小学生の小さな手による支援――ドラえもん貯金箱に込められた思い
こんにちは。広報プロボノの水口です。
日々、被災したこどもたちの居場所づくりに取り組む私たちには、ありがたいことに多くの方からの支援をいただきます。
そんなある日、一つのドラえもんの貯金箱が届けられました。
この貯金箱をくれたのは、小学生坂本ことはちゃん、みのりちゃん姉妹です。
彼女たちは「能登のためにできることをしたい」という思いで募金をしてくれました。
この募金のきっかけや、被災地への思いをことはさんと、ことはさんのお父さん(以下:坂本パパ)にうかがいました。
聞き手:仁志出(以下:けんせい)、水口(以下:もっちー)
困っている人のためにお金を使いたい
けんせい
まず、届きました!ありがとうございます!
坂本パパから林俊伍さんに手渡され、子どもからの寄付なので、こども支援の団体に渡そうという話になり、被災したこども支援をしている私たち第3職員室のもとに届けてもらいました。
もっちー
そもそも、どうして募金しようと思ったんですか?
坂本パパ
もともと募金をするために集めていたわけではなく、 小銭が余れば貯金する、というのを長年家族でやってきました。
ことはは、日頃から「募金をしたい」という気持ちが強く、お金の使い道として必ず「募金」があり、 コンビニのレジ横にある募金箱にもよくお金入れてます。
(ことはさんに向かって)
どうしてそんなに募金したいって思ってたの?
ことはさん
困っている人のためにお金を使いたいから。
けんせい
募金が当たり前なんだね。
家族の思い出の場所で起きた地震
坂本パパ
そうした環境が大前提としてあったんです。 そうしたなかで、元日に能登で地震があった。
ぼくらは普段富山で生活していますが、地震があったときは富山にいなかったんですよね。
地震のことはテレビを見て最初知ったんだよね。
ことはさん
うん。
地震が起きたときは埼玉にいました。
埼玉はそんなに揺れなかったので安全だった。
けど、能登は地震がひどいんだなって。
もっちー
それでなにかしたいなって思ったときに、ドラえもんの募金箱のことを思い出したの?
ことはさん
うん。
もっちー
ことはさんは能登に行ったことはあったんですか?
ことはさん
行ったことあります。のとじま水族館とか。
坂本パパ
ことはは、のとじま水族館のジンベイザメが大好きで。
でも、今回の地震でジンベイザメが亡くなってしまったのは、地震の被害を象徴するような出来事だったと思います。
そういう地震の影響がだんだんと伝わってくるなかで、我が家でも寄付しよう、という話があったのは覚えています。
私たち家族にとって能登はよくでかけに行く場で、家族で和倉温泉に泊まりに行ったこともあるし、私と妻は結婚前に珠洲へキャンプに行ったこともありました。
同じ北陸のなかでも思い入れがあったといえます。
そういった話がすこしずつ子どもたちにも伝わっていたのかもしれません。
直接手渡してほしい。パパに託した貯金箱
坂本パパ
そうやって能登のことについて関心を寄せるうちに、私が能登に行くことになったんです。
もともと、北陸各県のまちづくりやデザインを担う方々が集まる場に参加していました。
今回、その会の仲間の一人である林俊伍さんが、能登の被災地を解説するというツアーを企画してくれて、私はそれに参加することにしたんです。
それを家族に伝えたときに「じゃあ持ってって!」と、募金箱を携えて、林さんに渡したという流れです。
けんせい
募金のチャンスが来たぞ、っていうことだったんですね。
坂本パパ
そうですね。ついに本当のタイミングがついに来たと。
それでその当日、いざ持っていくぞ、となったときに、こどもたちは自分たちの貯金箱のなかを見て、もっと出せないかと。
最初、ことはは全額投じようとしたんですよ。
気持ちはわかる。でもまあ落ち着けと。
サポートする側がすべてを投じて自分たちが暮らせなくなってはいけない。
だから自分のできる範囲内で送ってみたら、ということを子どもたちには伝えました。
そこから自分たちで計算して、貯金の一部を足して持っていきました。
けんせい
気持ちとしては全額寄付したいくらいだったんですね。
坂本パパ
そうですね。みのりも全額出そうとしていましたね。
けんせい
みんながちょっとずつの範囲で、無理しすぎないようにっていうのは大事ですね。
ナイスセーブでした。
それで林さん経由で私たちのところに届きましたと。
能登の子たちにもこの話をして写真を送って見せたら、みんなめちゃくちゃ喜んでくれましたね。
小学生も、困っている人になにかしたいっていう気持ちで行動してくれている。
その事実に触れることで周りへの影響も大きかったと思いますね。
小学生が出してくれたこのお金には重みがある。
もしこれが大人が出したとしたら何十万円もの価値になるだろうなと。
だからこの貯金箱には、金額以上の価値がある、という話をスタッフ間でしていますね。
もっちー
せっかく貯めたお金を募金しようと思ったときに、ほかの大きい団体や学校とかでもなく、お父さんに託したのはどうしてだったんですか?
ことはさん
直接渡してほしいなって。パパがちょうど能登に行くから。
坂本パパ
ことはは、能登になにか支援をしたいと思っても、どこに渡せばいいのか、という思いがずっとあったんだと思います。
届けたいけど届ける方法がない、やりたいけどできない、という状態が続いていたんでしょう。
そんななかで、私が能登に行くことになったので、「やった!これでつながった!」と思って託してくれたんだと思います。
もっちー
お父さんが能登に行くって聞いた時、ことはさんはどう思ったんですか?
ことはさん
すぐに「募金を渡そう」っていうのが思い浮かびました。
もっちー
ことはさんから能登のこどもたちになにか伝えたいことはありますか?
ことはさん
グラウンドとかで運動できないとか、そういう地震でなにかできないことに対して、このお金でなにかできることに使ってほしいです。
けんせい
ことはさん、みのりさん、本当にありがとう。
このお金は能登のこどもたちのために大切に使いたいと思います。
この取材の後のやりとりのなか、9月21日に能登豪雨が発生。
坂本さんからメッセージをいただきました。
度重なる被害のなかでも、変わらず応援してくれることの心強さを感じました。
坂本さん、本当にありがとうございます。
私たちも引き続き、目の前のこどもたち一人ひとりと精一杯向き合っていきたい、と帯を締め直す思いです。
ライター:水口
取材日:2024/7/4
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