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60歳で家を建てる 湯山重行

人の価値観が多様化してきて、昭和のように就職→結婚→家を建てるみたいな人生のプランニングが一つでなくなり選択肢の一つになった。
特に現代では少子高齢化に加えて、シェアリングエコノミーといわれる所有から共有にパラダイムはシフトしつつあるため、家みたいな特に高価な投資は先細りしていくだろうと思う。
私は家を建てようと思ったことがない。
最大の理由は、その場所で根を張って永住しようと思わないからである。あまり終身雇用を信じてはいけない経歴だし、飽き性だから飽きたら違うことがやりたくなってしまう。こんな性格の者が家を買おうものなら大変なことになってしまうのは目に見えているので、昔から身の程を知り家を建ようと思わないようにしているのだ。

だが本書ではターゲットを昭和の価値観が残る60歳以上に絞り、面白い提案をしている。例えば60歳といえば一般的には退職金が入ってくる年齢だ。
そんな退職金をもらった人に1,000万あるならいっそのこと建てる。とアプローチをするわけである。
現役時代に一軒家を建てたあと、ローンを返し終え、子供は自立し家を出て仕事もひと段落し退職金も入った。では、老朽化も始まった家でもリフォームしようかなと思うわけである。そのリフォームの予算が1,000万くらいで予算を組んでいたのに、老朽化やシロアリ被害で思った以上に家が傷んでいたり、色々な追加工事で気が付いたら2,000万もかかってしまったなんて話が珍しくないらしい。ここで本書が提案する1,000万くらいで家を建ててしまうという選択肢だ。
そしてその家を建てるメリットもなかなか面白い。
1,000万くらいの家なので当然小さな平屋建てしか建てられないが、そのために必然的に要らない物を捨てる必要性が出てくる。さらに子供がいわゆる実家に帰らさせてもらいますというUターンしてくるリスクも軽減できる。自分の部屋は当然無いからだ。
つまり家を建てることにより、終活も一部できてしまうという一石なん鳥かのことができてしまうわけだ。

いかがでしょうか?意外とありだなと思いませんか?
こんなに家に魅力を感じないようにインプットしてきた私でもちょっと考えてみようかなと思うアプローチである。
もちろん単純に支出があったり、手間もかかることになるが興味があれば一度本書を読まれるといいと思う。家族へのアプローチから建築士さんとの話し方、家が建つまでのプロセスなんかも紹介されているオールインワンの一冊です。
ちなみに西濃から岐阜市近辺あたりにお住まいの方でご興味がある方は、この本を貸してくれた良い工務店を紹介できますのでご連絡ください。

以下備忘録

1,000万あるならいっそのこと建てる
60代は退職金というまとまったお金があり、体の自由が利く今のうちに、終の住み家にもう一仕事してもらおうと水回りを中心に直す。
ところが、1,000万円で納めるつもりだったリフォームだけど、結局は2,000蔓延かかってしまったよという話が実に多い。
原因は二つ考えられる。ひとつは工事に取り掛かり、内装を解体するために壁や天井を剥がしたら、予想以上に傷みが激しかったという場合。
もうひとつは欲が出てしまった場合。
リフォームは新築と違って、クライアントが家に住みながら工事が行われる。刻々と変化する我が家を見ているうちに、あれもこれもと色々考えだしてしまう。
結果、どうせ直すのならとばかりに、ショールームで気になった無垢材の扉で大理石天板のキッチンにアップグレードしてしまう。便器も音と香りと光の出る今までに見たこともない洗浄便座に座った自分に思いをはせ、変更してしまう。商品そのものの金額だけだと差額は小さいように思えるが、搬入料金や取付費、消費税などが加わる事で、思った以上に金額はアップし、気が付けば2,000万円になっている。
リフォームをするなら1,000万円以内に収めたいが、満足度は概して低め。満足度重視なら断然、建て替えだが、予算は2,000万円が最低ライン。結果的に2,000万円近く
かけたリフォームで中満足しているのが現状のようである。
ここにもし1,000万~1,500万円で建て替えられるコンパクトな家という選択肢があれば、60歳で新築という可能性がぐっと広がるのではないだろうか。

