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コロッケ定食

私は、コロッケが好きだ。私が死んだなら、お供え物は、コロッケになるだろうと思うほどコロッケが好きだ。

コロッケにもいろんな種類があるが、私が好きなのは、クリームコロッケとかのしゃれたコロッケじゃなくて、ただのコロッケ、よくお肉屋さんとかで揚げている、少々脂ぎったあのコロッケだ。そんなコロッケが食卓に上がったが最後、全部食べてやるぞとばかり、脇目も振らず喰らいつく。目がないとはこういうことなんだと我ながら思ってしまう。

私は、また、お店でコロッケを食べるのも好きだ。もっというならコロッケ定食が好きだ。
コロッケ定食って、和洋中いろんなお店のメニューになっているけれども、私が好きなのは、クリームたっぷりのコロッケをナイフとフォークで食べるような洋風のじゃなくて、いわゆる定食屋さんのようなお店で出てくるお箸で食べる安っぽいコロッケ定食だ。

大きなお皿にコロッケが2つ、その奥には、千切りのキャベツがちょこんと乗っている。そこに、白ごはん、お漬物、みそ汁が添えられてお膳に乗ってやってくる。そんなコロッケ定食が大好きだ。

たいていのお店の前には、今日のおすすめみたいな看板が置いてあるが、コロッケ定食が、そんな看板に載ることなんて、まずない。テーブルの上のメニューを見ても、焼き肉やハンバーグ、刺身やてんぷらとかの後に、焼魚や玉子焼きにも後れて、どん尻に控えているのが、コロッケ定食ではなかろうか。地味すぎて、逆にかわいくなってしまうほどだ。

そんな地味なコロッケ定食だけど、手間だけは一人前にかかるようだ。ずいぶんと昔、私が若かった頃、もの好きな女性に、何が食べたいのかとリクエストを求められたことがあった。私は、即座に「コロッケ。」と答えたのだが、急にムスっとされて、「ハンバーグは好きじゃないのか。」と聞き返された。コロッケを作るには、とても手間がかかるらしいことを、この時初めて知ったのだが、そんなこと知ったこちゃないほど、コロッケが好きだったし、その女性のことはともかくとして、コロッケは、今でも好きだ。よくコロッケがおいしいお店は、お肉もおいしいって聞くけど、手間ひまを惜しまないその態度がお肉もコロッケもおいしくするのかなと思ったりもする。

私は、コロッケ定食でいいや。じゃなくて、コロッケ定食がいい。和洋中どのジャンルにももう一つ馴染みきれず、地味で、安っぽくて、おすすめメニューなんかに載るはずもないとわかっているけど、丹精込めて作っている、そんなコロッケ定食がいいなと思う。もともと、コロッケ定食のような人生だけど、たまには、おいしそうなコロッケ定食を見つけては食べ、コロッケ定食のような文章を書いて、死んだら、コロッケを供えてもらおう。それがいい、そうしようと思う。
(おわり)

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優まさる
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