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『出会い系とフードコート』

私が人より少し変わっているせいもあるかもしれないけど、私には常識はずれなところがあるし人と同じことをしたり物事をよく知りもしないで悪く言ったりすることが嫌い。だからきっと詩を書いたり出会い系サイトをつかってる。別にそのことについて何とも思わない。


世の中の人はよく知らないことは怖いから「出会い系サイト」って聞くとすぐに危険な目にあうとかって出会い系サイトの悪口を言う。私はもうそこがどんな場所かを知ってるからママさん達が集まって出会い系サイトの悪口を言っている時は曖昧に頷いている。心の中でママさん達の顔を見ながら自分のことを無知って気づいてない人の顔の方がよっぽど怖いんだよなっていう悪口を思いながら。頷くの回数の単位は何だろうなと思いながら。


私が会ったことのある男性はみんな普通の人ばかり。出会い系サイトにいるってことで普通じゃないかもしれないけど、どの男性も食事は奢ってくれるしだからと言って肉体関係を求めてくるわけじゃない。だいたい私は奢られるのだって好きじゃない。ちょっとだけ贅沢なランチ二千円弱。その程度でいい。特別に弱くも強くもない。二千円の弱さを含めて払ってくれる。


フードコートと日曜日の家族連れ。パーテーションに透明が多いのは人類への照れ隠しが含まれているからだと思う。その人工的な温み。フードコートという場所に安心という意味を与えたのは世間知らずな大人だ。各店舗の価格帯が違うようにどのパパさんにもママさんにも同じ表情なんかない。素の表情にセール価格があったとしても。私は嘘をついてる顔をしているだろうか。それとも嘘をつきましたの顔をしているのだろうか。それぞれがお互いの顔の値踏みをしなくなってからどれくらい経つだろう。



広告の女性はすごくにこやかに笑ってる。それは男性にちやほやされたり、女性として扱われてることのうれしさだったりするからではないと思う。私は旦那に出会い系サイトの広告を見せてこれどう思うって聞くと旦那は一瞥だけして、私にお前はどう思うのだ?と聞いてきた。私はこの写真には安心感があるから思わず入会したくなると言うと旦那はどうして安心感があるのか分からないと言った。私はマックフライポテトLサイズの揚げ油がついている旦那の指を見ていた。その指で私じゃない女性の身体をさわってその皮膚に光沢が出てるところを想像した。セット価格、六百五十円。その区切りの良さは弱くない。


フードコートはますます混みあってきた。館内放送が流れてくる。六歳の男の子が迷子になっているところを想像したとき、その子は漫画みたいに両手の甲を目にあてていて、そして舌をちろっと出した。みんなはどう想像したのだろう。うちの子供たちはさっきからハンバーガーを食べている。旦那の目の奥が笑っていない。ずっと前からそうだったかもしれない。私は来週はフードコートにはいない。どこかのパパさんと出会い系サイトで知りあってランチをしている。館内放送がまた流れている。館内の全員に向けられた情報を聞こうとするものは誰もいない。

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