60歳で家を建てると人生が変わる
生き方を変えるチャンス
目の前の環境を変えることで、気持ちも買われるものだ。ましてや自信を包み込む家や住む場所が丸ごと変わってしまえば、自ずと行動も変わる。不要になったものと別れて、住まい事コンパクトにすれば、軽やかに新しいことにチャレンジできる環境が自然に整うというものだ
家を負の資産にしない
空き家は使わなくても草むしりはしなければならないし、固定資産税だって毎年払わねばならない。心身が健康で、頭の回転が良好な60代のうちに負の遺産になりそうなものを整理する絶好のチャンス。整理さえできれば、上手にたためるというものだ。
子供にしっかりした意思表示ができる
60歳を過ぎて家を建てようものなら、今更、家を建てるなんて!と子供に止められるのが関の山だ。まして新たに銀行ローンを組むとなれば、全力で阻止されるだろう。でも、負の財産やら家中のたまりにたまった要らないモノを一気に整理してもらえると考えたらどうだろう。子供たちが無意味な遺産争いに巻き込まれることもない。子供たちは納得するだろう。
これを機会に、何となく避けてきた遺言や相続についても話しておくことができる。家を建てることで、親として最後の教育ができるのかもしれないのだ。
健康になれる
今では普通の住宅でも断熱性能はすこぶるいい。一度温めてしまえばヒートショックが少ないので、冬の寒い時期に起こりがちな心筋梗塞、脳梗塞の心配も減る。ワンフロアの平屋なら家全体をより効率的に温められるので、なおさらだ。
また、オール電化住宅にしてしまえば、日の消し忘れによる火災も防げるし、設計と設備を工夫すれば防犯も万全になり、外からの要らぬトラブルも防げる。
災害に強くなる
現在の住宅は、建築基準法どおりに造るだけでも、数百年に一度程度発生する地震で倒壊・崩壊しないレベルになっている。
リフォームで耐震性を高める方法もあるが、基礎や壁の補強をしても、耐震等級1のレベルに至らないこともある。

平屋のメリット 
1. 平面移動だけで済むので家事が楽
2. 基本的に地震に強い
3. 天井が高くできる
4. メンテナンスが自分でできる
5. DIYに積極的になれる
6. ペットも暮らしやすい
7. 車いすなどでの移動が楽
8. 太陽光発電に有利
9. 雨水利用に有利
10. 強風に強い
11. 緊急時、すぐに避難できる
平屋のデメリット
1. 狭小地には適さない
2. 就寝時のセキュリティー
3. 建築費が少し割高
4. 土地活用の効果が低い

これからの時代を考えたとき、子孫のために家を残す必要がある時代は終わり、自分のために使い切りハウスがあってもいいと思った。その家のポテンシャルを、自分が終わるまでの間に残さず使い切る。清々しいほどに。

夫婦で話し合ういい機会
定年後、今までと打って変わって、毎日一緒に居続けると、パートナーのちょっとだけ気になっていたところが、もっと気になってくる。だから、リタイヤが近づいたなら、労いの言葉をかけるべく、妻を旅行にでも誘ってみよう。60歳で家を建てるなら、夫婦でこの先の暮らし方について、本音で思い切り話し合ういい機会にもなるはずだ。

いい年をして新築なんて!の対処法
いい年の親が60歳で家を建てると言ったら、子供は反対するかもしれない。しかし反対する理由は何だろうか。
具体的に問いただすと、実はお金は大丈夫なの?とかちょっと面倒臭そうだなとか自分の育った家がなくなるのは悲しいぐらいなもので、金銭的な問題以外は、実は何となく反対だったりする。
まずは自分の子供にとってもメリットがある事を考えてみる。建てる家はたぶん今より小さいな家になるので、親は頑張って今あるモノを減らす決心をする。これがはやりの断捨離とか終活とやらをするよいきっかけになる。
古い家を取り壊す負担も減る。自分の暮らした部屋がなくなると悲しむ子供にとっても、実はいいことだ。彼らは置きっぱなしの:荷物を片付ける必要に迫られる。さらには変える部屋がなくなることで、ニート化やパラサイト化の予防になる。ピカピカの新しい家を見るにつけ、金銭的にも、場所的にも、もう親には頼れないことを目のあたりにするのである。そしてこどもにとって何よりも良いことはくらしづらい古びた家で年老いていく両親への心配が減ることだ。

