ハンディキャップ原理とコストリーシグナリング理論───動物界で起こる「ムダ」な行動の隠れた合理性を説明するプリンシプル。 #Signa Ⅲ | 進化心理マガジン「HUMATRIX」
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✔︎ 情報の信頼性を担保する
#Signa ⑴ で説明したように、動物たちのコミュニケーションには、情報の送信者(シグナラー)と情報の受信者(レシーバー)が存在する。
そして「シグナル/Signal」とは、どちらかといえば送信者(シグナラー)を利するために進化した情報伝達、「キュー/Cue」とはどちらかといえば受信者(レシーバー)を利するために進化した情報認識手段だ。
シグナリングは送信者を利する。
だから、動物界では、レシーバー(情報の受信者)側が、シグナラーが発信しているシグナリング内容を疑ってかかるのは当然なのだ。
たとえば「オレは強えぞ!!!」というシグナリングについて考えてみよう。「オレは強い」という情報を送る側(=シグナラー)には当然、実際の強さよりも誇張して情報を伝達したがる動機がある。
だが「オレは強えぞ!!!」という情報を相手から一方的に聞かされる側、すなわち相手から「情報を脳に送り込まれる」側であるレシーバーの立場に立てば、「お前強いん?ほんまに?」となるのは当然だろう。
本当はザコいやつが「オレは強えぞ!!!」と実際の実力よりも一段階も二段階も「フカシた」シグナリングをしようとしている(=闘わずにビビらせて追い払おうとしている)のなら、それを見抜きたいというのがレシーバーの立場だ。
シグナラーはシグナリング行為において、情報を実際より誇張したがるように進化し、レシーバーは情報の真偽を正確に見抜きたがるようにそれぞれ進化している。
人間社会では、〝コミュニケーション〟とは一般に「協調行為」だと考えられているが、生物学的ロジックに基づいて考えるとコミュニケーションとは協調を目的に進化したものではない。目的はあくまで〈遺伝子の複製〉だ。
コミュニケーションを交わす動物同士はお互いに「利己的な遺伝子」を搭載されており、自分の利益になるようにコミュニケーションしたがる。シグナラーは間違った情報を信じさせたいし、レシーバーは間違った情報を信じさせられて損したくはないのだ。
だが、そうやって両者とも自己利益を追求しあうなら、コミュニケーション(=情報の送受信行為)というものはどうやって進化的に安定に成立することができたのだろう?
レシーバー/受信者側にとって、シグナラーから伝えられた情報を「信じる」メリットがあるのは、シグナリングによって伝えられた内容が真実である場合だけだ。
真実の情報は、環境の不確実性を低減させ、あらゆる局面において自らの意思決定を改善させることができるので、レシーバーにとって生物学的に価値がある。
では、シグナラー/送信者側は、どうやって、シグナルで伝える内容に "真実の情報である" という信頼性を持たせることができるのだろう?
それが
〈コスト/Cost〉をかけること
なのだ。
✔︎〈偽造〉の問題とコストリーシグナリング理論/Costly Signaling Theory
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