6歳の書く姿にみせられて
いつから、人をうらやましいと思うようになるのだろう?
わたしには、小学生の娘がいる。
彼女は、4月から新しい生活をスタートさせたばかりだ。
毎日、ひらがなの宿題をやっている。
書きかた教室にも通っているので、1週間に文字を書く量はわりと多い。
一生懸命書いても、容赦なく赤ペンの嵐にあう。
それでも、くじけず勇敢にも挑んでいく。
わたしが、やりなさいと言わなくても自分から書き始めるのだ。
何度も消しては、書くことを繰り返す。
もうすぐで、紙が破れてしまいそうになると
泣く。
彼女の悔しさが、ピークに達したのだ。
うまく書きたいのに、書けない。
わたしは
「ちょっとお茶しませんか?」
と、わたしの名前をもじって
「○○カフェの配達です」
と言って、ほんの少しだけ手の込んだおやつを用意する。
彼女の泣き顔が、笑顔にかわる。
美味しいものを食べて、気持ちを入れかえる。
少し時間をおくと、気分がかわる。
また、静かに書き始める。
「おかあさん、できたよ」
と、しわしわになった宿題を見せてくれる。
しわしわには、彼女の頑張りがつまっている。
彼女の頑張る力は、いったいどこからやってくるのだろう?
ストレートにぶつけてみた。
「なんで、そんなにがんばれるの?」
と。
「だって、6ねんせいのおねえちゃんみたいな、じがかけるようになりたいから」
と、彼女は凛々しく言い放った。
小学校に入学するまえ、6年生のおねえちゃんが入学おめでとうと書かれた手作りのカードを持ってきてくれた。
それを見た彼女は
キラキラ目を輝かせながら
「これ、だれがかいたん?」
と、にゅうがくおめでとうの文字に夢中になっていた。
その字は、とてもきれいで、読みやすく、どこか優しさを感じるようなフォルムだった。
「わたしも、6ねんせいになったら、こんなじがかけるようになるの?」
「なれるよ、絶対になれる」
わたしは、そう応えた。
彼女は、あの日あの文字を見て6年生になる自分を想像したのだ。
わたしも、あんなふうになりたい、と願う
憧れだ。
誰かをうらやましいと思う気持ちは
憧れから始まっていたのだ
彼女が、6年生のおねえちゃんに憧れるように
わたしは、彼女に憧れた
6歳の彼女に。
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