深い青にいざなわれ
深い青にいざなわれ
丘の上の教会に行き着いた
門を入ると、空を渇望し天を突く尖塔
海を行く箱舟をかたどる白い聖堂が建つ
樹木に囲まれた中庭の聖母マリアは
わずかにうつむきそっと指先をあわせている
その口もとが微かにうごき
聖堂で奏でられるパイプオルガンの音に気づく
そよ風に讃美歌が漂い、人人が集まり音もなく去る
老いた夫婦は手をとり支えあい祈りを呟く
泣く子をあやす女が膝をついて涙を流す
腕を吊る男はロザリオを握り唇をかみしめた
祈りをおえた姉弟は十字を切り手を繋ぎ走りだした
白い頬を、陽が傾き朱く燃やし
暗闇が冷やし、月が温もりをつたえる
風は凪いだがオルガンはうたいつづける
ふとみると、マリアと見つめあう少年がいる
その掌は血で染まっている
聖母の涙は、今夜も地に深い穴を穿つ
【AOAANB0】