崩れた天井を蓋う黑布の隙間から射す闇の
崩れる天井を蓋う黑布の隙間から射す闇の
ぬかるみを曳きずる点よりちいさな
瞬きが躊躇いよこぎり
蜘蛛巣をまとい廻階段をおり
蝶番の外れる扉枠の釘跡をあらわにする燭光が
うかびあがらせる白い貌の
燭台を床におく彼の
眼窩を塡める陰影の遠い瞳に耀う傷ついた女
円形の交色板におしだされ蛇状にからみあう絵具に
よびかけがまじり
ナイフにとった頬を彼女にかぶせ
首すじを撫で
もう片方の頬にナイフで湿った肌をおき
こめかみを掻き
命毛を揃える髪毛がはげしくくねり
虚空に爪が反り乱れる指の褶曲
細長い寝台に身をよじり
繰りかえすひと握りの死にゆらめく灯火の分身
襟首の動脈に銀朱をそそぎ息をとめ
こたえを待ち顫動える鼓動
火炎旋風の舞い狂う街の火粉が吹きとおり
彼の額に匂う淡い口唇
運河に浸かる紅蛾が翅をあげ打ちふるい漣をたて
彼にかさねる指先をひく彼女の口もとに
笑みがもどる
【22O17AN】「裏返しのタブロ」よりⅠ
*画像は「Dream by WOMBO」にて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。
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