【詩】 今、良い詩を書いている

今、良い詩を書いている
良い詩を書いているのに、嫌な通知が飛んできた。

思考を横取りされて
不完全のまま沈み込む

今はとっておきの詩よりも
謝罪の文面を考える必要がある


『も』と打ったら
『申し訳ございません』が最初に出てくる
『蒙昧』は出てこない

僕の言葉はどちらだろう
僕の心はどちらだろう

『申し訳ない』と思う気持ちは本当だが
定型文じみた謝罪は「口先だけのでまかせ」らしい
ならばいっそ
『蒙昧な昨日の僕の影に引き留められて現実との接触性が失われていた』と正直に語ろうか。


そこでふと思う。
一体僕は
誰に何を伝えるために生きているのだろうか

実生活で他者に向ける予定のない言葉たちを引き連れて
僕のための詩を紡ぐ
うっかり漏れ出したりしないように
注意深く隠しながら

それなのに
生活からかけ離れた
自分のために書いている詩を
誰かに評価して欲しいと思うのは
矛盾しているだろうか


そんなことを考えている間に
僕の「心からの謝罪」の文面は出来上がる
予測変換機能を駆使したから一瞬で
謝罪は鮮度が命だから。

過去の僕が考えてくれた謝罪文を
過去と同じような心持ちで送信する

未来の自分のために
文面はちゃんと保存しておく
デスクトップの専用のフォルダに。

書きかけの詩も
ちゃんと保存しておく
隠し持った専用のUSBに。


文体が変わってしまうほど
長い時間をかけて書いた僕のための詩を
誰かに見てもらうために公開する

謝罪文と違って
誰が読むかわからないから
妙な期待を抱えながら。


なんで詩を書くのか。
なんでそれを投稿するのか。

松下育夫さんの「詩の教室」が心に沁みます・・・

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