起こし、エミリの腕を掴む)
エミリ   え…え…?
男     貴方の家で休ませていただけないでしょうか?
エミリ   え、
男     ほんと、ちょっとだけでいいんで…
エミリ   え、なに、え、なにこのパターン。ちょっと待ってよ…。いくらアタシが世界的超絶美少女だからって、こんな傍迷惑なナンパとか、困るわ。(言いつつ決め顔)
男     え?(顔を上げる)
エミリ   え?
男     ……。
エミリ   ……。
男     …ちがう
エミリ   は…?
男     お前じゃねェ。
エミリ   は?
男     なんなんだよ!こんな長時間待ったのに!何でお前が声かけてくんだよ!!
エミリ   ………………。
ホンダ   (ようやく意識が戻ってきたのか起き上がる)いたたた…
男     そう!お前!
ホンダ   はい…?
エミリ   ……………………。
男     お前が声かけてくれんの待ってたのに!なんだお前!誰だお前!!
ホンダ   ちょっと!そこの暴力学生!早急に謝罪と賠償金を求めます!!貴女がしたことは立派な傷害罪です!ていうか単純に怖いです!!めっちゃ怖いです!! 暴力反対です!!非暴力!非服従!!
エミリ   ……………。
男     俺も訴えてやる!!詐欺罪だ!!なにが世界的超絶スーパー美少女だよ!


エミリ、くるっと方向転換してホンダのほうを向く。無言で拳を構える。


ホンダ   え…
エミリ   ふッざッけッんッなぁぁぁぁぁああああアアァァァッ!!!(そのまま突進)
ホンダ   ぎゃあああァァあァアアァッ!!(叫びながら下手へ逃亡)
男     あッ!ちょ!!お兄さん!!せめて名前だけでもおおおッ!!!


男が走り出した瞬間に暗転。
学校のチャイムの音が遠くに響く。その音を合図に明かりが徐々に舞台を照らす。
その明りは夕暮れを感じさせる優しい橙色に変わっている。
舞台中央で疲れ果てて座り込むホンダと、その傍で腕組みをして立つエミリ。威圧感


