漫画キングダムから学ぶ会社経営 #31:戦えない軍師の強み
本記事は、「漫画キングダムから学ぶ会社経営」と題し、毎回、様々な視点から漫画キングダムとビジネス(特に経営)での共通点及びそこから得られる学びについてまとめていきます。今回は31回目の記事になります、過去の投稿はこちらからご覧ください。
前々回からキングダム内でも重要な役割を担う軍師について考察しています。前々回のテーマは「#29:軍師に求められる資質」、前回のテーマは「#30:軍略家はなぜ出世するのか」という事で、軍師の特色と、出世に関してまとめました。まだ、お読みでない方はまずはそちらをお読みください。
今回は「戦えない軍師の強み」という題目で考察したいと思います。
まず、「#29:軍師に求められる資質」でも触れました通り、軍師は基本的には、2パターンおり、1)その軍の大将兼軍師、2)自身はほとんど戦わずに大将(将軍やxx人将)の右腕となり戦略のみを練る軍師、になります。どちらが良い悪いはないのですが、より現場をしっている軍師の方が有利になる場合が多いです。要は机上の空論ではなく、軍師にとっても経験値が非常に重要だという事です。それでは、自身では全く戦わない軍師は、戦える軍師より本当に劣るのでしょうか。そうとは言えないのが、また軍師の面白い所になります。
例えば、自身が大将にもなりえる軍師(キングダムではこの場合、軍師ではなく軍略家と定義しているように思えます)としては、李牧、媧燐、若手では、蒙恬、王賁などがいます。彼らは専用の軍師を軍には入れず、自身で軍略を練り、さらに、戦う事も出来ます。李牧や媧燐は10万軍の総大将を張るくらいの大将軍なので、実際に激しく戦闘に出る事は今はありませんが、戦わせても一流なのは過去の戦歴からは一目瞭然です。また、蒙恬や王賁は、戦略も練りながら、かつ、実際に先頭に立ち、相手軍の将軍達と刃を交えますので、現場で度々作戦を変更させ、周りを困らせる事もあります。これは、大将軍の素質だという描写が過去にありました。とにかく、現場での経験が軍略にも活きているのは間違いありません。
逆に、自身はほとんど戦えない(非常に弱い)けど、軍師として活躍している(いた)人達の例としては、河了貂、玄峰、荀早、などがいます。いずれもキャラは違いますが、力だけでいったら非力で戦闘タイプではありません。では、彼らの強みはなんでしょうか。
河了貂は、仲間の死に対してより敏感であるので、考えに考えぬいて理詰めに効率よく、かつ自軍の被害を最小限に抑えて戦略を練ります。玄峰は、あの英雄廉頗4天王の一角として、長く廉頗大将軍に仕えていたというだけでも、超一流の軍師であった事が伺えます。「#29:軍師に求められる資質」でも触れましたが、相手の挑発や誘いなどに乗らず、非常に冷静に最善策を打ち出す能力があります。荀早はこれまた魏の英雄七火龍の一角である凱孟の右腕として、凱孟軍を率いります。荀早の強みはなんといっても、あの凱孟を完全に手玉に取る手綱のうまさと、一瞬で相手の強みを見抜き河了貂を拉致したような機転にあります。3人に共通して言える事は、その場のアドレナリンや勢いに任せるのではなく、あくまで冷静に最善策を講じる点にあります。戦える武将は良くも悪くも、その場の思い付きや勢いで犠牲を払ってでも勝ちに行く強引さがたまにありますが、自身が戦わない軍師はどんな状況でも戦場を駒として捉え続ける事に長けています。
日本の会社では、出世コースに乗ると、様々な部署を経験して、経験値を増やしてから出世するという話をよく聞きます。これはこれで間違った人事戦略ではありませんが、逆に広く浅くの深みのない経営者になってしまう懸念があります。また、逆に外資系では、同じ部署でその専門性をどんどん深めて出世させる会社が多いように思えます。専門性というとその業界の専門性と勘違いされる方がおり、職務としてつぶしが利かない、転職しにくいと思われる方がいらっしゃいますが、それは間違いです。ここでいう専門性は業界ではなく、業種の専門性という事です。例えば、マーケテイングや営業のスペシャリストなどです。マーケテイングを極めると、どの分野でもビジネスで必要とされるフレームワークは同じなので、どこにいっても活躍できます。営業のスペシャリストは、どの業界でも顧客に好かれ、自社の製品やサービスを売り込む術を知っているのです。逆にどの業種も3年だけの経験だと、なんとなく全てできるが、それ以上何もありません。確かに、優秀な人間は短い経験でもすぐに、ポイントを掴んで、その職務の要所をマスターし、次の職務に活かしますが、全員がそうではありません。ここでいう、李牧や媧燐の事ですが、みんなが李牧になれるわけではありません。あういう人材は会社でも99.9%いません。その0.1%の李牧の為に、全員に広く浅い経験を積ますよりは、専門性を磨き、よりその人の強みを活かす方が組織運営としては優れています。つまり、軍師のスペシャリストは大将軍にはなれずとも、マクロな視点で見た際は、確実に組織や軍に貢献する事ができるのです。
今回は軍師の話から人事戦略、組織運営の話に発展させ考察しました。人事部や、部長など、人材を育成する立場にある人は、本当に今の人材育成プログラムが会社や各人としてベストなのかを、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
それでは、また次回。
注)写真はすべて漫画キングダムより引用