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行き止まりとなった小径の壁にはりつく天使の両翼

行き止まりとなった小径の壁にはりつく天使の両翼
堕落して激突し刻印されたのか
身体だけが壁を透過したのか

掌より小さい空から、クリスタルの凍雨が散るスクランブル交差点
粒子の壁に透け高々と建つレンガの迷宮

もはや揚力をうまない双翼のうしろには二本の脇道が続く
来た道か、行く道か

点々と放置された蝙蝠の羽

手をつき曲がる三つ目の角に
棕櫚で編まれからまりあう撚り糸が尻尾をふっている

強く引くと切れてしまいそうな細い遭遇
繰りながら狭く焦げた赤い通路を巡行する

屹立する泥の障壁を飛膜を失った鼠が這う

軽くなる糸に騒ぐ解放の予感
曲折した壁の間を急ぎ足で抜けていく

だが、引く手が速すぎたのか
もともとそうだったのか
指先には項垂れる糸のただの終端

迷路の暗い罠
行き曲がり
進み戻る

そして
戻り進み
曲がり行く

粗い光が浮游する通路
その奥に消えつつある、蝋燭の耀い

衣服をまとわずまるくなった幼な子が水溜りに伏している

白い冷たい肌
抱くと鼓動がもどり乳の香りが漂う

ひらいた緑色のひとみ
両手でおおい胸に抱いていた鳩をさしだす
その口には濡れたオリーブの枝

私の掌におき背にふれると左右の肩から翼がたちあがる

私を抱くと翼は子のものとなり羽搏いて
迷宮を翔けのぼり、どこまでも小さい点となった

鳩は棕櫚の糸玉に眠り、私は
赤信号の点滅する交差点の真中で黒く流れていた

【ANAAJB1】

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