ホンダ   ヒー…ヒー…フゥ…ヒー…ヒー…フゥ…
エミリ   ………。
ホンダ   ハァ…ヒー…ヒー…フゥ………
エミリ   ……。(ホンダの横に座る)
ホンダ   ……(逃げようとする)
エミリ   ここ、(制止する)
ホンダ   …ヒー…ヒー…は、はい…?
エミリ   ガッコ。
ホンダ   はぁ…ふぅ…そう、ですね…
エミリ   アタシが通ってるガッコ。
      なんか…悪かったわね……ちょっと、そんなに怯えなくたっていいじゃない。
ホンダ   ソ、ソウデスネー…
エミリ   ああもう悪かったわ!朝からちょっと苛々してたの!!それに加えてあんな仕打ちだもん!そりゃキレるわよ!!キレないほうがおかしいわよ!!
ホンダ   そ、その通りです…!そもそも私が悪かったんです。貴女に勘違いされてしまうようなことをしていたのは、私ですし。あんなところで写真を撮っていたら誤解されるに決まってます。でも、本当に盗撮ではないですからね、断じて。
エミリ   わかってるわよ…雑草マニアのカメラマンさんなんでしょう?世界的超絶ハイパー美少女のアタシを差し置いて、雑草なんか撮る時点で、盗撮犯だなんて考えはとっくに捨ててるわよ。
ホンダ   雑草じゃなくてハルジオンですってば。
エミリ   貧乏草。
ホンダ   ハルジオン。
エミリ   ただの雑草のくせに、何カッコイイ名前つけてもらってるんだか…。
ホンダ   貴女にはただの雑草に見えたかもしれませんけど、私にとっては立派な被写体です。懸命に咲いてる花ほど、美しいものはありません。
エミリ   …。アタシより綺麗ってわけ?
ホンダ   そ、そうゆう意味で言ったわけでは…
エミリ   ………。
ホンダ   ………。
エミリ   まぁ、いいわ。確かに、そうね、そうかもしれない。…アタシよりも、雑草のがよっぽど、美しいわ…。必死に生きてるモノの方が綺麗よね。
ホンダ   ……。
そういえば
エミリ   …なに…?
ホンダ   学校
エミリ   ガッコウ?
ホンダ   ここ、通っている学校だっておっしゃってましたよね?この時間…というより、さっきの時間とか、ちょうど学校の時間ですよね?貴女、なんであんなところに
エミリ   サボり。
ホンダ   …制服を着て……律儀ですね。
エミリ   違うわよ!…違うの…。おばあちゃんが、
ホンダ   おばあちゃん
エミリ   心配するから…。
ホンダ   ほう。
エミリ   朝制服着て、普通に家出るんだけど、どうしても…ガッコには行きたくなくて…でもおばあちゃんには迷惑かけたくないって思ってて…。…まぁ、結果的に今も迷惑かけちゃってるんだけどね。
ホンダ   ほう。
エミリ   …警察になんて行ったら、もっと迷惑かけちゃうじゃない。それは…嫌だったの。
ホンダ   ………。
      おばあちゃん思いなんですね。
エミリ   んー…ていうか必然的にそうなるというか。
ホンダ   必然的。
エミリ   うん。
ホンダ   というと?
エミリ   アタシ、おばあちゃんと二人暮らしなのよ。もうずっと前から。だからまぁ、おばあちゃんっ子にならざるを得なかったというか。もちろんおばあちゃんは好きだけど、好きになれる、ていうか、頼れる人がおばあちゃんしかいなかったからさ。そりゃ必然的にそうなるよね。
ホンダ   ………。(何かを見つめそれを凝視)
エミリ   でも最近は、喧嘩ばっかり…。将来のこととか真面目に考えなさいっていつも怒られちゃってさ。
ホンダ   (カメラを構える)
エミリ   おばあちゃんが心配するのもわかるのよ。でもアタシだってそれなりに悩んでて、色々考えていて、モサク?っていうの?自分がどうしたいか、とか、うん、考えているつもりなの。でもそれが全然伝わってないみたいで。いい大学入れ、だの、いい就職先見つけろ、だの。そんな先のことなんて分からないじゃない?それでおばあちゃんにも八つ当たりしちゃって…。
駄目よねアタシ。本当、こんな腐った人生送ってるアタシよりも、アンタの言うとおりその辺の雑草のがよっぽど綺麗に咲いてるわ……
ホンダ   (エミリが喋っているにもかかわらず、シャッターを切り始める)
エミリ   こんなこと、ガッコに相談できる人がいるわけでもないし、ていうかまずガッコ行ってないから(カシャ)それもやばいし(カシャ)でもしょうがないのよ(カシャ)あんな窮屈なところ(カシャ)いたら(カシャ)窒息し(カシャ)ちゃ…

 カシャ  カシャ  カシャカシャカシャカシャカシャ

エミリ   ちょっと!!!

