[詩] 樹幹

自分らしく生きたいなんて
自分勝手かな

独りで生きられるほど万能ではないから
人にすがることで何とかマトモに過ごしてきた

無地のキャンバスに
塗り広げられた鮮やかな色
綺麗だと言う人もいるけれど
これは僕の色彩では無い

人気のない夜の街
直線的な建物の
陰に隠れた広葉樹は
随分と背筋が歪んでいるな
誰も咎める事はしないけど
君も息苦しくなったりするかい?


自分らしく生きることって
難しい事かな

恵まれた環境に居続けることを
多くの人は幸せと呼ぶのだろう

歪んだ僕の鏡に
映りこんだ鮮やかな色
羨ましいと言う人もいるけれど
それは僕の姿では無い

初めて訪れた夜の街
規則的に並んだ建物の
中に紛れた広葉樹は
随分と列からはみ出ているな
誰も責めたりしないけど
君も後ろめたく思うのかい?

たまに独りになったりして
少しだけ大人になった気分さ
それが自惚れだと分かっているから
何か変わりたいと思うんだ

心の庭で育てている
この豊かな広葉樹は
僕の家の外壁に
細かな傷をつけている
早く枝を切らないと
いつか壁を突き破ってしまう

『自分の人生なら、自分の好きなように生きよう。』
そういえば、そんな言葉もしばらく聞いていないな。



就活とかしていると,自分以外の人がやけに真面目で,理性的で,大人びた存在であると痛感する。自分は未だ現実と理想の間を行ったり来たりしている。

「人生は一度きりだから自分の好きな事をやりなさい」

そんな綺麗事も,大人になってからは一度も言われていない。

建築ではなくて,植物になりたい。多少歪んでいても誰も文句言わないだろうし。

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