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【オトナになることのうた】怒髪天●立派なオトナ?そいつァ無理!「俺様バカ一代」

なんかもう、あれこれ語りたいことだらけの昨今でして。

兵庫県知事選(判別不能な事実多すぎ)。
NHKの『紅白』(出場者の顔ぶれ、内定情報についてなど)。
有吉弘行(紅白司会者なのにその内定報道の風潮を看破、そして新しめの商業施設に見られる横丁への言及など鋭い)。
洋楽アーティストの来日が多数決定中(ジャック・ホワイト、マルーン5、ポーター・ロビンソン、グラス・アニマルズなど…お金が追い付かないので、もろもろムリ)。
秋葉原に寄ったついでに、何年ぶりかに魂ネイションに行ったこと。これは写真を。

魂ネイションでは
ミッキーの超合金も展示されてたよ


もちろん野球ネタ(プレミア12、才木くん森下くんいいぞ、藤平投手はすごい~)。
出雲ロケだった先週の『それぞれの孤独のグルメ』(何度も行った出雲空港が!)。
火野正平の逝去(『にっぽん縦断 こころ旅』で、僕の故郷の雲南市界隈に来てくれた回は感動的で、今も録画が取ってある)。
ハラダのラスクのおいしさ(とくにホワイトチョコのは、わが家は大好き)……

などなど。
しかし今、それぞれへの見方や意見を書いてたらここがそういう脱線ネタだらけになるので、断念します。
忘年会で会った人には話しますよ。近年まるでやってないけど。
あ。10年近く前、若手の編集者たちを集めての会合を2回ほど開いたな~。僕が音頭をとって(「あんたにそんな甲斐性があったのかよ」という声がどこからか)。
しかし2000年代序盤までは打ち上げや飲み会が数日置きにあり、ろくに飲めないくせに深夜まで徘徊していたのがもはやウソのよう。下北のバーで飲んでたら、常連らしき青年が入店するやマスターに「最近ロックしてる?」と声をかけ、その勢いに負けて飲んでたレモンサワーごとひっくり返りそうになったのも良き思い出。みなさんは最近ロックしてますか。トラブルピーチも閉店したし(あの店で飲んでたらマジで客同士のトラブルが発生したことも)。

それから昨夜の『報道ステーション』での横浜DeNAベイスターズの南場智子オーナーのインタビューが評判になっていました。僕は観てないので人づてですが。迷った末の決断を正解にするよう頑張る、という話はいいですね。僕もこれでいきます。否。生きます。

そして偉大な詩人、谷川俊太郎のご冥福をお祈りします。音楽シーンにも大きな影響を与えた方でした。

先日はGuibaを観に行きました。今後もっと注目されてほしいバンド!


プラス、発売中の雑誌『昭和40年男』の12月号では漫画について書いていますので、よろしくお願いします。
取り上げているのは、水島新司の高校野球マンガの集大成的な一作『大甲子園』です。1983年のトピックということで。

水島プロの許可をいただいての執筆&掲載です


では今回はロック・バンド、怒髪天についてです。今年の前半に続き、またも登場。この週末に、歌舞伎町でのライヴを観に行くことにしています。

not 立派なオトナ! but 立派な俺様!


怒髪天については【 #年齢のうた 】でわりと最近書いたばかりだが、その2回分は年齢にまつわることだったので、今回はやや趣旨は異なる。あくまで、やや。でしかないが。


こうしてすでに書いたように、怒髪天はかねてから大人になることについて唄ってきたバンドだ。
あらためて言っておくと、このへんは古風な考えを、昭和的な思考を持つ彼ららしいと思う。そこには年齢を重ねた自分、大人になった自分もいたり。それに対して反発する心もあり、また、受け入れてる部分もあり。ただ、おおむねポジティヴな筆致である。
ヴォーカルの増子直純は破天荒な男だが、かたや、大人の年齢になった現在では常識というものをちゃんとわかっている人でもある。上下関係とか、人と人との間でわきまえないといけないこととかを理解している。
逆に言えば、そういう気遣いの人だからこそ、年齢や大人になることを唄ったりするのではないかと思う節もある。そうして揺らめく気持ちもまた、彼の持ち味だと考える次第だ。

先ほどの【年齢のうた】で触れた「オトナノススメ」は、一番最初は2009年にシングルとしてリリースされた。大人は最高、人生を背負って大はしゃぎ!と唄う曲。彼らの代表曲と言っていい。

