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球技における戦術とは何か。「数的優位性」、これだけである。ーいよいよスーパーボウル②

サッカー、ラグビー、アメフト、バスケ、これらの球技の戦術を貫く1つのプリンシパルがあるとすれば、それは何か?

それは、数的優位性をフィールド上に作り出すことである。

一番分かりやすいのはラグビーであろう。密集(ラック)からスクラムハーフ(9番)がボールを取り出し、10番がボールを受け取る。このとき、10番は、相手チームのマークの数とフリーのチームメイトの数を比べる。フリーの選手の数が多ければ、ボールを回しトライをする戦術を取るだろう。

逆に、ディフェンスはどうか。ディフェンスも数的優位性を常に保ちたい。どうすれば良いか。密集に入る選手を相手より一人減らせば良い。すると、相手がボールを展開する局面で少なくともマンマークはできるのである。

この考え方は、相手選手を多く密集に巻き込むという考え方に行き着く、つまり、密集でボールを奪う圧力をかけ続けるのである。いわゆる「ジャッカル」と呼ばれるプレーの効用は、何もボールを奪うことだけにあるわけではない。

密集に参加させる相手の数を増やすことで、オープンフィールドを守っているのである。ここに「ジャッカル」の上手い選手がチームにいることのメリットがある。

例えば、バスケを考えてみよう。現代バスケの戦術は、ほぼカットインと3ポイントと言って良いだろう。ボールを持つ選手がバスケットにダイレクトにカットインすることで、ディフェンスを密集させ、フリーの選手に3ポイントシュートを打たせる。極論、やっているのはこれだけである。数的優位性である。

サッカーでは、どうであろうか。数的優位性を生み出す戦術としては、ハイプレスであろう。簡単には行かないが、ボールを奪えれば一気に数的優位になる。そのため、相手はハイプレスをかいくぐるため、選手を一人自陣でのボール保持に回さざるをえない。すると、守備側の陣ではマークしなければならない一人減ることになる。

このように、選手のフィジカル能力が上がり、選手がフィールドの端から端まで使えるようになった、現代では、フィールド上に数的優位性を構築することがあらゆるスポーツの戦術の主眼となっているのである。

もし、貴方が球技の戦術についてあまりピンと来ないならば、戦術とは、結局、いかにフィールド上に数的優位性を生み出すかという方法であると理解すれば良いと思う。つまり、マンツーマンの延長線上に戦術が展開されているのである。

さて、アメフトはどうか。一般的には、かなり高度な戦術が行われているように、思われている。確かにそうである。私は1シーズンで100試合以上、観るが、未だになぜそのプレーが成功したかは、パッとは分からない。しかし、そのプレーがどれだけ難しい(すごい)かは分かる。

例えば、フリーの選手がパスをキャッチしたとする。これは完全に作戦勝ちである。そのプレーはまさにその選手がフリーになるように設計されているからである。ここで、設計されていると言えるのは、アメフトのプレーはスナップから3秒以内に完結するからだ。

次に、マークを受けている選手がパスキャッチしたとする。この場合、その選手が優れていると考えてよい。また、QBのパス能力も誉めなければならないだろう。さらに、ダブルカバーされている選手がパスキャッチをしたとする。その選手はさらに傑出した選手である。

これは、サッカーではメッシの全盛期を考えて頂ければ良い。メッシは常に二人以上の選手にマークされていた。それでも、誰も止められなかったのである。

さて、ディフェンスはどうか。細かいことは省くが、人数合わせをするとアメフトでは少なくとも一人の選手が守備側で余る計算となる。ただし、QBがボールを持って走らない限りである。走れるQBのいるチームに対するディフェンスは、選手を余らせることができなくなるのである。つまり、全てがマンツーマンとなり、数的優位性を保てなくなるのである。

ここに現代のアメフトの特徴がある。つまり、走れるQBの登場により、今、ディフェンスの戦術に焦点が当たっているのである。

今回、スーパーボウルに登場する2チームは、まさに走れるQBを持ち、リーグ最高のディフェンス戦術家がいる、まさに現代を代表するチームである。

もし、貴方がアメフトのことを難しいと考えるならば、私は100%賛成する。しかし、この球技を貫く、いかに数的優位を作り出すか、という考え方を身につければ、見えないものも見えてくると私は考えている。他のスポーツを観戦するときも、頭の隅に「数的優位」という概念を持っていて欲しい。




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