「気持ちが入っていない」属性でユーザーを一括りにしないで。という話。
デザインという行為は「情報の再構築活動」
無限のピース数のパズルを組み立てるイメージ。そのピースの素材は「情報」であることは間違いなく、「情報」をうまく組み合わせないと適切なデザインは生まれません。
このデザインに必要な「情報」ってどんなものか?を説明する投稿シリーズ。今回は「使う人・選ぶ人」について。
自身がデザインした商品群を題材に
デザインする対象物によって「使う人・選ぶ人」は異なります。
前職で長くデザインを担当していた「マッサージチェア群」(上)と、現在進行形で制作し続けている「デザイン事務所向け雑貨群」(下)という毛色が異なる商品群を挙げながら、どんな情報が組み合わされているかを説明してみようと思います。
「マッサージチェア」といえば、家電量販店の健康コーナーや、スーパー銭湯、空港搭乗口、ネットカフェなどで見かけることができる「椅子のような、マシンのような」変わった商品。
「SOGU」といえば、デザインにこだわった雑貨のセレクトッショップでジワジワで広がりつつある「デザイン雑貨のような、事務所備品のような」変わった商品です。
まずは「使う人」の情報から
自分はどうありたい?
性別は?
年齢は?
どんな家族構成?
どんな生活感?
どんな時に使いたい?
どんな空間におきたい?
どんなタイミングに使いたい?
好みのデザインは?
・・・
「家庭用製品の使用者」と考えてもまだまだありますね。ということは「業務用製品の使用者」もいるわけですが、それは想像してみていただければと思います。
2つの商品群でこの違いを挙げてみますと。。。
<私がデザインしたマッサージチェアを使う人像>
・いつまでも若々しくありたい
・毎日の身体の疲れを払拭したい
・40歳〜70歳
・居住空間が比較的広い地方在住者
・デザイン感度は高くはない
・風呂上りにリビングで使う
<SOGUを使う人像>
・常に美しいモノ、新しい発想のモノに囲まれていたい
・クライアントにセンスが悪いと思われたくない
・デザイン事務所、デザイン会社、建築設計事務所勤務者
・オフィスで考える時間が長く、知的生産性の向上には意識が高い
・オフィスで使う(特にクライアントが入る接客スペース)
・恣意的にデザインされていないデザインが好き
太字で強調していますが、自分はどうありたいのかという気持ちが一番重要です。
「選ぶ人」の情報も重要
「一度も選択されることなく使われる」ことはありません。電車や図書館などの公共のもの、学校から指定される教材、無料配布されているものであっても、必ず誰かが選択しています。
それを選ぶ自分はどんな自分でありたい?
素敵なものを提案できる人・コスト重視な人・・・・
必要な数量は?
1・2・3・・・・・100・・・
予算は?
3000円・1億円・月に1万円・年で30万円・・・
誰のために?
自分・同居家族・離れて暮らす家族・社員・・
何のために?
生活(必需品)・自己実現(嗜好品)・宣伝・・
自分が使用するために購入する人だけではないことを常に意識することはとても重要で、その場合でも、それを選ぶ自分はどういう自分でありたいか?どう見られたいか?という視点は欠かせないと考えています。
<マッサージチェアを他の人のために選ぶ人像>
・旦那(奥様)に元気に働いてもらいたい良い奥様(旦那)
<SOGUを選ぶ人像>
・デザイン関係者に気の利いたプレゼントを贈りたい人
「出来ている」と思いこんでいませんか?
「使う人・選ぶ人」に関する情報は、本当に重要なパズルのピースです。これは誰もが「あたりまえ」と思っていますよね?
しかし学生に「あなたの提案の理想顧客は誰?」と聞くと「大学生です」とか「30歳代主婦」です。といった「気持ちが入っていない」属性を答えられることが多いです。
そこで「いまここに15名の大学生がいます。その全員がその企画の理想ユーザーですか?」と聞いてみると「そうです」と答える人がほとんどです。
でも、その次に「あの男子ふたりは同じものを欲しがって、同じものを持っていますか?」と雰囲気が異なる2人を例に質問してみると、当然「いいえ」と答えてくれます。
そこで『「最近の大学生はこうだよね」とひと括りに決めつけられたら嫌な気分しない?みんな性格も感性も違うでしょ?』と問いかけて初めて、今までは理想ユーザーを設定したつもりだったと気づいてくれるのです。
ぜひ、理想ユーザーを設定する時には、その人の気持ちを重視してもらいたいと思います。
恋愛での自分磨きと商品開発、販売促進の類似性
自分が今、自分が好きな女子がいる高校生男子だと考えてみましょう。
その子はどんな男子が好きなんだろう?と気になってしまいますよね。その考察は「高校生男子」が好きだろう。といったレベルではないはずです。
その子が日頃どんな会話をしていて、何が趣味で、どんなことを喜んでいるのか?・・・その調査や考察は自然にできるものだと思います。
その子に自分が好かれる可能性があるのか?
好かれる可能性を高めるために、一生懸命自分を磨こう。
想いが伝わるように、自分なりにアピールしていこう。
全員に好かれる必要なんてありません。好きな人に好かれるために自分磨きをする。自分なりにアピールし続ける。こんな気持ちで商品開発、販売促進をすればいいのかなと思います。
今回のまとめ
この傾向は自社のオリジナル商品を企画した経験が少ない企業の企画担当者も同じ傾向があるように思います。
デザインを行うときは「気持ち」が入っていない属性だけでみないように気をつけましょう!もっと正確には仮想の理想顧客(ペルソナ)を設定するという手法もありますが、それはまた別の機会に述べてみたいと思います。
今後もデザインの素材となる色んな「情報」について語って行きたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?