語られないゲーム、セットプレー③ セットプレー数は増えていない。得点増の要因は何?
前回は、なぜセットプレーを第3局面と呼ぶべきか、というを説明した(どちらが先でも構わないが、攻撃を第1局面、守備を第2局面と呼んだ。)
また、前々回では、セットプレーからの得点が急増していることも説明した。それでは、セットプレー数は増えているのだろうか、というのが次の疑問となるであろう。
結論から言うと、増えてはいないのである。一般にセットプレーと呼ばれるものは、5つある。PK、CK、直接FK、間接FK、スローインである。上位5チームの1試合あたりの平均をとると、以下のようになる(PKについては1試合あたり多くても0.2回程度なので外した。)
この上位5チームの総セットプレー数の平均は、40.8回となる。2023年のトップ5の1試合当たりのセットプレー数の平均は42.8回、(標準)誤差を調べると約1.7回なので、ほとんど平均値は変わらないと言ってよいだろう。
上の表は2023年シーズンのものである。比較するとわずかに神戸、鹿島は増え、広島は減っているのが分かる。それでは、セットプレーからの得点はなぜ急増したのか、得点数の増加とゴール率の上昇を見ておこう。
ここで、注意が必要なのはセットプレーは1試合当たり、およそ40回も起こる事象である。そのため、ゴール率のわずかな上昇でも、結果は大きく変わってくるということだ。
広島のゴール率の上昇は、大きな成果を生んだことが分かるが、他のチームも0.5%でもゴール率を改善すると、結果が出るのだ。やはり、上位の各チームは、セットプレーを改善することで、成果を上げたということは言えるだろう。
さて、セットプレーが最も多くなる攻撃スタイルは、何だろうか。私は、戦術に疎いので、因果関係は全く分からない。しかし、データから分析すると、それはクロスの数と相関関係があると分かった(相関係数0.96)。
ここからは、私の仮説である。クロスはその名の通り、サイドから上げるものであろう。そう考えると、スローイン、CKにつながりやすいのは分かる。
なぜならば、最もタッチライン、ゴールラインに近い場所からクロスを蹴ることになるからだ。相手に当たれば、スローインになるし、CKにもなる。
いまいち、理解できないのは、直接FKが起こりやすい状況か、ということだ。すなわち、ファウルが起こりやすいかということだ。この点については、戦術に詳しい方に聞かなければならない。
私は、素朴に、サイド攻撃を戦術として取るチームは、それだけサイドにボールがある状況が多いので、ファウルはサイドで起こる確率が高いと考えているのであるが、正しいだろうか。この点については、これからの考察が必要である。
以上をもって、私の2024年J1リーグに関する考察を終わりにする。リーグ終盤戦が幾たびも中断され、深く思考ができたか、分からない。少しでも、私の突飛なアイデアや仮説に付き合って下さった方がいれば、感謝したい。
私は、哲学科を出ているので、それこそソクラテスのように書いたり喋ったりすることで思考が深まると信じている。このように、僅かでも誰か読んで下さっている状況下で、ものを書けるのは、大変幸運なことである。
まだまだ、書きたりないので、サッカーについてはプレミアリーグに場を移して、書いていこうと思う。年が明けるといよいよ、マンCへの裁決が下る。また、クロップについての評伝が出るようだ。
そして、読まなければならない本がたくさんある。また、随時、紹介していきたい。