スクリーンショット_2019-04-27_16

ガマンを愛情に変換する社会。

「子どもがかわいそう」

離婚した時、
ポリアモリーを公言した時、

何度かこの言葉をかけられた。

ただこの言葉にはずっと違和感があって、その感覚について考えていたら、意外な構造が見えてきた。

今日はそんな話。

ポリアモリーとはお互い合意の上で複数の人と同時に恋人的な関係を築く恋愛スタイル。対義語はモノアモリー。過去のシリーズはこちら

■ガマンの基本構造

「子どもがかわいそう」発言には含みがある。

「子どもがかわいそう(だから、子どものために○○するのはガマンしなよ)

後半が発言の主旨だろう。
しかし単刀直入には言いにくいのか、よく前半だけが切り取られる。

「××のために、○○するのはガマンするべき」

「子どもがかわいそう」発言の真意はココにあるとして、まずはガマンの構造を考えてみた。

「○○したい」という意思があるが「(何かしらの要因で)〇〇しない」という行動をとる。この差分がガマンだ。

例えばこんな場面。

会社の歓迎会。新入社員も出揃って、目の前にお酒も来た。お腹も空いている。でも、いちばん偉い部長がまだ来ていない。だからみんな、お酒や食べ物に手をつけずに待っている。

極めて日本的な光景だが、よく遭遇する光景でもある。
ではこのガマンは最終的にどうなるのか。その先を考えてみる。

■ガマンが愛情表現に変わる

先ほどの場面。部長が到着したら部下は言うだろう。

「部長!お待ちしておりました!」

この瞬間、ガマンは愛情表現へと変換される。

先ほどまでのガマンは、この瞬間のためにあったと言ってもいい。部下たちは一斉に立ち上がって部長を迎え入れる。
誰かが一口でもグラスに口をつけたら終わりだった。それを耐え忍んでガマンした行動を、部長へ愛情表現として伝える。

繰り返しになるが、日本でよく遭遇する光景だ。

実は「子どもがかわいそう」発言も同じ構造をしている。

■ガマンから生まれた愛情

「子どもがかわいそう」というアドバイスに従って、離婚を踏みとどまるとこうなる。

そしてこのガマンもまた、愛情表現として変換される。

「グラスに口をつけなかった」という行動を部長への愛情表現として変換したように「(離婚したかったけど)離婚しなかった」という夫婦の行動は、いずれ子どもへの愛情表現として変換されるだろう。

「部長、お待ちしておりました!」のように口に出して伝えるかは別として、「ぼくがいなかったら離婚しているんだろうな」と子供には伝わるはずだ。

そんな「我慢から生まれた愛情」が伝わった時、子どもはどう思うのか。
これは部長と子供で大きく異なる。

■子どもは愛情を拒否できない

「我慢から変換された愛情」を伝えられた時、部下よりも立場が上の部長はその愛情を拒否することで、部下を我慢から解放することができる。

しかし、親よりも立場が低く、親の愛情をまだまだ感じたい子どもはそれができない。ここが大きな違いだ。

その代わり子どもには「親をガマンさせてしまった」という負い目が残る。ガマンから生まれた愛情が、また新たな負の感情を呼び起こしてしまうのだ。

「子は鎹(かすがい)」なんて言葉があるが、裏を返せば「子どもがいなければガマンしなくてすんだ」という意味かもしれない。

本来、子どもへの愛情の有無と、離婚するかしないかは別の話だ。それを混同すると、子どもに「パパとママとつなげる」という余計な責務を与えることにもなってしまう。

僕が「子どもがかわいそう」と離婚をたしなめられる言葉に抱いた違和感は、たぶんそういうことだった。

■ポリアモリーとガマン

最後に少しだけポリアモリーの話を。

離婚を経てポリアモリーを公言した僕だが、先日、こんなポリアモリーカップルの話を聞いた。

Cさんと付き合っていたAさんだが、実はBさんにも想いを寄せていた。しかし「Cさんに申し訳ない」としばらくは気持ちをガマンしていたそうだ。

その後、AさんはBさんから告白を受けたがCさんの存在を理由にお断りした。そして、それを愛情表現としてCさんに伝えたそうだ。

しかしCさんは複雑だった、嬉しい気持ちもあったと同時に「私のせいでAさんがガマンをしている。私の好きなAさんじゃいられなくなる。」という感情を抱いたそうだ。

その結果、Aさん、Bさん、Cさんはポリアモリーの関係を選んだ。Aさんは2人と付き合い、それぞれの関係は良好だと言う。

■ガマンを愛情に変換する前に、第3の選択肢を

部長の話にも、離婚の話にも、ポリアモリーにも共通するのは、ガマンを愛情へと変換することへの違和感だ。

ガマンすること、ガマンを愛情に変換することで、本来の愛情がいびつな形になることがある。

だから「自分がガマンすればいいや」と思う前に第3の選択肢を探してみてほしい。自分の気持ちも、相手の気持ちも大切にする方法が、そこにはあるかもしれない。

ガマンを愛情に変換する社会は、平成の時代に置いていきたい。


いいなと思ったら応援しよう!

小島 雄一郎
サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。

この記事が参加している募集