歯周病の進行を早める要因【Happy SMILE】
「歯周病」という言葉を、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
実はとても身近なお口の病気で、成人の8割は歯周病と言われています。
歯周病の進行を予防することが、実は○○を予防することにも繋がっているのです!
🔵歯周病の進行予防は、○○予防になる!!
こちらの図をご覧ください。
向こう側からこちら側に向かって、川の流れのようにドミノが並べてあります。「メタボリック・ドミノ」と言います。
このドミノには、疾病の名前が書いてあります。
遠くの上流にあるのは、う蝕(むし歯のこと)、歯周病、そして肥満。
だんだんこちら側に近づくと・・・、中流に高血圧、高血糖、脂質異常症など。
最後の下流には、脳卒中や透析、心不全などが書かれていますね。
どのような意味で、疾病の名前が書いてあるかわかるでしょうか?
ドミノが上流から下流へ倒れてくるに従って、疾病はだんだん全身の病気へと重症化しています。
中流の高血圧や高血糖は、健康診断を受ければ数値の異常が出てくると思いますが、自覚症状はない方もいらっしゃると思います。
下流は、場合によっては命の危険がある疾病です。
「このような深刻な症状になる前に、予防はできないのか…!」と、そう思いませんか?
ドミノ倒しを食い止めて、命の危険を伴う病気を予防するには、上流のむし歯や歯周病を見逃さず、進行させないことがとても大切になるのです!
今回は、「歯周病」に焦点を当ててお話したいと思います。
🔵歯周病とは
まず、歯周病についてお話しますね。
歯周病とは、歯の周りの歯周組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨・セメント質)に炎症が起こっている病気の総称です。
炎症が歯肉だけに留まっている状態を「歯肉炎」といい、炎症が歯槽骨や歯根膜にまで広がっている状態を「歯周炎」といいます。
以前、歯周炎は「歯槽膿漏」と呼ばれていましたので、こちらの言葉の方がイメージしやすい方もいらっしゃるかもしれません。
歯周病の特徴は、痛みがなく静かに進行していくことです。
ここが歯周病の恐ろしいところ!
歯肉が腫れたり、出血が増えたりして、「自覚症状が出た時」にはどうなっているでしょうか?
なんと、歯を支えている歯槽骨まで吸収してしまい、歯がグラグラしたり、ものが噛めなくなったりします。
そして、最後には自然と歯が抜け落ちてしまいます…!
また近年、歯周病が糖尿病などの生活習慣病と関連していることも明らかになっています。
このように、歯周病はお口だけでなく、全身の健康の面からも予防が大切だと考えられるようになりました。
🔵歯周病の原因は?
それでは、歯周病の原因について見ていきましょう!
1.プラーク(歯垢)
歯周病の直接の原因はプラークです。
プラークは多くの種類の細菌が増殖してかたまりとなったもので、歯につくバイオフィルムとも言わます。
水道やお風呂場にある「ぬめり」もバイオフィルムです。
特に、歯周病細菌は酸素の少ない場所を好むため、主に歯と歯肉の隙間にある歯周ポケットの中に存在し、毒素や酸素を放出して歯周組織を破壊していきます。
2.リスクファクター(危険因子)
歯周病の直接の原因はプラークですが、「口腔内の環境」や「生活習慣」の中には間接的に歯周病を悪化させるリスクファクター(危険因子)が潜んでいます。
歯周病が生活習慣病の一つといわれるのはそのためです。
歯周病予防には、適切な歯みがきでプラークを取り除くことが基本ですが、さらに歯周病のリスクファクターを少なくすることが大切です。
🔵歯周病のリスクファクター(危険因子)
▶局所的なリスクファクター(口腔内の環境など)
プラークを増殖させたり、歯肉の炎症を悪化させたりする要因がリスクファクターとして考えられます。
🟣歯石
プラークを放置すると、唾液中のカルシウムなどが沈着して歯石になります。
歯石表面には細菌が住み、プラークが増殖しやすいため、歯周病をさらに悪化させる要因になります。
🟣歯並び
歯並びが悪いところは歯みがきが不十分になりがちでプラークが増殖して炎症が起こりやすくなります。
🟣不適合な修復物など
歯に合っていない修復物などの周りにはプラークがたまりやすくなります。
🟣口腔習癖
「口呼吸」や「歯ぎしり」など、日常的に癖になっている悪い習慣によって歯周病を悪化させます。
お口で呼吸する癖がある場合、お口の中が乾燥しプラークがつきやすくなります。
歯ぎしりの癖がある場合、歯周組織は歯ぎしりのような横から加わる力に弱いため、歯周病が悪化されやすくなります。
▶全身的なリスクファクター(生活習慣など)
歯周病の予防・改善のためには、生活習慣を見直して、全身の健康状態を整えていくことも大切です。
毎日の過ごし方を気をつけることで、歯周病の予防だけではなく、生活習慣病の予防にも繋がっていきます!
🟢喫煙
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させて歯肉の血行不良をひきおこします。
さらにタバコには一酸化炭素も含まれていて、歯周組織の酸素欠乏を引き起こします。
そのため、歯周組織は栄養素不足になり、歯周病細菌に対する抵抗力が低下し歯周病を重症化させます。
🟢ストレス・生活習慣
ストレスや生活習慣の乱れ(睡眠不足、運動不足、不規則な生活リズムなど)によって免疫力が低下すると、歯周病が悪化しやすい状態になります。
🟢食習慣
甘いもの・やわらかいものを多く食べる習慣は、歯周病の原因であるプラークを増殖させやすくします。
また、血管内皮細胞や歯肉の細胞を傷つけ、炎症を起こしやすくします。
不規則な食事や栄養素の偏りは、歯周組織の抵抗力を弱め、全身の健康の悪影響に繋がります。
最後に
歯周病について、いかがだったでしょうか。
メタボリック・ドミノの図を思い浮かべて、上流にある「むし歯や歯周病の進行を予防することの大切さ」を思い出していただけたら嬉しいです。
ドミノ倒しを早めるリスクファクターはいろいろとありますが、日々の生活習慣の乱れは歯周病を進行を早めるだけでなく、全身の疾病のリスクを高める要因にもなります。
自分の人生を毎日元気に過ごすためにも、生活習慣を整えることを大切にしていきたいですね!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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今回の記事は管理栄養士の尾崎が担当しました。
参考
・丸森英史/竹内博朗「“食育”は歯科医療を変える 食を変えれば、う蝕もペリオも治る」.クインテッセンス出版.2015.2.10
・ライオン歯科衛生研究所「歯と口のトラブルとその原因」
https://www.lion-dent-health.or.jp/labo/article/trouble/02.htm