学校だと成績、会社だと成果のように、ハコが一緒だとその目的の中だけで判断される嫌いがあるので、視野が狭くなって息苦しくなりがちだ。隣の芝生を青く見えなくするにはどうしたらよいのか。そのためには自分らしい生き方に少しだけこだわって、それを磨いてみる。その家の個性、ライフスタイルが光っていると周りは尊敬するものだ。ちょっとだけ心豊かに暮らしていると思えるだけで、自然体でいられるようになるのだ。

自分のライフスタイルに田舎があっているとなれば、大いなる田園住宅はこんなふうに造ろう。まず、家の形状は広い土地を生かして平屋とする。その広い屋根を生かして太陽光発電パネルを取り付ける。天井は高く軒先は長く深くし、夏をもって旨とすべしの設計にする。ランマ窓と地窓を設け、田んぼからの涼しい風が吹き抜ける仕様とする。玄関は引き分け扉で大きく開き、土間を造る。おばあちゃんたちのモンペが馴染むような、アースカラーのタイルを張り、かつて式台の代わりに、長いベンチを作る。玄関の土間から直接、台所に行けるようにしたら、土の付いた大根がそのまま運べて便利だろう。

計画から立つまでの流れ 建築家に依頼する場合
お見合い
できるだけ家族そろってお越しいただき世間話や趣味の話も交えながら、じっくりと要望や今の家の問題点などをうかがう。自身がパソコンで作成した要望書や雑誌のスクラップなどを持参していただけると、より具体的な話ができる。建築家は要望を聞いた後、簡単なスケッチをして、クライアントが理想としている家のイメージを引き出し、予算に照らし合わせながら、現実的に可能かどうかを判断して伝える。相談者側は希望予算で家が建つか否かの判断をしてもらうこと、建築家と1年間、コミュニケーションできそうな相手かどうかを判断することがここでのポイントである。
設計委託契約
業務委託契約書には建築家が行う仕事の内容、設計期間や実務機関、業務の報酬、報酬の支払い方法などが示されている。
調査
現地に行き、街並みや周りの建物、敷地と道路の隣接状況や隣地との高低差、地盤、風向き、日当たり、電柱の位置、ガス・水道メーター、排水の位置などを調査する。法令の諸条件についても調査する。住宅が建てられるか区域かどうか、敷地に対してどのくらいの規模の建築が可能か、道路からの高さの規定はどうか、敷地の北側に対する高さの規制はどうか、防火地域かなど探偵並みの抜かりない調査が大事だ。
基本設計
間取りと外観のプロポーションを決めるまでのステップのことを基本設計という。外構も含め、敷地にどう配置するか、近隣との関わり方、家事同線、風の流れ、日差しの入り方、平面計画、空間構成、規模、構造、コスト、建築材料の耐久性や質感、設備計画、その他あらゆる角度から分析を行い、総合的に検討を繰り返し、予算とのバランスを考えて内外のデザインを立案する。
実施設計
デザインと技術の両面にわたり細部の検討を行い、実施設計にまとめる。カーテンや照明器具、外構など、工事に含まれる項目や工事範囲等も明記するので詳細図も作成する。設計業務の中でも時間がかかり、精神力と体力が必要なハードな部分である。
建築確認申請
必要な書類と図面を揃えて、建築主事や民間確認機関に提出して確認済証を受ける。
工事見積もり依頼
施行者を選定する作業に入る。設計図書、見積要項書、現場説明書などを示して見積もりを取る。建築家がリードして最も適した候補者を選定し、クライアントが承認するという場合が多い。
見積書のチェック
建築は工業生産品ではなく、設計の意図を理解し、情熱をもって、かつ適切な金額で施工する業者を選ぶことが大切だと考える。
工事請負契約書
相互間の権利と義務を明確にする大切な契約だ。契約に先立って、相手を十分知る事。工期の確認、支払い条件の確認、火災保険の確認などが挙げられる。
現場での管理業務
クライアント、設計者、施行者の三者で定期的に打ち合わせを行う。
工事完成・引き渡し
施行者自身の検査後、建築家は設計図書どおりにできているかを、建物内外とも最終的に詳しくチェックする。役所の完了検査を受ける。検査済証が発行され、晴れて引き渡しとなる。

賃貸物件としてのコンパクトな平屋建て
仮にコンパクトな家を1,000万円程度で建て、20年の住宅ローンを組むと月々の返済は4万5千円程度となる。この金額は生活保護一か月の住宅扶助の上限よりも低いので一般向けの賃貸住宅として貸しても、借り手には困らず、お小遣い程度の金額が手元に入るのではないかと予想する。

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