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ノリで取得した資格が、未来のわたしを救うこともある


「資格なんて、たいして転職活動で役にたたない」

そんな主張をSNSで見かけた。


わたしも少なからず「結局のところ、転職活動で必要なのは実務経験とコミュニケーション力だよね」と思っているふしがあった。複数回の転職を経験したけれど、資格をもっていることでプラスになった実感は特にない。

国家資格や専門性の高い資格であれば、知識の証明としてひとつの武器になると思うんだけど。そういった強い資格はもっていないので、正直あまり想像がつかないんだよね。

だけど「資格をとることに意味がない」とはぜんぜん思わない。わたしは実際に、過去にとった資格に救われたのだ。



もう何年も前のこと。

当時働いていた会社で、メンタルを病み休職する社員が続出した。新卒もマネージャーも、年齢や役職は関係なく。

部署がちがうとなかなか内部事情が見えないんだけど、どうやら過度な残業や、経営陣からのプレッシャーが原因らしかった。


そのころのわたしはいまと真逆で、鋼のメンタルをもつお気楽社員だった。オン・オフがはっきりしていて、仕事で落ち込んでも退勤ボタンを押した瞬間にどうでもよくなった。

仕事での自分と、本来の自分は別人。だから仕事に没頭することもなければ、感情をもっていかれることもない。プライベートで遊ぶ分の体力を残しておきたいから、仕事中は常に省エネモード。

そんなわたしにとって、「仕事で病んで身体をこわす」というできごとは、まったく想像がつかなかった。



想像がつかないからこそ、理解してみたい。仕事とメンタルと身体の関連性について。「だれかを救いたい」というよりも、「わからなさすぎるから知りたい」という知識欲だったと思う。

これからどんどん後輩もできるし。夜は暇だし。そんな思いつきと軽いノリで、『メンタルヘルス・マネジメント検定』という資格取得を目指すことにした。

この資格には3つのコースがあり、わたしが目指したのは第Ⅱ種の管理職向け。会社におけるメンタルヘルスケアとは?ストレスが及ぼす健康への影響とは?的な内容を学ぶことができる。


当時は18時ごろに帰宅できる日も多く、夜の時間が有り余っていた。帰宅後の1〜2時間をつかって、平日はほぼ毎日勉強していたように思う。

土日の深夜に、近所のガラガラなカフェやファミレスで勉強することもあった。なんだかすごく意義のあることをしているみたいで、なかなか楽しかった気がする。

わたしにとって、勉強は非日常だった。かわいいノートや好きな色の蛍光ペンを買って。やることリストをつくって。試験日までのカウントダウンで、毎日少しずつそわそわして。受験料を払ってしまったからには、当日に全力を出しきりたい。


そうして2〜3ヶ月後の試験を経て、めでたく『メンタルヘルス・マネジメント検定 』に合格した。試験に合格するというのは、第三者から公式に認められた気がしてなんだか嬉しい。

だけど、この資格を会社で活かすことはなかった。わたしが管理職になることはなかったし、だれかを救うこともなかった。

メンタルヘルスケアという概念を理解することはできたけど、それを自分の世界で実践するというのは難しい。そもそも機会がなかったし、知識を活かそうという気持ちも薄かったように思う。つまりは自己満だった。



そこから数年後。

「バリキャリになる!」と決意し転職を決め、意気揚々と入社した会社。まっったくついていけず、ゴリゴリの社風もあわない。仕事をさばききれず、深夜も土日も働いた。

体調がわるく、風邪と思い病院に行くも異常なし。ぜんぜんよくならない。自分の身体じゃないみたい。うまく思考がまわらない。でも仕事がおわらない。寝れないし起きられない。言葉にできない。


「ぜったいにおかしい。自分はどうしちゃったんだろう?」

そんなときにふと、数年前に勉強していた知識を思い出した。会社でのストレスがメンタルに与える影響。メンタル不調からくる身体の症状。

ピンときたというか、すべてが繋がった気がした。ああ、これってメンタルがやられてるんだ。風邪とかじゃない。そこではじめて心療内科へ行き、うつ病と診断を受けた。その後、会社をやめた。



診断を受けてから2年ほど経ち、減薬しながらいまに至る。今年に入ってからは少しずつ働けるようになり、ここ最近でやっとフルタイム労働ができるくらいの体力がもどってきた。

ただ、回復はしたけど完治はしない。「仕事で病むってどういうこと?」状態だった鋼メンタルの自分には、二度ともどれない。


だけどあのとき「メンタルがやられてしまったから心療内科へ行こう」という判断ができて、本当に本当によかったと思う。

もし資格の勉強で得た知識がなかったら、病院に行く選択肢は絶対になかった。「調子わるいな・・・」と思いながら、きっと毎日会社に向かった。

うつ病になると、悪化するのはあっという間で、回復には何倍もの時間がかかる。いま複業フリーランスとしていくつかの仕事をもちながら働けるのも、こうして文章を書いて発信活動ができるのも、早々に病院へ行くことで回復も早まったからだ。



取り返しのつかないことになる前に、適切な行動ができたこと。人生の中で上位に入るナイスプレーである。

わたしの取得した『メンタルヘルス・マネジメント検定』は、転職活動で有利になることは少ないかもしれない。認知度も低い気がする。

だけど思いつきで挑戦した資格試験のおかげで、人生を救うレベルの知識を得られた。数年という時差があったけど、過去のわたしが未来のわたしを救ったのだ。


だからわたしは「資格をとることに意味がない」なんてぜんぜん思わない。時を越えて、自分を救うことになるかもしれないから。

あとね、少しだけ自分を好きになれる。がんばった自分は最高だし、認められたら自己肯定感も上がる。もちろん落ちたら悔しくて落ち込むけど。なんだか部活を思い出すね。

意味のない学びなんてない。だからまた、新しい資格の取得に向けて勉強をはじめてみる。いつかのわたしが、いまのわたしに感謝するかもしれないから。


またね。



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ゆうあん
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