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ショートショート「僕の名は?」
気づいたらスクランブル交差点の真ん中にいた。僕は誰だろう。必死に考えた。そのうち信号が変わって車からホーンを鳴らされたので渋谷駅の方へ走った。
交番を見つけたので聞いた。
「僕はだれでしょう」
「免許証は?」
「ありません」
「じゃあわかりません」
ヒントを探しにしばらく行くと役所があった。
「僕はだれでしょう」
「マイナンバーカードは?」
「ありません」
「じゃあわかりません」
しばらく行
ショートショート 「宿命」
私には先祖代々受け継がれている宿命があった。これは江戸時代末期から代々当主が引き継ぐこととなっている。僕は32年の歳月と親から引き継いだ遺産を、すべてこの宿命につぎ込み成就する見込みが立った。
早速私は一張羅のスーツに着替え、銀座の寿司屋の名店松寿司に入った。ここミシュランで一つ星を取り、あまりにも高級で高いので、予約しなくても入れるところがいい。
カウンターに座りおまかせで握ってもらう。最初
ショートショート「効きすぎた薬」
203X年、性格を自由に操れる薬が発明された。本来は気分が落ち込んでいる人を元気にするために開発されたのだが、成分の配合によっていろいろな性格に変化させられることがわかった。明るい、暗い、怒りっぽい、おだやか、etc
病気ではないので保険は効かないが、街の薬局で買うことができ、みんな気軽に飲んで、その日の状況に合わせて性格を変えていた。
デートの時はウキウキする薬、葬式の時は泣ける薬、上司とゴ