見出し画像

「靖国神社の緑の隊長」半藤一利 著 幻冬舎文庫

2021年1月に亡くなった半藤一利さんの最後の著作になります。

先の戦争でのエピソードが書かれています。

前書きで、半藤さんは次のように書いています。

「兵士(軍属を含めて)の死者はおよそ二百四十万人と言われていますが、そのうち七割は、食べものや飲みものがなく、飢えて亡くなっています。最低限の食料さえ補給されず、日本から遠く離れた山のなかや、聞いたこともない名前の島で見捨てられた、無惨な死でした。その数、じつに百六十万人以上です。

 彼らを見捨てたのはだれでしょうか。軍と政治のトップリーダーたち、つまりは日本の国家でした。(p.5)」

ガダルカナル島では陸上だけでも二万二千人が死にました(p.40)。これは、たったひとつの飛行場攻略が目的でした。

昭和二十年(一九四五)四月六日から六月二十三日。沖縄の抵抗が終わった日まで、十回にわたって知覧の飛行場から、第六航空軍の陸軍機八百二十五機が飛びたっていきました(p.79)。しかし、特攻による成功率は、せいぜい三パーセントか、それ以下(p.79)という話です。こんな効率の悪い作戦のために、何名もの若者が死んでいったわけです。

この本で紹介されたエピソードの中で、救われるのは、今村均大将の話です。今村さんは、捕虜も現地人も部下もとても大切に扱いました。戦争がはじまったときにジャワ派遣軍司令官をつとめた軍人ですが、一人だけ死刑にされませんでした。昭和二十四年(1949年)12月24日に日本に帰ることになったとき港には多くのインドネシア人が手をふって「ゼネラル・イマムラ、サヨナラ!」と叫んで名残を惜しむ光景があった(p.98)のだそうです。

半藤さんは、「日本人の欠点は何かと考えると二つある、当座しのぎの根拠のない楽観性と排他的同調性の二つ(p.129) 」だと言っていたのだそうですが、この本に紹介されている八人の将兵はいずれも、「この二つの欠点を免れた稀有な存在」と解説の加藤陽子さんが書いています。半藤さんの言うように、日本人は「そんなに」悪くないのかもしれません。しかし、そういう人たちは、よく見ていないと歴史の中に埋もれてしまうのかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?