戦間期の戦傷外科医
切断した下肢を運ぶ看護師が躓いた、見た目よりずっと
重い、少女の人生を支えてきたから、だが足と命、いま
ここでは一方しか選択できない、彼女は選べない、神が
あたえる試練ではない、血痕の散る剪刀が携帯灯の弱い
光を吸い、骨鋸の鋸引聲がまだ床を這っている、埋もれ
る趾から芽吹く綾目、二股にわかれず一本で立つ大樹、
骨断端を被覆し閉創する、予後の計画は困難だ、いまこ
こには、現在しかない、無差別の過剰な苦痛しかない、
<次は廊下の移動用簡易寝台だ、>
救いを求める貌貌貌、叫び哭き歎