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Whyから始める技術的価値の伝え方〜プリセールスエンジニアにこそ求められる視点〜
はじめに
技術の進化は、ビジネスに大きな可能性と価値をもたらします。しかし、その価値は必ずしも自明ではありません。むしろ、優れた技術であればあるほど、その本質的な価値を伝えることは難しくなります。私たちプリセールスエンジニアには、技術の持つ可能性を、ビジネスの言葉で語る力が求められています。
技術者が陥りがちなコミュニケーションの罠
機能から入る誘惑
優れた技術的特徴があるとき、私たちはつい、その機能から説明を始めてしまいます。新しいアルゴリズム、高度な自動化、革新的なアーキテクチャ。確かにそれらは素晴らしい特徴かもしれません。しかし、それらは手段であって、目的ではありません。
当たり前の価値
技術者にとって自明な価値が、ビジネス側には必ずしも明確に伝わらないことがあります。私たちエンジニアは時として、技術的な卓越性があまりにも当たり前(言わなくてもこの凄さがわかるでしょ?という意味)に思えるがゆえに、その本質的な価値を語ることを忘れてしまいます。ただ技術や機能は価値を生み出せなければ意味のないものだということを、心のど真ん中で理解することが大切だということです。
価値を伝えるフレームワーク
Whyから始める
Simon Sinekの「ゴールデン・サークル」が教えてくれるように、共感を生むコミュニケーションは「Why(なぜ)」から始まります。なぜその技術が重要なのか、どのような未来を実現できるのか。この本質的な問いから始めることで、技術は単なる機能の集合を超えて、価値ある物語となります。
Howで具体性を与える
技術がもたらす価値を実現する方法(How)を説明することで、Whyは単なる理想論ではなく、実現可能な価値として伝わります。ここでは、技術的な詳細ではなく、ビジネスプロセスや組織への影響を中心に説明します。変化の道筋を具体的に示すことで、価値はより明確になります。
Whatは裏付けとして
具体的な機能や仕様(What)は、WhyとHowを裏付ける要素として説明します。これにより、技術的な特徴が、なぜ重要なのかがより明確に伝わります。また、技術への信頼性を高める要素としても機能します。
実践のために
顧客の言葉で語る
技術の価値は、顧客のビジネス文脈の中で初めて意味を持ちます。顧客の業界用語、日常的に使われる表現、重視される指標。これらを理解し、活用することで、より深い共感を得ることができます。
ストーリーとして組み立てる
価値は、ストーリーとして語られるときに最も力を持ちます。現状の課題から、目指すべき未来、そしてそこに至る道筋。このストーリーの中で技術が果たす役割を明確にすることで、より説得力のある提案が可能になります。
フィードバックを活かす
価値の伝え方は、常に進化させる必要があります。顧客からの反応、質問の内容、理解度の違い。これらのフィードバックを丁寧に集め、次の提案に活かしていくことで、コミュニケーションの質は着実に向上していきます。
おわりに
技術の価値を伝えることは、単なる説明ではありません。それは、技術がもたらす可能性を、ビジネスの文脈で語り直す創造的な行為です。
私たちプリセールスエンジニアは、技術とビジネスの架け橋として、常により良い価値の伝え方を探求していく必要があります。Whyから始まる対話を通じて、技術の真の価値を顧客と共に見出していく。それこそが、私たちに求められる本質的な役割なのではないでしょうか。