【本紹介#4】言語の本質ことばはどう生まれ、どう進化したか【隔週月曜更新】
要約
なぜヒトはことばを持つのかという問いに対して、子どもはいかにしてことばを覚えるのかという観点から答えに迫る。
小さい子どもでもオノマトペを理解できる理由や、子どもがことばを覚えていくのに必要とされている力からヒトと動物の違い、ヒトとAIの違いに触れていく。
感想
学校の先生目線で気になったポイントを2つまとめていきたいと思います。
まず1つ目は、学習とは経験の丸暗記ではなく、推論が伴う行為であるということについてです。
この章を読んでいるときに、「僕の授業では子どもたちが推論できるようになっていただろうか」と考えていました。
1から10まで全て解説してしまっては子どもたちには推論の余地がなく、学習ではなく暗記になってしまいます。
最近授業で解説を丁寧にするのをやめようかなと思っていたところで、やろうとしていたことの根拠が見つけられたような気がして嬉しかったです。
実際夏期講習中に英語が苦手な中学2年生のクラスの担当をしましたが、とにかくこちらからの情報を減らし、子どもたちに作業を与え、その場その場で細かく指示を出すことに徹してみました。
話を聞かず、鉛筆を持たなかった子どもたちが自分で気づき、自分で質問をするように授業の姿勢が変わったことがとても印象的な講習でした。
これが推論することで学習することなのだと思いました。
しかし疑問は残っています。本書では言語学習においてアブダクション推論と帰納推論というものが用いられるとありました。
これらは第一言語習得のとき、小さな子どもがするものであるため、僕たち英語の先生が関わる年代の第二言語習得のときにも同じように働くのだろうか。この点については第二言語習得について改めて勉強しながら考えていきたいなと思いました。
おすすめの本や、すでに答えをお持ちの方がいたら教えていただけると嬉しいです。
そして2つ目は対称性推論についてです。
対称性推論とはAがXならXはAである、と推論することだそうです。一見正しいようなこの推論ですが、これはヒトしか行わない(行えない)ものであって、正しくない場合があるのです。
例えば、いつも行列のできているお店を見たとき「美味しいから混んでいる」のだが、「混んでいるから美味しい」と考えてしまう。
対称性推論とは対称性バイアスとも表現されていました。
この対称性バイアスが言語学習において重要な役割を持っているからヒトだけが言語を扱えるのだそうです。
第一言語習得の方法と第二言語習得方法は、異なりますが、共通するところもあるのではないかと思い普段の授業に活かしていきたいです。