ワニに来てもらう【フォトギャラリー短編】

あーーーー、しんどい。
今日は、会社、休もうかな。

体が重い気がする。あ、熱もある気がする。のども痛くなってきた。
そう言えば、1週間前からこんな気分が続いている。
もう今日は休むしかない。

会社に電話しよう。

「すみません。橋本下です。体調が悪くて、今日は休ませてください。」
「あーーそうなの。大丈夫？無理しないようにね。お大事に。」
上司の町村さんは、それとなく私の変化に気づいているのだろうか。とてもやさしかった。

ベッドで天井を見上げる。

気分が上がらない。無理しちゃったのかな。先月は忙しかったからな。
どうしちゃったんだろ、私・・・・。

ふと何かの気配を感じて飛び起きた。
そこには、ワニが立っていた。

私は声も出せずにワニを見つめた。

「・・・・すみません。」しばらく黙っていたワニが小さな声で言った。

「ワニが原因なのですか？」また、ワニが小さな声で言った。

「いいえ、とんでもないです。ワニが原因なんかじゃありません。先月から頑張りすぎていて、、、そのせいだと思います。」

「そうなんですか。でも、原因がはっきりしなくて、モヤモヤしているのでしょう。」今度は、ワニがはっきりした声で言った。

「自分じゃよくわからなくて、、、。気分が上がらないんです。」
「そうでしょう、そうでしょう。そんなこともあります。何が原因かわからないけど、気分が上がらない。元気が出ない。」

「そのために、ワニがいるんです。」ワニはしばらく間を空けて言った。

「何が原因なんですか？考えてもよくわからないとき、ワニが原因なんです。」

「ワニがすべてを引き受けます。そうです、あなたの気分が上がらない原因は、私、ワニのせいなんです。元気がでないのも、体に力が入らないのも。」

「だから、あなたは悪くない。すべてワニのせいにしてください。そうすれば、きっと明日は元気が出ますよ。」

ワニはそう言うと、ダイニングに行き、冷蔵庫を開け、棚からコップを取り出し、勝手にお茶を飲んだ。

そうか、この気分の上がらなさは、ワニが原因なのか。

ちょっと、気分が軽くなった気がした。それにしても自分勝手なワニだな。

・・・・

いつの間にか眠っていたようだ。お昼を過ぎていて、空腹で目を覚ました。
ダイニングにワニはいなかった。また、勝手に帰っていったのだろう。

さて、ワニが原因だと思ったら、体も気分も軽くなったようだ。
明日は、仕事をちょっとだけ頑張ってみるか。

（終わり）

お礼：nacoco37さん、素敵なイラストをありがとうございました。
「ワニが原因なんですか。」そんな優しいワニが来てくれるといいですね。かわいいワニさんです。