[詩] 月光
窓に映る月の輪郭に沿って,指を滑らせる。
そうして僕は,先人たちの思考に触れようとした。
初めて月の光が偽物だと知った時
裏切られた気分になった
当時の僕は子供だったから
その優しさを理解することが出来なかったのだ。
太陽の光線を
直接見る事が出来ない僕たちを憐れんでいるのだろうか。
あの遥かな光源の
優しい部分だけを掬い取ったこの光は
星々の輝きを邪魔しないように
闇の中を
ささやかに照らしてみせた。
叢雲を貫く
静かな月光
その間隙から微かに覗く
細かな星々
窓に映った
光を持たない惨めな僕の姿。
愛も孤独も
かつてはもっと盛んであった。
だから人は星を繋いで
物語を作ったのだろう。
オリオンのベルトを眺めるのは
この星で暮らす我々の特権である
火星に移住するならば
新たな物語を作らねばならない。
今まで通り
夜が星空を連れて来るとは限らないが。
僕を照らすこの光も
別の光源に依存していて
そのサイクルは
巡り巡って
宇宙へと還っていく
果てしないエネルギーの根源はそこにあって
僕の手では
どうにもならない領域である。
「月は太陽を反射して光っている」。小学生の頃の僕には衝撃的すぎる事実でした。
昼は太陽が空を支配しており,夜は月が制空権を得る。そんな対比構造を思い描いていたので,月光が太陽光の模造品だと知った時にはガッカリしました。
しかし,少年時代の僕が太陽光と月光を全くの別物であると錯覚してしまうほど,両者の光の性質は異なっているように思えます。
太陽を直接見ることは敵わないが,月に温度を感じ取ることは出来ない。
太陽は星と共存できないが,月に植物は育てられない。
『みんな違ってみんないい。』という有名な詩人の言葉を,宇宙に反映することができるようになるまでに,少しだけ時間がかかったのを覚えています。
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