「効率」という概念をサッカーに導入する試論②ー「攻撃効率」、「守備効率」から分かるチーム力。広島、町田の場合
サッカーに「効率」という概念を導入しようというのが、前回の記事であった。そこで、「攻撃効率」と「守備効率」というものを考えてみた。
「攻撃効率」というものは、「ゴール期待値」を上回る攻撃ができたか、という指標である。逆に「守備効率」というものは、相手に対して「ゴール期待値」を下回らせる守備ができたか、という指標である。
ややこしいと思う方は試合後のスタッツでは分からない。「いい攻撃ができている」、「いい守備ができている」という、我々の直感を「数値化」ができるかもしれない、という仮説であると考えて頂きたい。これは、今節の試合において検証したい。
ゴール期待値とは、「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率」を0~1の範囲で表した指標である。また、ゴール期待値は、平均的な選手がシュートを打った場合のシュート成功確率である。
そこで、これらを1試合分足し合わせると、当該チームが、平均的なチームの攻撃効率・守備効率を上回ったか下回ったかが分かるのである。
この背景にある理論については、複雑になるので別の記事で書きたいと思う。ここでは、「効率」という考え方をサッカーに導入した場合、どのようなことが言えるかという「試論」であることを了承いただきたい。
まずは、優勝争いに絡んでいる3チームを分析したい。神戸、広島、町田である。
広島は痛い2連敗をしたことで、首位の座を神戸に明け渡した。私は、以前の記事で、広島の連敗の理由を探ろうとしてきた。これは、何も広島を痛めつけようとした訳ではない。
広島はダントツで負け数の少ないチームであった。2連敗するまでは4敗で、2位神戸の7敗よりはるかに少なかった。負け率というものが存在すれば、12%で負けたのは9試合に1試合である。
そのチームが、2連敗をしたのである。ここに何かの理由があるとデータ分析するのは意義があることであろう。
それでは、グラフを見てみよう。全ての棒グラフで、0の値が平均的なチームの効率である。1を超えるとかなりいい攻撃・守備効率であると考えて、頂きたい。
そして、「総合効率」という攻撃効率と守備効率を足した指標を新たに導入する。
例えば、第32節のデータを見てみよう。攻撃効率:0.71、守備効率:1、総合効率:1.71である。そして、最終スコア2‐0で勝っている。
これを言葉で言いかえる、「広島は良い攻撃とかなりいい守備によりスコア2-0の完璧に近い試合を遂行した」と言えるであろう。
さて、2連敗の問題に入ろう。2連敗の1試合前、第33節から見ると、広島の守備効率(赤)に変動はあるが、攻撃効率(青)がマイナスに激減していることが分かるであろう。それに伴い総合効率も激減している。
この分析から、広島の2連敗の理由は攻撃効率が悪くなったことと言える。平均的なチームの「ゴール期待値」をかなり下回る攻撃しかできていないのである。
ただし、このデータは結果論であるので何がチームのパフォーマンスを下げているかまでは答えをだせない。
次に町田を見てみよう。町田は、最も1試合当たりの失点が少ないチームである。0.86失点である。しかしながら、この5試合は勝てていない。グラフを見てみよう。
町田の攻撃効率は確かに問題であるが、守備効率(赤)が足を引っ張っていることが分かるであろう。この間の町田の平均失点は1.4点である。この守備の悪さが町田が首位から転落していった理由であろう。
次回は、神戸の分析をすることにする。そして、日曜日に神戸、広島と対戦する東京Vと浦和の分析も行おう。