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こころとからだのつながりかた

指圧の臨床における身体表現


頭が痛い 頭が重い

頭が痛い 頭が重い

「女性臨床鍼灸 ならまち月燈」にいらっしゃる患者さんの主訴で一番多いのはなんでしょうか?

肩こり、首こり、めまい、耳鳴り、不眠、ドライアイ、顎関節症、腰痛、足のむくみ、産前産後の不調、月経にまつわる不調、更年期障害、がんの予後の不調、胃の調子が悪い、慢性的な便秘、パニック障害、適応障害…

思いつくままに書いていても、書ききれないくらいに多岐にわたる症状にお悩みのかたが、毎日いらしてくださっています。

「ならまち月燈」には、私以外にスタッフが4人いて、その適性はそれぞれ違い、得意とする領域は違うのですが、わたしに関しては、西洋医学なら心療内科の領域であろうお悩みを抱える方が多いです。

そして、さまざまなお悩みのなかでも、頭が痛いという症状は、まるで現代人の基礎疾患のように必ず、症状の軽重はあれど、お持ちのかたが多いものです。

鎮痛剤を常用されているかたも多いですし、低気圧が近づくと…、月経の前になると…というようなご本人なりの関係性に気がついてお話下さる方も多いです。

東洋医学的な陰陽でいうと、頭や顔は陽に配置されます。
身体の陰陽は、よつんばいの態勢になって上から太陽に照らされて、太陽があたるところは陽、あたらないところが陰です。

背中や臀部、下肢の後と横と前は陽の部、胸やおなか、下肢の内側、腋窩など、陰部といわれるところは、まさに陰の部です。

頭と顔には、胃経、胆経、膀胱経、三焦経、大腸経、小腸経という陽の経絡がもともと流れています。

元来、陽気の多い部位なのです。

解剖生理学的にいっても、脳の重さは体重の約2%なのに、脳が必要とする血液の量は心臓が拍出する量の20%前後といわれています。

そこに、PCやスマホの長期使用によって熱が集まります。

人類史上、こんなに頭部に陽が集まらざるをえない時代はないでしょう。
陽が極まると陰に転じるのは、陰陽の法則上当然のことです。

東洋医学では、氣、血、水という三要素がきれいに巡っていれば、健やかであるという健康観に立ちますが、その三要素すべてが頭に集まっている状態です。

それぞれ、どの要素が多いかというのは体質にもよりますが、現代人の誰もが、
氣滞(きたい)
血滞(けったい)
水滞(すいたい)
である可能性が高い。

滞っているのですから、それぞれが運んでいるものが運べなくなっているということです。

東洋医学でいう血は(けつ)といい、血液そのものというより、血液の働き全体をしめす概念と思っていただいた方がいいのですが、そんなにたくさんの血液が流れているのに、血滞であるということは大変なことです。

頭に血がのぼる

という表現があります。

興奮する、カッとなる、怒りや激しい感情が上に衝き上げるというような表現ですね。

イメージで言うと、瞬間的な感じがあります。

でも、現代人は頭に血がのぼりっぱなしなのです。

これもまた、現代病であると思うのですが、頚椎がS字のカーブを失って、ストレートネックといわれるような状態になり、頭蓋骨がいつも、頚椎より前にのめった状態で、PCやスマホのディスプレイをみているために、首こりに悩む方が大変多い。

昔、鍼灸院の患者さんと言えば、肩こりが定番でしたが、今の患者さんのお身体を触ると首こりがずっと多い。

そう、血ののぼった頭を置き去りにして、首のこった部位が氣、血、水の出入り口を狭めているんですね。

氣は体表を流れているものなので、まだよいとして、血と水は物理的に通れなくなると、そこで停滞するしかない。

ただでさえ浅い呼吸で、酸素が十分にとりこめていないのに、その酸欠の血がのぼったまま、頭のなかで鬱滞している・・・

考えただけでも、頭が痛く重くなりますよね。


頭の指圧

頭がかたい→やわらかい

そういう方には、頭部と頸部の指圧をわたしは積極的にします。

今はヘッドスパ専門店などもありますから、必要とされるような時代の要請もあるのでしょうね。

はじめに触れると、頭はたいていカチコチです。

トンガリ頭と私はよく患者さんにいいますが、あたまの中心、ツボの名前で言うと「百会」のあたりが盛り上がっています。

関西人には、ビリケンさん、他の地域の方にはウルトラマンといえば、イメージしやすいでしょうか。

下から衝き上げてくるエネルギーの放出口がないと、それは鬱滞して、ぐるぐる回っているうちに熱を持ちます。

その熱を逃すように、頭皮をほぐします。
頭蓋骨は縫合といって、23個の骨と骨を縫い合わせるようにしてあわさった構成になっているのですが、その繋ぎ目をほぐすようなイメージです。

とんがり頭の方は、たいていカチコチで、縫合もギュウギュウに力がはいっていますから、結構力の入った施術になることが多いです。

でも中には、とんがらずに指がズブズブ・・と入ってしまうぐらい頭がむくんでいる方もいらっしゃいます。

頭がむくんでいますよ‥と申し上げると、たいていびっくりされるのですが、顔がむくむことは、経験がある方も多いと思います。

顔がむくむということは、ひとつながりの頭もむくむということです。

いずれにせよ、吸収され、排出の流れにのらないで、頭に残留しているということなので、よくはありません。

そうそう、最近はやりの小顔矯正という技術も多かれ少なかれ、頭蓋骨の調整をされているのだと思いますが、わたしは小顔という表現にも、矯正という表現にも違和感を感じるので、「小顔矯正はなさっていますか?」という問い合わせがあるとしていません・・と答えます。

でも結果として、頭頚部の指圧をすると、顔の輪郭はきゅっと締まり、眼に神氣が宿り、顔の毛穴が閉じて美肌になられるので、みなさん、こういう目に見える効果が欲しいんだろうなぁとは思います。

術前と術後では、控えめにいっても別人です。

そしてなにより、頭がかたいときは、思考は硬直化します。

そして頭がほぐれて柔らかくなるにつれて、思考も感情も柔らかくなるのです。

職場の上司に「い~~~!!!!」って怒っていた方が、
施術後に「ま、いっか…、たいしたことでもないか・・」
と仰ることもまた、指圧あるあるなのです。

頭の痛い問題をいつも抱えながらも、一生懸命に生きる頭の硬い方たち。

まず、物理的に頭を柔らかくすることで、中身も柔らかく、生きやすくなりますよ・・・と、指圧師の現場からお伝えします。


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 ならまち月燈/こころとからだをつなぐあかり
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