#1 『希望が死んだ夜に』〜社会派ミステリ!!〜
♠Story
❤Review
この本のタイトルを目にしたとき、僕には手に取らないという選択肢はなかった。まるで、熱いフライパンに触れてしまって瞬時に反応してしまうように、まさしく反射的にこの本を選んだ。
「希望が死んだ夜に」
何度も声に出したいくらいに、素敵な表題だ。
希望が死ぬとは?
そしてその夜になにがあったのか?
読む前からあれやこれやと想像を掻き立てる。そして、これらの疑問は物語の終盤まで明かされることはなく、最後まで読者を惹きつける。
今作の紹介が、#1となったがこの本を選んだ理由はいくつかある。
まず一つ目は、前述の通りミステリ作品でありながら貧困家庭をテーマに様々な問いかけを読者に投げかける点だ。
物語の中心人物である冬野ネガは、所謂「生活困窮世帯」として生きる。
幸いなことに僕は、(今のところ)生活には困ることはなく、周りにもそのような家庭はない。だからこそ、そのような世帯の「リアル」を物語を通して知ることができたのはとても意義深かった。
次に、ミステリ小説としてもとても完成度が高い点だ。
前述の通り、主犯であるネガは罪を認めるものの動機は一切語らない。
「Why」の部分を中心に段々と物語の真相が明らかになっていく展開はとても読んでいて心地よい。ページをめくる手が止まらないのである。
そして終盤に物語の真相と、この本のタイトルが一致した瞬間。
きっと未読の方は、この本を読んでよかったと思うこと間違いないはずだ。
最後はどの世代にも推薦できる点だ。
本作を簡潔に表すなら、
「青春+ミステリ+社会派」
ミステリ好きはもちろん、少し重めのテーマが読みたい人、それに加え冬野ネガと同じ世代の中学生も読める、人を選ぶようで選ばない誰にでも薦められる本だ。
読み終わったあとにはぜひ、周囲の誰にでも薦めてほしい。
♣One Phrase
この問いに、どう答えよう。
確かに、税金から援助してもらって生活しているのに必要以上の贅沢は多くの人が納得しないだろう。
だけど、その線引きはとても難しいと思う。
少し前に、「女性の貧困」について取り上げられている記事をニュースサイトでよく目にした。取り組み自体はとても素晴らしいものだと思っていたが、それ以上に記事についているコメントに驚いた。
「スマホを先に見直したらどうですか」
「数百円のものが買えないというのは、自分の管理が甘いのでは」
「優先順位を間違えていませんか」
こんなコメントばかりだった。
言っていることは理解できるが、逆の立場から考えると、冒頭のフレーズに戻るのである。
生活に困っていたらスマホを持っていてはだめなのか。
自分の好きなこともあきらめなきゃいけないのか。
僕はまだ問いに対しての答えができない。
この記事を読んでいる皆さんはどう考えるだろう。
この本を読んで、考えるきっかけになっていただければ幸いだ。