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「境目」編

休日、いつもより遅め、とはいえ8時5分前に目覚めて急いで朝ドラの録画予約をする。朝ドラは1話15分しかないのでリアタイ出来ないのであれば溜めてみるのが楽しい。今季は植物学者の話なので今のところとても楽しめている。これが植物学者を諦めて町工場を立て直すような話になるならお付き合いを辞めさせていただくことになるが、歴史物なのでそれはないだろう。安心である。

朝のルーチン+洗濯を済ませてもまだ連れ合いが起きてこないので一人で散歩へ出かける。午後からは曇るらしいので新緑を楽しむなら今しかない。俺は新緑を楽しむためなら非情にもなれるのだ。俺が出かけるそぶりを見せるといつもは目覚めて「どこ行くのー?」と物悲しげな声を上げる連れも今朝は無反応だ。相当疲れているのであろう。寝かせておこう。ペットでデグーの文ちゃんは「どこ行くのー?」と言わんばかりにこちらの様子を伺っている。御免!

森見登美彦のエッセイを小脇に抱えていつもの史跡方面へ歩き出す。ふと、今日こそは史跡の近くにあるカフェへ行こうと決心する。何も無いこの街で暮らして早2年超。唯一と言っていいこのカフェを訪れたことがないのは何故なのか、それはこのカフェが市営っぽい雰囲気を纏っているからであろう。行政からこの不毛の土地にお情けで与えられたカフェ。そんなものに尻尾を振るか! 反体制、初期パンク的な我々である。

しかし今日は行ってみる。日によってパンクだったりポップスだったりする。

史跡を抜け、武蔵国分寺を始点とする京都の哲学の道的な雰囲気を持ったお鷹の道を少し歩くとすぐにこのカフェはある。名を「おたカフェ」という。そう、名前があまり好きでは無い。最近リニューアルしてオシャレ度が増した。

レジで商品を注文するセルフスタイル。俺はハートランドビールを受け取って新緑に囲まれたテラス席に座った。平日の朝ということもあって客は少ない。しかし何やら名刺を持ったテレビマンやよくわからない団体の渉外担当がやたら出入りする。そういう場所なのだ。今は新緑が美しいが、紫陽花や紅葉も季節によってはさぞ美しかろう。ビジネスの話に耳を傾けながらでは読書も捗らない。俺はハートランドを飲み干して席を立った。個人的にハートランドがあるのはポイントが高い。ハートランドの瓶が傍らにあるだけで「形になる」のだ。

オシャレなカッフェでビールを飲んだ俺は自室に戻りベランダで焼酎を飲み始めた。完璧な休日を過ごしている。ここなら読書も捗る。森見登美彦は奈良北部の京都大阪の県境あたりで産まれ育ったらしい。東京産まれ東京育ち悪そうな奴は大体友達の友達である俺は関西の地理には明るく無いが、この辺りのことだけは多少わかる。連れ合いがこの辺りの大阪側出身なのだ。

県境を挟んで奈良側に学生時代から好きな森見登美彦が産まれ、大阪側に今一緒にいる連れ合いが産まれた。なんとなく作品の持つ雰囲気にも近しいものがある。森見登美彦のホラー寄りの作品と団地ノ宮の親和性は高いと思う。是非メディアミックスして欲しい。

タイトルを「境目」編としたが、なんだか長くなってしまったので一旦ここを「境目」として筆を置かせていただく。

じゃ、また。

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