2・父と私について
ちょっと書くか悩んだけど、私と父の関係について触れておきます。
父は調理師をしていて、私が小さい頃は自営業もしてました。しかしバブル崩壊後に店をたたみ、その後はチェーン店を抱える会社でサラリーマン調理師として働いてきました。とにかく忙しくて、まともに遊んでもらったことはなくて、それでも父が大好きでした。むしろあまり会えないからこそレアキャラ的扱いで会えたら嬉しい!!と思っていたのかも。子供の頃の夢は「お父さんのお店でアルバイトとして働く!」でした。
そんな夢も一応は叶えることができました。雇われ店長としてですけどね。父はひょうきんな人で、歳の離れたアルバイトからも親しまれていて(母が妬いてしまうほど!)アルバイトが辞めたあとも遊びにきたり、飲み会に誘われたりもしてたみたいです。そんな父だから私は楽しく一緒に働けたし、仕事が大好きになっていきました。
実は私、高校の時不登校気味でした。なんとかギリギリ卒業できたんですが、進路を選ぶ余裕なんてなくて、とりあえずフリーターとして父が店長をしているお店にアルバイトとして入ったのが最初でした。不登校児がいきなり接客業なんて、今振り返ってもめちゃくちゃハードル高いよなと思いますが、もう選択肢がなかった、というか選択したくなかった。父のいる店なら多少サボっても許されるだろう、くらいの気持ちでした。18歳の話なんで許してほしい。
デパ地下の惣菜売り場で、対面式の接客。アルバイトで多少接客はしてましたが、コンビニの受動的な接客と違って、こちらから呼び込み、売り込みをしなくてはいけないわけです。しかも周りには知らないお店の人達がたくさんいる。最初の頃は頭真っ白で、カチコチになりながら接客していました。いらっしゃいませーいかがですかー(明後日の方向凝視)みたいな役立たずの売り子。
それでもなんとか通っているうちに、他のお店の人とも交流が増えてくるのです。というか向こうから寄ってくる。みんな父と仲が良くて、その娘が働き始めた!と知って次々と声をかけてくる。あっという間にフロアの全店長と顔見知りになりました。ベテランのパートさんも顔を覚えてくれて、仕事終わりに買い物行くと割引してくれたり、その日の売れ残りを交換したり。
顔見知りのいる職場なんてもうホームも同然です。仕事は楽しくなり、笑顔が増え、自然と声が大きくなっていきました。顔を見て接客できるようになり、自信を持って商品を説明できるようになりました。そんなある日、一人のお客様から声をかけられます。
「君の呼び込み、とてもいいね。フロアの向こうまで聞こえてきたから思わず足を運んでしまったよ」
そのお客様は私の声を聞いて、わざわざ店頭に足を運んでくれて、私のオススメした商品を買っていってくれました。そのときの気持ちは一生忘れないでおこう、と思ったし、今も書きながら思い出してちょっと泣いてる。そこから私は仕事が本当に大好きになって、そのまま社員登用を受けて父と同じ会社で働くことになったのでした。
父がいなかったら、私は仕事の楽しさを知ることも、人と関わることもなく、ヒキニートになっていたかもしれない。とても感謝しているし、父の優しくて人当たりのいいところを尊敬しています。ちょっと頼りなくて、しっかり者の母がヤキモキすることもあるけど、それもバランスが取れてていいよねなんて思っていました。
子供も全員落ち着いたし、もう少ししたらお母さんを旅行にでも連れて行きたいな。
結婚してから仕事が忙しくて、母をどこにも連れて行けていないことを気にしていた父。私もお金貯めて援助するよ!なんて話をつい最近までしていたところでした。
そこに、白血病です。血液の癌ってやつです。
なんで、今なんだろう。なんで、父なんだろう。
父の家系に癌で亡くなった人はいなくて、本当に突然、父だけ、なんで父だけ。
癌は今二人に一人?とか言われてるらしいですし、癌家系なんて話も聞きますけど、だって今までいなかったんですよ。私も生命保険でガン特約外してるくらいですよ。(これから見直しします)
思いつく限りの出来事を恨んだし後悔したけど、もうなってしまったものは仕方ない。本人は勿論、家族も闘病していかなくてはいけない。
毎日が、未知。それでも。
父と私が最後までらしくいられるために、私は私のできることをする。