「勝山さと子さん」~究極の“伝統”にこだわって~(後編)
2017年、着物ブランドを立ち上げた帯・着物のプロデューサー、勝山さと子さん
JTACメンバーによるインタビュー後編は、彼女の着物への想いからです。
(前編はこちら)
着物がワードローブの一つに選ばれることを目指して
着物のプロデューサーとして日々新たな取り組みを続けるさと子さんに、これからの挑戦と想いについて聞いてみました。
着物とファストファッション
ここまでの対話で、さと子さんの仕事以外の日常についても気になり伺ったところ、実は一児の母として絶賛子育て中。
(さと子さん)「朝6時から娘のお弁当づくりをする毎日です。まだ小さいので、余裕がなくなりがちですが、和に触れることで心の余裕につながるのかな、と思っています。」
等身大のさと子さんの素顔が垣間見えたので、ファストファッションについてもどう思うのか、尋ねてみました。
コンセプト設計から、生地選定、糸やデザインの考案まで、全体プロデュースして着物や帯の作品に仕上げるという仕事を、育児をしながらこなしてしまう、さと子さん。
その背景には、さと子さんが作品づくりに果敢に挑戦し続けられる、大きな影響を与えてくれている人達がいました。さと子さんのお兄さんであり、勝山織物五代目の勝山健史(かつやま・たけし)さんが設立した勝山織物の絹織研究所の糸づくりのお話を通じて、その方々のことを伺いました。
勝山織物が誇る糸へのこだわり
長野県上伊那にある勝山織物(株)絹織研究所では、西陣織の帯や着物づくりだけでなく、その素材となる“糸から作る”から作っています。
最初は養蚕から手掛けるという決断に、周囲からは反対されたのだそう。それでも、、とことんMADE IN JAPANにこだわりたい、という想いは、きもの研究科の方々からも支持も得ました。
まさにSDGs
勝山織物(株)絹織研究所で行っている養蚕による糸づくりは、お蚕さんの餌づくりから始まるのだそう。
糸をとる際も古来の手法にこだわります。
ただ、このような伝統手法では生産量は限られます。なかなか商業ベースにのせられないこともあり、この手法での糸づくりで作られるものはほんの一部の商品と重要文化財の修理などにも充ててきたのだそうです。その実績が認められ、2021年、文化庁からの支援を得ることとなりました。
今回の対談を通じ、さと子さんや勝山織物のみなさんの様な方々が、さまざまな逆境を乗り越え挑戦を続けてくれているからこそ、日本の着物という誇らしい伝統が守られ継承されていることを深く実感しました。
つくり手さんのように作品を自らつくって世に残すということは私はできないけれど、
“私が買うことで伝統が守られる”という考えも、伝統を守っていくための1つの手法かもしれません。
SDGsと着物―。そして伝統。いま一度その深いつながりを考えてみても良いかもしれません。
後書き:着物は好きだけど、着物作りの知識はまだしも呉服業界の“いろは”なんぞ全く知らなかったわたし。インタビュー前は「そんなのも知らないなんて!」みたいに怪訝な顔されたらどうしよう(;;⚆⌓⚆)ドキドキ…と思っていました。でもさと子さんは、とても気さくで優しいお姉さんという感じで、勝手に親近感を覚えました。考え方に共感するお話も多く、私たち日本人が伝統の中で引き継いできたものの中に、SDGsに向き合うヒントがあるのでは、と改めて感じました。
(筆:Takae)
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