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怠惰の進化: なぜ人間は隙あらばサボるように進化したのか?〜「ダルい・めんどい」と感じる生物学的理由 #lazyy|進化心理マガジン「HUMATRIX」

" 今日は何もする気になれない
ただベッドで寝っ転がっていたい
電話に出る気にもならないから
ピーの後にメッセージ残しておいて
だって今日は絶対にぜっっっったいに何もしないから "

" 足を投げ出して天井のファンを眺めて
テレビつけてズボンに手を突っ込んで
誰にも文句なんて言わせないぜ
ソファにもたれてガウン毛布を着てダラダラして
MTVをつけてドギーダンスの踊り方を見る
だってここは僕の城だ、好きなようにやってやるさ
そうさ言ったぜ、言ってやったぜ、だってそうするんだもん "
─The Lazy Song /Bruno Mars


" 言っておくが、ぼくたちはただ漫然と時を過ごすために生まれてきたんだ。そうじゃないなんて誰にも言わせるんじゃない。"  ────カート・ヴォネガット




✔︎ダルそうな動物たち



せっかくの日曜日だし、家でゴロゴロしていないで、動物園にでも出かけることにしよう。

チケットを買い、入園ゲートをくぐる。動物園はワイルドライフへの先祖帰りだ。21世紀のオレたちサピエンスの生息環境ではイヌやネコをのぞく大型の動物種に遭遇できる機会はきわめて限られているから、ワクワクする。

動物たちはゲージや檻に入れられていたり、手すりやアクリルガラスの向こう側にいる。サバンナの野生の地でこっちに突進してこられたらオレたちサピエンスはひとたまりもないだろうが、そのどデカい脳で動物園の安全性を認知的に理解しているサピエンス達は、獰猛な猛獣を前にしても恐怖するのではなく調子に乗る。

そしてアクリルガラスを叩く。

"おい、動け!!!!"



────そうでもしないとまじでつまらない。だってどいつもこいつも動かないんだから。

おいおいここは「動物園」だぞ?「動くもの」と書いて「動物」だ。動かないオマエらを誰が見たいっていうんだ?

おいそこ。あくびをするな。
おいそこ。寝るな。

・・・・クソっ、こんなの詐欺じゃないか。「静物園」に改名しろ。



餌やりタイムが動物園の人気アトラクションとなっているのは、それまで非活発だった動物たちがいっせいに活発化する瞬間が見れるからだ。動くものを目で追うのは楽しい────なぜならオレたちは捕食種で、猫じゃらしを振られて叩き落とすのを楽しむネコのような本能があるからだ!

動かないのなら剥製や標本でいい。
動物園じゃなく博物館でいい。

動け展示物ども!!!


それにしても、一体なぜ、動物たちはみな一様にこんなにダルそうなんだろう。


動物園という住居が退屈だから、というのはあまり理由にはならない。映画『マダガスカル』の登場キャラならたしかにNYの動物園を脱走して広大なサバンナの地に戻ってからイキイキしはじめたけれど、現実には動物園住みではない野生の動物たちもみな一様に、1日の大半を「ダルそう」に暮らしている。

動物界では「ダルそう」はデフォルトだ。


────それがデフォルトになるからには、ダルそうに暮らすことに自然選択的メリットが何かあったのだろうと考えられる。


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