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日出国の精神、敵国降伏とは
むかしむかしのあるところ。
猫のひたいほどの小さな国に聡明な皇子がお生まれになりました。
皇子はすくすくと健やかに成長され立派な青年となりました。
一方、西方では国を次々と飲み込んで強大な軍事大国となった強国があれよあれよと皇子の国にも迫りつつありました。
皇子28歳の頃、ついに一触即発の局面となったのです。このとき、聡明な皇子は誰にも思いもよらぬ行動を起こしたのです。あろうことか自分の両親、奥方、子供、国のすべてを捨て、僧侶となり旅に出たのです。
やがて7年の歳月の末、ついに悟りを開いた皇子。その後も皇子は国に戻ることなく、御仏の教えを諸国に説いてまわったといいます。その名は天下に広がり、近隣諸国を脅かし続けた強国もいつしか力を失い、やがて自滅していきました。
元皇子が74歳になる頃、それまで直接の弟子もおらず、問われた内容にのみ答えていた皇子の口から「言いたいことがある」との申し出があったものですから、これにはまわりの人々も驚き、その話を聞かんと5000人以上の人々が集まったと言います。
たくさん集まった聴衆の前で、元皇子はこう言いました。
「これまで皆に聞かれ、答えたことはぜんぶ嘘のようなものだった」と。
この第一声に集まった人々は落胆幻滅し、一斉に居なくなりました。
そうして16人の残った者にのみ、これまで言わなかった真実がありのまま伝えられたのです。その内容はあまりにも壮大でしたから、すべて話し終えるまでに7年の歳月がかかったといいます。
そうしてすべてを話し終えた最後に、元皇子はこの話を語り継ぐ必要はないと言われたのでした。その理由は、かつてこの場を去ったような者たちがこの世の大半であり、だれにもこの内容は理解できないこと。
そして、無理に語り継がずとも、やがて自然と東へ東へと伝わり、日の上る場所へと必要な時に伝わるからだとおっしゃるのでした。
その後、すべてを語り終えた元皇子、つまりお釈迦様は入滅され、この唯一にして最後の教えこそが「法華経」となったのです。
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悟りしその名は空海
お釈迦様入滅より、1200年と少し経った頃、お釈迦様のお言葉の通り、東のそのまた東からさらに海を渡った先、日の本にも仏教が伝来、仏教を伝えた者たちもまたこの国にはすでに仏の教えというよりも、そもそもその大元のような様式美が生活の隅々にまで浸透しつくしていることに驚き、お釈迦様の言い伝えの真の意味を理解したのです。
それから少し時間は流れ、四国の室戸岬で若くして悟りを開いた青年がおりました。青年はやがて遣唐使船に乗り、唐に渡るとそこで高名な密教僧とついに出会い、密教の真髄から求める答えを得たのです。
青年はのちの弘法大師その人でした。
遥か古にお釈迦様が仰ったように、自然と教えは東へと伝播し、やがて日の上る場所より悟りし者が答え合わせにやってきたのです。その後の大師の活躍は多くの地で語り継がれる通りです。
百道に続く元寇
弘法大師入定より450年余り、ときは鎌倉中期。二度にわたる元寇の最終的な結末は誰もが知るところで、二度の遠征で結果を得られなかった元はその後滅亡の一途をたどります。
元寇の折、戦禍の地ともなった筥崎宮には、古く醍醐天皇の御宸筆「敵国降伏」が下賜奉られ、そのやんごとなきお言葉の通り、武に武をもってあたるのみならず、徳によって行う真の覇道が説かれています。
これはかつて、お釈迦様が強国に力で対抗せず、併合もせず、自らのやるべきことをなし、やがて悟りの境地へと達したことと同じといえるでしょう。「法華経」では、「南無妙法蓮華経」と説かれ、その意味は『生きとし生ける者たちすべてを導き救う』というものです。
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敵国降伏のいわれ
その真意は、武力で相手を降伏させる(覇道)ではなく、
徳の力をもって導き、相手が自ずから靡(なび)き降伏するという、
王道である我が国のあり方(真の勝利)を説いています。
仏様のような人になったっていい
さて、一方で現代の私たちはどうでしょう?
目に見える目先の出来事にばかり気を取られ、己の覇道をなすことを忘れているようにみえます。
お釈迦様の唯一の教えこそ「法華経」であり、同様に弘法大師の教えも「即身成仏」です。
読んで字のごとく、私たちのこの身は即ち仏であるということ。
自分らしくありのままの毎日を過ごしなさいという教えなのです。
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