今回は怒髪天がこれ以外に大人になることを唄った歌を調べた。その心当たりがあったからだ。
そしたら何曲か見つかった。とはいえ、彼らも30年の歴史を持つバンドなので、どこかで漏れがあるかもしれないが。

まず紹介したいのは、WEBの「関西ぴあ」の連載からである。これ、相当な熱量とボリュームの連載だったようで、とんでもない情報量になっている。

その中の、2009年時点のバンドのディスコグラフィを掲載した回に注目したい。

ここで、インディ時代のアルバム『マン・イズ・ヘヴィ』(2001年)について、増子直純はこう語っている。

増子「これは“男はつらいよ”だよ、何しろ。男の人生と言うか、今とつながるけどコンセプトが“大人”なんだよね。大人の男の苦悩であったり、暮らしというものを表したいと言うか」

なるほど。メンバーがスーツを着たMVには、大人の男の姿を描こうとした背景もあるわけだ。


こちらは渋みがある。


2001年、増子は35歳だった頃。当時から自分たちはもう大人の年齢に差しかかっているという自覚があったのだろう。
『マン・イズ・ヘヴィ』はそうした人間のせつなさ、苦みが漂うアルバムだ。


そして大人になる、大人になった自分を唄った決定的な曲は「俺様バカ一代」である。2004年、やはりインディ時代のアルバム『リズム&ビートニク』の1曲目を飾っていた曲。

しかしこのアルバム、権利関係の何かがあるのか、現在はオリジナルの全6曲が当時の形態で発売されていない。
先の楽曲も、むしろ今のファンにはライヴでの演奏や、「俺様バカ一代・改」となって初期のコンピレーションアルバムに再お目見えした際に、おなじみになったことだろう。


増子は、立派なオトナ? そいつは無理だ! でも立派な俺様になる!と叫ぶ。
何という暴論、何という極論。これを唄いはじめた頃の彼は38歳だった。

そして先述のアルバムは2021年に、追加曲も入れて新装盤となって再リリースされた。「俺様バカ一代・改」は2021年の新規ミックスとなっている。


ちなみにバカ一代というタイトルの語源は、70年代のマンガ『空手バカ一代』のはず。大山倍達物語だ。
こちらはそのアニメ版。


このように、30代後半で立派なオトナになる自分を諦め、それよりも「俺様」道を極めようという、開き直りのような境地に達していた増子直純。そもそも彼らは大人になるということをどう捉えていたのか?

以下は、「俺様バカ一代」の5年後、40代に入っての「オトナノススメ」リリース時のインタビューである。やはり「関西ぴあ」の記事で、4人のグダグダなしゃべりがそのまま載っているのが面白い。時間がある方は読んでみると笑えると思う。時間がない方はさにあらず。

抜粋して紹介する。大人についての話である。

--では、“大人”についてお伺いしていきます。“自分って大人だな~”と思う、そういう自覚とかありますか?

増子「そりゃもう、みんないい大人でしょ(笑)。“俺、子供だよ!”って言う方がおかしい」

--ああ、すみません、大人らしく振舞うっていう感じで…。

増子「冠婚葬祭の時くらいじゃない? そのときぐらいだよね。あと、親戚とか友達の子供に対してとか。…そんなこともないな」

シミ「俺も別に考えたことないなぁ」。

増子「“大人”になりたくないとも思わないしね。若い世代の中には、大人になるのは怖いなって思ってるヤツもいると思うし、俺らも思ってたけど、全然そんなことないよね。だから、若い世代のヤツらにも何の構えもいらんし、ビビる必要ねえぞって教えてやりたいし、俺らと同い年ぐらいの人で、毎日つまんねぇって言う人には、それは大人の自由さを忘れてんじゃねえか?って伝えたい」

そう、会話中の「シミ」は、今年解雇されてしまったベースの清水。今の布陣は、この4人ではない。

それはそうと、「ビビる必要はない」というのは、たしかにそういう気がする。僕も若い時分は、大人になることに恐れとか面倒くささを感じていたものだ。まあ実際、恐ろしいことも面倒くさいことも直面したりするのだが。
ただ、そういう困難にもっと若い頃からぶつかってる人もいたりするわけだし、逆にまったく無縁そうな人もいる。人それぞれ、人生いろいろ。そんなふうにも思う。

--では、皆さんが若かりしころ抱いていた大人の概念はどんなものでしたか?

