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改訳「バナナ」貞久秀紀
ノート
改訳委員会に結崎があたらしく紹介した詩人の友人による、二回目の出題。とうとう現役の詩人の作品が投ぜられ、緊張が走った。「改訳の必要なし」としてそのまま提出する人もあった。原文の詩の改行をなくすだけで、かなり印象を変えることをはじめとして、一字でも変えた途端に別物に変る詩作品の緊密さを感じながら、別な世界を再構成しようと時事に頼った。この詩については、Tさんからもらったこんなメールがあり、嬉しかった。〈打たれました。「ツバ があるのだった」から最後まで読んで、打たれた、撃たれた。ガーンとかゴーンとか、ズガガンとか、中坊に返ったみたいに打たれた。〉。テクストは『現代詩文庫213 貞久秀紀詩集 』より。
改訳本文
貞久秀紀「バナナ」より
ワハハ
と噴き出しながらワハハに応えた
ここからワハハは去って
どこへ行ったのか
ワハハがここにあらわれていない
ツバ
があるのだった
ツバ
のなかのひと
ひとのなかのツバ
わあ、ハハハハハハ
とツバを飛ばしあったこともあった
と
さみしくなった
ワハハでさみしくなっている
そんなひとが
この世のいたるところで
噴き出しているだろう
ワハハと
そとで笑う
そんな笑いのほうへ
ほうへとゆきがふっているようだ
二〇二〇年四月三〇日