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『男と浴室』

一時間前の時間が今日の中でいかに大切だったことに気がつく。一日の終わり。大切な思い出になるはずだった入浴剤。二十分。剃刀と曇りガラスと色のついた石鹸。スマホを持ち込むことに抵抗がなくなったのにはどんな理由があったのだろう。打ち込みたい文字を考えながら流し目で見る動画。昨日よりも前の日々について考える。未来はたったの一日先のこと。


一億回再生された動画の再生ボタンを誰にも見られずにそっと押す。


毎朝同じように鏡に向かって似合う髪型を探すことは諦めた。いつもギクシャクしている。早すぎたり遅すぎたり言わなかったり言い過ぎたり思い出が隙間を縫いながら通り過ぎる。歪な毎日もまわり続ければ形も整ってくる。お決まりの挨拶は今日も似合わない。

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