ケガの予防にはウェイトトレーニングです!
早速結論から述べると、ウェイトトレーニングを実施した場合、スポーツによるケガの発生率は 1/3 以下に減少し、オーバーユースによるケガはほぼ半分になる可能性があります!
メタ分析の結果によるものなので、エビデンスレベルもかなり高いでしょう。
言い換えると、ウェイトトレーニングをやらないとケガのリスクが3倍以上、オーバーユースによるケガは5倍以上に増えてしまうということです。
ウェイトトレーニングをやる、やらないでケガ予防に対して非常に大きな差が生まれることがわかりました。
そのような結果となった理由としては、ウェイトトレーニングの効果として以下のものが考えられます。
筋力が向上するため単純に筋肉が疲れにくくなり、オーバーユースによるケガのリスクが減る
エキセントリック局面(ブレーキをかける局面)での筋力が向上し、肉離れのリスクが減る
体幹のスタビリティ能力が高まる。また、体幹部を安定させたまま手足で筋発揮できる能力が高まるため、腰痛などのリスクが減る
ウェイトトレーニングは大きな可動域で筋力を発揮するため、関節可動域が向上する。また、可動域の様々な場面で関節を安定させる能力が高まる。
シンプルに筋量が増えて、筋肉が衝撃から身体を守るクッションになる
また、ウェイトトレーニング自体がそもそもケガをしにくくできています!
安全に大きな重量を扱うために生まれたエクササイズがスクワットやデッドリフト、クリーンといった種目なので、言われてみれば確かに当たり前な気もしますが。
これを証明するものとして、スポーツや運動の実施100時間あたりの障害発生件数を調べた論文があります!
これによると、100時間あたりサッカーでは6.2件、バスケットボールでは1.03件、体育の授業では0.18件のケガが発生しています。
一方ウェイトトレーニングは100時間あたり0.0012件となっています。
数字だけで見ると、なんとウェイトトレーニングはサッカーと比べて5100倍安全ということになります。
理由としては、ウェイトトレーニングは実施する人の能力に合わせて正確に負荷をコントロールできることが挙げられます。
ウェイトトレーニングを始めたばかりの際は極軽い重さから始め、能力が上がっていくに従ってグラム単位で重さを調節できるからです。
※ちなみにこちらは【漸進性過負荷の原則】といい、パフォーマンスアップの観点から見ても非常に重要です!こちらに関してはまた別の機会に解説させて頂きます。
しかし、サッカーやその他スポーツ、特に対人競技ではそうはいきません。スポーツを経験してきた方ならそれが容易ではないことが何となくでもお分かり頂けるかと思います。
ただ、腰椎分離症のリスクが高い方は、腰椎に強い剪断力が加わるような方法でのウェイトトレーニングは控えるべきだと思います。
ちなみにこちらがリスクが高い方です!
14歳前後
スポーツを活発に行っている
女子よりも男子
このような方々は重いバーベルを背中に担ぐのではなく、前に担ぐかダンベルを身体の横で持ったり、自体重を用いたウェイトトレーニングを中心に行ったほうが良いでしょう(ちなみに、自重トレーニングも自分のウェイトを使っているので、立派なウェイトトレーニングです!)。
また、下肢筋のタイトネスが強い方や腰椎の安定性か不足している方、脊柱のコントロールが不良な方はまずこれらの改善が先決です。
リスクが高い場合は、少しでもリスクを軽減した状態でトレーニングを行いましょう!
もちろんウェイトトレーニングは補強ですので、メイン種目の練習や試合との負荷量の兼ね合いも不可欠です。
最後に、ヨーロッパや南米では、ウェイトトレーニングをするのが最早当たり前になっています。
今シーズンより浦和レッズの監督に就任したヘグモ監督も、そこは指摘をされていました。
浦和監督、3か月で実感「ヨーロッパと日本の差」チーム復調傾向「怪我の予防にもつながる」
また、私が学生時代に実習生としてお世話になったあるJクラブでも、監督が日本人からブラジル人に変わるとウェイトの体制が整えられるとのお話を伺いました。
「ウェイトトレーニングをすると体が重くなる」
「筋トレをすると体のキレが落ちる」
などは根も葉もないただの言い伝えです。
この言い伝えが正しければ、欧州や南米のサッカー選手は皆もっさりしたキレのない動きのプレーになってしまうからです。マラドーナやロナウドを見てください。皆ムキムキでしょう?
安全に効率よくケガを予防できるウェイトトレーニングをアスリートが行わない理由はありません。
あなたのより良い競技人生のために、ぜひウェイトトレーニングをお勧め致します!
文献
・Lauersen JB, Bertelsen DM, and Andersen LB. The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med 48: 871-877, 2014.
・競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方 第1版
・Hamil, B. "Relative Safety of Weightlifting and Weight Training," Journal of Strength and Conditioning Research 8(1):53-57, 1994.
・スターティングストレングス Basic Barbell
Training 第3版
・https://www.heart-center.or.jp/rehabnow/4520/
・https://news.yahoo.co.jp/articles/7dcc0cab29f4b9345fae7d4653b9918154d79322