見出し画像

骨髄バンクで提供するって、どういうこと?(1)

皆さんこんにちは!YA の安孫子陽一です。
骨髄バンクへのドナー登録の流れについては、日本骨髄バンクのホームページや以前の記事(骨髄バンクとは)でも紹介されているので、まだ知らないよ!という方はそちらも併せてご覧いただければ幸いです。

今回は、現役医療スタッフである私から、ドナー登録後、どのように提供へ進んでいくのかなど、骨髄バンクでの「提供」に関する「そもそも」について、項目を6つに分け、分かりやすくお話ししたいと思います。

1. そもそも「骨髄」ってなに?

日本骨髄バンクでは、白血病をはじめとする血液の病気に苦しむ人たちを救済するために、骨髄移植・末梢血幹細胞移植のコーディネートをしていることは、以前の記事でお伝えしました。
では、そもそも「骨髄(こつずい)」ってなに?というところからお話したいと思います。

画像1

画像引用元:政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html)

上図は骨髄の働きを示しています。赤い枠線部分に注目してください!
この部分を踏まえて、下に「骨髄」「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」の特徴を示しました。

-------------------------------------------------------------------------------
骨髄は、骨の内側にあるスポンジ状の組織で、その中に多く含まれる造血幹細胞が血液を造る働きをしている
●造血幹細胞は、自身を複製したり、赤血球や白血球など、血液のあらゆる細胞を造ったりする
●造血幹細胞はさい帯血(へその緒の血液)にも豊富に含まれている
-------------------------------------------------------------------------------

この「造血幹細胞」が正常に働かなくなると、正常に血液を造れなくなったり、赤血球や白血球といった各血球が担っていた役割を果たせなくなったりします。すると、体に不調が現れ、白血病などといった血液の病気につながります。
こうした血液の病気を治療するのに有効な治療方法の一つとして、健康なドナーの造血幹細胞を移植する「造血幹細胞移植」があります。


2. 「造血幹細胞移植」ってなに?

「造血幹細胞移植」の種類には、①骨髄移植 ②末梢血幹細胞移植 ③さい帯血移植の3種類があります。それぞれの特徴について、以下に説明します。

(1)骨髄移植

画像3

画像引用元:政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html)

全身麻酔下で、ドナーの腰の骨(腸骨)から注射器で採取した骨髄液(造血幹細胞が多く含まれる)を、患者に移植します(静脈への点滴)。背中の太い神経である 脊髄(せきずい)に針を刺すことはありません。

(2)末梢血幹細胞移植

画像4

画像引用元:政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html)

通常、末梢血(全身を流れる血液)には造血幹細胞はほとんど存在しませんが、白血球を増やす薬(G-CSF)を注射すると、末梢血中に流れ出します。採取前の3~4日間、連日注射し造血幹細胞が増えたところで、血液成分を分離する機器を使い造血幹細胞を採取し、骨髄移植と同様の方法で患者さんに注入します。

(3)さい帯血移植

画像4

画像引用元:政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html) 

妊婦さんの協力で、出産時に臍帯(へその緒)から採取して、保存しておいた造血幹細胞を患者に移植(注射)します。


3. そもそも「ドナー候補者になる」ってどういうことなの? 

提供について具体的なお話をする前に、そもそも骨髄バンクではどのようにドナー候補者を決めているのかについてお話ししたいと思います。

画像5

画像引用元:政府広報オンライン
(https://www.gov-noteでnline.go.jp/useful/article/201309/6.html)

私たちの体内には3種類の血球があり、それぞれ上図のような働きをしています。 このうち「白血球」の型が患者と合うかどうかでドナー候補者を選んでいます。

白血球の型?なにそれ?という方もいらっしゃるかと思うので、簡単に説明いたします。
皆さん、「血液型」と聞いてぱっと思い浮かべるのは…例えば A 型、B 型…etc.ですよね。このように、皆さんの思い浮かべる血液型は、「赤血球の型」です。赤血球の型がある一方で、「白血球の型」も存在しています。 正式には、「HLA 型(HLA:human leukocyte antigen;ヒト白血球抗原)」と呼ばれています。

最近医療ドラマでは、輸血のシーンが良く見られますよね。 輸血する際、多くは、A型、B 型といった血液の型の合致が大前提です。 (他にも検査上、考慮しなければならないことはあります)
造血幹細胞を提供する際は、患者とドナー候補者との HLA 型の一致が大前提となります。

画像6

画像引用元:政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html) 

しかしこのHLA型、実はとても複雑なのです。
HLA型は血液型(赤血球の型)と同じように、遺伝により決定されます。
両親から各座半分ずつを受け継ぐことになりますが、造血幹細胞移植にあたってポイントになるのは、A座、B座、C 座、DR 座の 4 種類です。親子間でのHLA型の伝わり方の例は上図のようになりますが、このように近親者でHLA 型が合う人を探そうと思っても、兄弟姉妹間でも 4 分の 1、親子間ではまれにしか一致しません。非血縁者間(血のつながっていない人同士)で探すとなると、数百~数万分の 1 の確率でしか一致しなくなります。

このように、HLA型が適合する人を見つけるのはとっても大変なことなのです。そこで、骨髄バンクで幅広くドナーを募り、様々な HLA型をもつドナー候補を集めているわけです。

合致するのも奇跡に近い、HLA 型。
もしドナー候補者に選ばれたら、ぜひ前向きに提供を考えていただけたら嬉しいです。

(2につづく)


この記事が参加している募集