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得点王 大谷翔平②ーなぜ、大谷の得点は増えたのか。キーは盗塁数の増加だ。



前回まで


前回は、大谷選手が「得点王」であることを指摘した。そして、アメリカではデータ分析の進化により、一人の野手の攻守の両極面を「オフェンス」、「ディフェンス」と呼ぶようになっていることも強調した。

一つ忘れていたのは、投手のスタッツである。投手成績は「ピッチング」と呼ばれていることである。投手は、別の指標で未だ語られていることは強調しなければならない。

なぜならば、その垣根を超えた選手が出てきたからである。もちろん、大谷である。これは、セイバーメトリクスの世界にも大きな影響を与えた。そして、生み出されたのが「勝利貢献度」という指標である。今回は、この指標については深入りはさける。

さて、唐突であるがイチロー選手のメジャーリーグでの1シーズンの最多得点はいくつであるか、ご存じであろうか。

答えは127得点である。この議論の行先は分かると思うが、今シーズンの大谷の得点134は、イチローを超えているのである。もし、1番バッターの役割を、得点をあげることと捉えると、大谷は1番バッターとしてイチローより優れた選手である。

(もちろん、近年のセイバーメトリックスの浸透により、1番バッターの役割は様々に変わってきている、ことは指摘しておく。)

なぜ大谷の得点数が増えたのか

さて、下の表を見て欲しい。これからの議論に必要なデータを抽出した。これは大谷選手のオフェンスの成績を比較したものである。2023年と2024年のデータである。

2023年、2024年シーズン比較

当然、得点は32点増えている。これに対して、自己完結で得点できるHR数の増加は10である。それでは、差し引き22得点はどこから来たのか。それは盗塁数であるというのが、私の仮説である。

なぜ盗塁増は得点増につながるのか

はセイバーメトリクスでは、アウト数とランナーが何塁にいるかで得点が何点入るかという「得点期待値」が計算されている。ここでは、盗塁にのみ焦点を当てる。また、全て2塁への盗塁だと仮定しよう。

得点期待値

例えば、ノーアウトからヒットを打って、ノーアウト一塁となったとする。①の状況である。ここで盗塁を試みると、②か③の状況になる。

得点期待値

その差を見てみよう。セーフならノーアウト2塁となり、得点期待値は+0.22 上昇する。それに対して、アウトになったら-0.58 下降する。このとき、一塁走者が普通の野手なら(盗塁成功率50%とする)、絶対盗塁をしない方が良い。これは、計算しなくても分かるであろう。

それでは、あなたが監督として、盗塁成功率が何%の野手なら、盗塁の許可を与えるだろうか(下表によれば成功率が7割強の選手なら得点を増やせる。)以下が、大谷の今年の盗塁試行数(63盗塁試行)を元に、盗塁による得点増加を示したものである。

盗塁による得点増加(1シーズン)

大谷の盗塁は何点ドジャーズの得点増に結びついたか


大谷の盗塁成功率が高いことは、ニュース等でご存知だと思うが、これがいかに大谷の得点、ドジャーズの得点に結びついたかはあまり語られない。表を見て頂けるように、今年、大谷が盗塁したことで、ドジャーズは10.6点多く得点できたのである。

大谷の得点が、今年32点増えたことは指摘した。そしてHR数による得点が10増え、これを引いたとき残り22点が余っていた。ここでは、長打(2塁打、3塁打)を計算に入れていなかった。2塁打、3塁打の数は11増えている。このことを考慮すると、残りはおよそ11得点となる。すなわち、私の仮説、盗塁によって得点が増えたことを証明できたと思う。

次回は、いよいよ「40ー40」、「50−50」の議論に入ろう。そして、その後に、ドジャーズのロスター、ヤンキースのロスターのデータ面での寸評に入りたいと思う。



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