増子「仕事をしっかりして、泣き言を言わないで、辛い立場でも仕事に行くことを嫌がらない。我慢強いというか、頼れる感じで渋いというかね」

友康「何とか我慢して」

増子「我慢が我慢に見えない。あと、あんまり笑うとかでもなく。そういうイメージだった。ね、坂さん」

坂詰「そうっスね」

増子「出た! これ、悪い大人の例だから。何でもそうっスねと受け流す悪い大人。こういう大人にはなりたくない(笑)」

シミ「坂様は生きる標本です」

増子「メンバーの中でいうと、坂さんが一番大人だよ。だって成人病だもん。“成人”がついちゃってんもん。今はもう生活習慣病って言うけどね」

坂詰「大人といえば“酒、煙草、麻雀”ですね!」

シミ「全部、ダメじゃん」

増子「麻雀がギリかな。でも負けても払う金がないよね」

仕事をしっかり、泣き言を言わない、辛い立場でも仕事に行く、我慢強い、頼れる感じで渋い……。
実際は、こんな大人ばかりじゃない。グチや文句ばかり言ったり、我慢強くもなく、頼れるわけでもない大人もたくさん。僕だって、偉そうなことは言えない。
ただ、それでも……カッコ悪くても、弱いとしても、生きていくことが大切。今はそんなふうに思っている。
「大人なんだから」という責任やプレッシャーにつぶされて、それで生きることを棒に振ることはない。そういう考え方もあるはずだ。

増子「(中略)子供はやっぱり親に生活が守られてるじゃない。でも、大人ってサバイバルに近いよね。やりようによってはいかようにもなる。会社が嫌だったら辞めていいんだから。すごくない? そうしても自分が困るだけだし。困ったとしても、“つまんないから辞めるわ”って辞めていいんだよ。すごいよね。どんな道でも歩いていける。法に触れなきゃね」

増子の言うこと、まったくその通りだと思う。もっとも、それはそれで、どうしても責任ってやつがついて回るのだけど。

増子「これはすごいなって思うし、俺、やっぱ思うけど、どんどん年を重ねていって、それこそ人生を背負っていく中で、別れたり、出会ったりする。そんな、自分の人生をぶんぶんぶんぶん振り回していくことで得られる快感っていうかさ。やけっぱち感とか、将来のことを考えないとか、そういう問題じゃなくて。一日一日を楽しんで生活していく。それが生きていることなんだなとだんだん実感してくるよね。来年の夏休み、楽しみだなって思わないもん。子供のころは思ってたけどね。来年の夏休みもまた、海に行きたいなとか。それより、今日一日、楽しもう。考えられるのは明日、あさってまでぐらいだね。そういうのはある。生きている感があるよね。大人になればなるほど感じるね。辛いともあるけど。現実感というか、生きていることを実感するのは大人ならではだと思う。くわ~~~、シビれるなぁ!ってこともあるし……」

さまざまな思いはあれど、大人であることを前向きに受け止め、楽しんで生きていこうという姿勢がうかがえる。
そしてそれが、長らく続いている怒髪天というバンドの火力になっているとも感じる。

大人って楽しいぞ?と自慢したい


次も同じく2009年のインタビューで、やはり「オトナノススメ」の発表時。増子による話である。

増子さんも、けっこう若気を至らせてたクチなんですか。

「めっちゃめちゃ至ってたね。しないでいい喧嘩したり、やらんでいいことに首突っ込んだり。しかも誤った正義というか、自分の中でこれが正しいと思ったことに反目するものは徹底的に潰すっていう。それはほんと若気の至りだよ」

言える範囲で、何をやらかしたんでしょう。

「いやバンド潰したりね。ははは! あと酷いのは、ドクター・マーチン履いてる奴がいて『それお前より俺履いてたほうがいいから、よこせ』」

ははははははははは!

「盗賊。追いはぎだよ(笑)。そういうの、よくやってたなぁ。でもムチャやるのがパンクだと思ってたし。俺らにとってのパンクって、シド・ヴィシャスが21、22で死んでたし。高校ん時、当時の彼女に『俺そのぐらいで死ぬからよ』みたいなこと言ってたからね、本気で」

今やうっかり40代!

