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すっとこどっこい丸
2021年4月10日 22:58
僕の住む街は太陽が沈んだ後でも光を溜めている。「夜は暗くなる」ということが真実かどうかも疑わしいほどだ。 外に出ると,飲食店は油の混じったような重い空気を延々と吐き続けている。せわしない往来に身を潜めると,何者かの品の無い香水が鼻腔を刺激する。国道を走る車は澱んだ排気をまき散らしながら颯爽と去ってゆく。 僕は生まれも育ちもこの街だ。しかし,この街の空気に悦楽の情を抱いたことは一度も無い。