本能的盲目(Instinct Blindness) :サピエンスは進化によって"当たり前の盲目性"に囚われた存在だ 〜 ナチュラル=シーム=ストレンジの感覚を突破口にする #InB |エボサイマガジン
“ 一般的に、私たちは、心が一番得意なことをいちばん理解していない。”
────マーヴィン=ミンスキー
“ 起きろ、起きろ、起きろ!!
俺たちはぞっとするような存在だ。ベッドの上に横たわったままクソな状況をただ傍観するのを止めなくちゃならない
退屈に感じるのも分かるし、俺たちはファニーなものを好む
でも俺たちはくっそたれな頭で、この厄介ごとを考えなくちゃな ” ────People /The 1975
・今回のテーマソング:The 1975 - People
・今回の内容の関連記事:理解力なき有能性 : 進化が生物に与える能力(=コンピータンス)には、ふつう "理解力" というものが伴ってはいない
# 本能的盲目(Instinct Blindness)
さて、進化心理学のエッセンスを掴む上で今回紹介するキーワードは “ 本能的盲目(Instinct Blindness)” だ。
本能的盲目って?一体どういうことだ?
俺たちがホモ=サピエンスという動物であるがゆえの「種としての当たり前」のせいで、説明がなされるべき行為や感覚が、サイエンティストたちの監視の目をすり抜け、埋もれてしまっているってことだ。
日本語版Wikipediaの「進化心理学」の項にはこう述べられている。
“ ヒトの心や行動は脳によって生成され、脳は自然選択によって人類の進化の過程で形作られた。しかし人間の本性の多くは無意識下に働くために、ウィリアム・ジェームズの言葉で言う「本能的盲目」(そこに説明すべき物があることに気付かない)に陥る。進化的な視点は本能的盲目を打ち破ることができると考える。”
“ 本能的盲目/Instinct Blindness” というワードは、アメリカにおける心理学の始祖ウィリアム=ジェームズがはじめて用いて、のちに進化心理学の創始者レス=コスミデスとジョン=トゥービーによって再発掘された言葉だ。*
* L.Cosmides & J.Tooby (1997)
────本能的盲目は、俺たちサピエンスの日常のいたるところにあふれている。昨日、今日の一日の、自分がやった振る舞いや行動を思い出してみよう。
言うまでもなく、俺もきみも動物である。したがって、俺たちがやる振る舞いや行動は、そのすべてが動物行動(animal behaviour)である。
動物行動学者は、動物の行動を観察し、なぜそうするのか?を探求する。では、俺たちは自分自身の動物行動学者になってみよう。
なぜ自分はそうするのか?自分がいまやった振る舞いにどんな生物学的ロジックが存在するのか?と、自分の日常のルーティンについてメタ目線から捉えてみるのだ。
────すると"本能的盲目"がすぐにみつかる。
「そこに説明すべき物があることに気付かない」振る舞いというものが、俺たちサピエンスの日常には山盛りなのである。
たとえば「挨拶」はなんでするんだろう?────バカ:「それが礼儀であり、社会人としての常識だからです。」
はい、それが"本能的盲目"だ。きみはそこに説明されるべき生物学的ロジックが存在することに気づいていない。
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