「もはやダブルスコアだよ! 何考えて言ってたんだろう。何の根拠だっていう(笑)」

当時の増子さんは、世間の大人をどういうイメージで捉えてたんですか。

「や、もう植え付けられたイメージだから、ほんとはわかっちゃいないの、大人のことなんか。自分のことで手一杯だし。本来は全然わかっちゃいないし何が憎いわけでもないんだけど。でも学校の先生とか理由もなく嫌ってて。大人は嫌いだ、大人ファック・オフ!みたいなのが格好いいと思ってたんだね。そのくせ両親とすごい仲良くて、悪さはするんだけど夕食ん時には家帰って、一緒にメシ食って今日はどうだったって話して」

そこは平和なんだ。

「そう。それとこれとは別だから(笑)」

ははは。そういう時代を過ぎて「俺大人だな」って初めて感じた瞬間ってありますか。

「……タバコ吸って外歩いて警察に注意されなくなった時かなぁ。あとカード作った時とか。車運転できた時も大人だなぁと思ったけど……でも物理的なことばっかりだね。精神的に大人だなぁと思ったこと、あんまないもんな。相変わらずオモチャ好きだし、子供の頃からずーっとラーメンとエビチリが好きだし。自分でもこんなに趣味変わんないと思わなかった」

でも、ただ好きなものに対して無邪気にハシャいでるだけじゃないですよね。私、この曲の中で一番好きなフレーズが〈人生を背負って大ハシャギ〉っていうところで。

「そう。背負ってムチャこくっていうところに醍醐味があると。何にも背負ってない奴が大ハシャギっていうのは、それは若気の至り、誰でも許されることで。いかに重いものを背負ってもハシャいでくっていう、その無茶さ加減が一番大事だと思う。今の若い奴らに俺が言えるとしたら自分の経験しかないから。ほんと薦めてやりたい。大人になること何もビビることねぇぞって。これ昔の自分にも向けてるし。やっぱすごい……大人って大変そうじゃない。社会的責任もあるし仕事もしなきゃいけないし、毎日働くのも嫌だしなぁって思ってた。そういうことじゃないのよ。人の数だけ選択肢があって、それを選んでいける楽しさ、その道を突っ走っていける楽しさっていうのは、実は何物にも代え難い、すごいことなんだぞと。それは俺も知らなかったからね」

改めて訊くと、今こういう歌を唄う必要があると思った理由って、何かあったんですか。

「まぁ、常に俺らにはアンチテーゼっていうのがあって、今回は〈ドント・トラスト・オーバー30〉っていうパンクに対するアンチでもあるわけ。そういうのはもちろんありつつなんだけど……やっぱフェスかな。イベントでも何でもいいんだけど、若いお客さんがいっぱいいるじゃない。そういう子たちを目の前にして、ひとつ教えてやりたいなって。大人って楽しいぞ?っていうのをちょっと自慢したかった。自慢かい、って話なんだけど」


増子節が全開だ。

怒髪天には、ほかにも大人になることを唄った曲がある。

2005年、アルバム『ニッポニア・ニッポン』の「大人になっちまえば」。ポップなサウンドにリアルな感情が込められている。


2014年のミニアルバム『紅』には「プレイヤーⅠ」。これはゲームのタイアップ曲で、それと「オトナノススメ」で唄った価値観を結び付けた楽曲と言える。冒険は続いてる、という箇所がとてもいい。


それから2016年のアルバム『五十乃花』の「せかいをてきに…」。レゲエ調の歌で唄われる大人の心情で、その中に反発心が見える。


30代から50代に至るまで、こんなふうに怒髪天は、増子は、大人になることを唄い続けてきた。彼はその時々に思っていること、考えていることをそのまま歌詞にすることが多いので、とてもわかりやすい。

ただ、50代も後半に差しかかってきた近年は、こうしたテーマの曲は見られなくなった。それはそうだろう。さすがにもう、押しも押されぬ大人だ。

この秋、怒髪天は3人になっての初レコーディング曲をリリースした。


変わらず、元気でやっていこうぜ!という心意気を感じる曲である。
60代が見えてきた今でも、さらにメンバーがひとり抜けてしまった現在でも、どっこい怒髪天は生きている。

そしてあんなトガった男衆でも、子供の頃があり、若い時分があり、そこから大人になっていくまで、いや、大人になったあとも、いろいろな思いにとらわれたり、迷ったりしたことがあった。そしてそのリアルさを音楽という作品に残してくれたことは、多くの人々の心に響いてきたと思うのだ。

大人になることは怖くない。いろいろと面倒くさいけど。たしかにあれこれと責任や義務は増えるけれども。ツラいことの反面、楽しいことだって、たくさんある。生きていて幸せを感じることだって、多い。

大人たちがそんなふうに生きる姿を若い世代に見せるのは、いいことじゃないかな。あらためて怒髪天を聴きながら、そんなふうに思った。


コメダ珈琲店 東京ドームミーツポート店にて、
自慢のドミグラスバーガー、720円。
がっつり食べれて、しかもうまい!
コメダではこれを頼みがちです

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青木 優
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