エミリがホンダのほうに顔を向けた瞬間、反射的にカメラを彼女に向けるホンダ。


ホンダ   あ、いい表情(カオ)。
エミリ   え…
ホンダ   いただきました。(笑う)
エミリ   …今度こそ、本当に盗撮じゃん…
ホンダ   見ます?
エミリ   ……(頷く)
ホンダ   (カメラの液晶画面を見せてやる)
エミリ   ……ブッサイクな顔してる…(笑う)
ホンダ   そんなことありませんよ。
エミリ   ………。
ホンダ   何かに悩んでいるのかもしれないですけど、そうやって真剣に悩んでいる姿はとても素敵だと思います。
エミリ   …そう、かな…。
ホンダ   世界的超絶ウルトラ美少女とまではいきませんけどね。
エミリ   おい。
ホンダ   将来のことなんて、そんなに深く考えなくてもきっと大丈夫ですよ。好きなことを好きなだけやればいいでんす。
エミリ   好きなことを…好きなだけ……
ホンダ   私なんて毎日好きなように生きてますよ。それもそれでなかなかに楽しいものです。…収入の心配はありますけどね…。
エミリ   ……その辺の雑草の写真を撮って、世界的超絶ミラクル美少女に盗撮犯だと勘違いされて、変な男に変なナンパされて、世界的超絶ワンダフル美少女に街中を全力で追いかけ回される人生?
ホンダ   楽しかったですよ。(笑う)
エミリ   ……アタシは御免だわ。(笑う)
ホンダ   たくさん悩むことはいいことですよ。それくらい、人生に真剣にならないと
エミリ   ……。
ホンダ   貴女の人生です。楽しく生きなきゃ勿体ないですよ。
エミリ   ……。なんか、
ホンダ   はい?
エミリ   …待ってたのかも。
ホンダ   待っていた?
エミリ   そうゆう風に、言ってもらえるの。
ホンダ   ほう。
エミリ   ………他の人はみんな、現実をみなさいとか、大人になりなさい、とか、
ホンダ   ほう。
エミリ   だからなんか、凄くそれが重荷になってて
ホンダ   ………。
エミリ   その人たちの考えが間違ってる、とかそうゆうんじゃないの。でもやっぱり、アタシはまだ、毎日楽しく生きるだけで十分なのよね。
………アタシの人生だから、好きなようにしたらいいって、そう言ってくれる人を、待ってたのかもしれない(笑う)
ホンダ   (エミリにつられて優しく笑う)
      あ、
エミリ   なに?
ホンダ   飛行機雲がクロスしています。(空に向けてシャッターを切る)
エミリ   ホントだ…。
ホンダ   きっといいことがありますよ。
エミリ   ………空って広いのね。
ホンダ   今日は特に澄み渡っていて綺麗です。
エミリ   ……空なんて、いつみても同じだと思ってた。
ホンダ   そんなことありませんよ。
エミリ   ……その辺の雑草に名前があるなんて知らなかったし。
ホンダ   どんな花にも名前はありますよ。
エミリ   なんだっけ、ええと、……ハルマゲドン?
ホンダ   ハルジオン。
エミリ   ああ、それそれ。ハルジオン。
ホンダ   そこにも咲いてますよ。(地面を指さす)
エミリ   本当。どこにでも咲いてんのねアンタ。(花に近づく)
      ……貧乏草なんて言って悪かったわね。
……ただの雑草かもしれないけど、アタシ、なんだか前よりこの花が好きになったかもしれない。
…ほんのちょっとだけ、だけど。(笑う)
ホンダ   (エミリに向けてシャッターを切る)
エミリ   ………盗撮。
ホンダ  うーん、いいですね、いい顔してますよ。
エミリ  …そう…。(満更ではないように、嬉しそうに、照れたように微笑む)
ホンダ  私も、
エミリ  うん。
ホンダ  …前よりもその花が、綺麗に見えます。
エミリ  ………うん。
ホンダ  ………。
エミリ  ………。
ホンダ  ……あ、そろそろ、
エミリ  うん、
ホンダ  行かないと。
エミリ  …うん。
ホンダ  今日はありがとうございました。
エミリ  なんでアタシに?
ホンダ  久々に、いい写真が撮れましたから。
エミリ  ……。
ホンダ  貴女のおかげです。
エミリ  ……。
ホンダ  ……売れないカメラマンにそんなこと言われても、ですよね。
エミリ  ……。
ホンダ  では。
エミリ  うん。


ホンダ、エミリに軽くお辞儀をしてから彼女に背を向け、下手から退場しようとする。


エミリ  あのさ!!
ホンダ  (振り向く)
エミリ  ……アタシは、アンタの写真、すごい、いいと、思う。
ホンダ  ………。
エミリ  ……いいと思うよ。
ホンダ  ……ありがとうございます。


ホンダ、退場。
残されたエミリ、暫くの間彼が去っていた方をぼんやりと見ている。
着信音。エミリはポケットから携帯を取り出し、電話に出る。


エミリ   …もしもし?あぁ、おばあちゃん?……うん……うん、アタシも、ごめん、さっきはちょっと言い過ぎた……うん……


少しずつ上手へ歩きはじめる。その表情は最初の頃とは全く違うものになっている。


エミリ   うん…うん…わかった…。
      (立ち止まる)…ねぇ、おばあちゃん、アタシね、―――――――――


エミリの笑顔。
照明FO。



                               ー幕ー

  







素敵なサムネイル画像、お借りしました。
https://www.pixiv.net/artworks/94532255


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