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Jリーグ放映権料分配を計算するー優勝するといくらもらえるの?2位との差は?



はじめに

いよいよJリーグは、最後の2週間を迎えることになる。ここでは、各チームの戦いを見る上での金銭的モチベーションを頭に入れておきたい。

成績の良かったチームの選手は、契約を更改する上でサラリーの増額を望むであろう。また、選手によっては契約内容に順位に基づいたインセンティブ条項があるかもしれない。

特に、複数年契約を結んでいる選手は、大きなボーナスが約束されているであろう。また、監督はチーム成績によって査定される。契約内容に大きなインセンティブ条項があることが予想される(特に外国人監督。)

そこで、Jリーグからの分配金をチーム成績と連動した部分のみ調べてみた。このほとんどの原資はDAZNの放映権料であると考えていただきたい(他にサッカーくじ等の収入。)

チームの収入源

どのチームにも共通の収入源がある。① スポンサー料② 入場料収入、③Jリーグからの分配金④ 物販収入である。下の表はVissel神戸の2023年のものである。参考までにみてほしい(詳細に立ち入らない。)営業収入総額約70億円である。

売上高 70.37億円 ハイライトは大きなプラス

上表を見ると2023年、ヴィッセルは5億3600万円のJリーグ分配金を受け取っていることが分かると思う。売上高に占める比率は7.7%である。

放映権料の分配(Jリーグ分配金)

さて、Jリーグ分配金であるが、大きく分けて3つある。① 成績に基づくもの② DAZNの視聴者数(人気)に基づくもの、③全チーム同額のもの。①は後にして、②、③から述べよう。円グラフで示そう。

ベースとなる分配金(全チーム同額)

まず、③はJ1クラブは2.5億円、J2は1億円、J3は2000万円と一律である。以下、変動するものを計算するが、ベースとしてJ1ならこの2.5億円があることは頭に入れておいて頂きたい。

DAZNの視聴率に基づいた分配金(人気連動)

②は各クラブの全試合の視聴者総数に基づいて約13.4億円を分配する(ここでは、成績と人気に短期の相関はないとして、固定収入として扱う。)

9月24時点の中間報告ではあるが、下表のようになっている。大体、予想通りの人気クラブランキングであろうが、G大阪の人気が落ちているのがJリーグ全体としては、残念なことであろう。G大阪は神戸に抜かれている。10年前ならとても信じられないことである。

ファン指標配分金 13.4億円をDAZNの全試合の視聴者数で分配する

成績に連動する分配金

さて、成績に連動してクラブが得る収入は以下のグラフのようになる。例えば、1位は分配金5億円と賞金3億円の合計8億円、2位は3.6億円と1.2億円の合計4.8億円と続く(上記のヴィッセルの2023年営業収入との齟齬が生じているのは、分配金の上位3位は2年に分割されて支払われるからである。)

また、10位以下には成績に連動した分配金は支払われない。これも重要である。

オレンジ:分配金 水色:賞金

これを現在の順位表に挿入してみよう。

第36節終了時の順位と分配金

Jリーグ分配金が売上高、チーム人件費に占める割合

これでは、各チームにおける金銭的意味合いが分からないので、売上高とチーム人件費と比較してみよう。

チーム人件費に対する分配金の割合に着目してほしい

まず、気づくのは金満クラブと思われている神戸にとってもこのお金は価値があるものであるということだ。もし、全てを選手、コーチ、監督等に回すとその21%をカバーできるということだ。

4位以下のビッグクラブにとっては分配金は、今の順位では売上に占める割合としてはかなり低いものとなっている。

東京Vの場合

また、最低売上高の東京ヴェルディにとっては、少しでも順位を上げるとリターンは大きくなることが分かる。ヴェルディは、この成績を収めたことで人件費が来シーズンは増加すると思われる。人件費7.8億円でこの順位にいること自体が奇跡的なことである。

ここで、東京Vが到達可能な順位の分配金を見てみよう。最高の順位は4位である。

東京 4位と6位の比較

わずか6000万円の増加によって、チーム人件費に対する割合は7.7%上昇する。つまり、スモール・チームにとっては、このJリーグ分配金は非常に意味があるものである。

ガンバ、横浜、鹿島の場合

それに対して、売上高の多い、ガンバ、横浜、鹿島にとってはそれほど大きな収入にはならない。しかし、3位になると一気に分配金額が増える。3位に入りたいはずである。金銭的に3位争いが面白くなるのは3位2.8億円と4位1.5億円、5位1.2億円と比べると伸び率が増えるからである。

分配金は完全なるボーナス

この分配金・賞金の性質は完全なるボーナスである。つまり、最初から予算に組み込まれていないはずである(サラリーマンのボーナスはあらかじめ予算に組み込まれている。)

そのため、かなりの流動性のあるお金である。クラブは好きな項目にお金を使えるはずである。助っ人を雇っても良いし、重要な選手の引き留めに使う場合もあるだろう。負債を抱えているクラブは返済に回した方がいいだろう。

広島の場合

最後に広島が優勝した場合を見てみよう。優勝すると8億円、2位だと4.8億円である。この差3.2億円がいかに大きいかは、チーム人件費との割合で分かるであろう。

広島 1位と2位の比較

なんとチーム人件費の約33%をまかなえる。広島の財務諸表を見ていたら、やはり新スタジアム建設に伴い負債が増えているようだ。広島は当面、負債を返すため、この10年間は、チーム人件費を増やすことはできないだろう。

インセンティブの割合を増やして、選手は自分のサラリーは自分で稼ぐというのが、理想であろう。広島には優勝するモチベーションは十分にある。


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